第129話 閑話13『裏方』
夜の樹海。
エサを求めて徘徊する魔獣の群れ。一頭を倒すのにも手練れのハンターや騎士たちが徒党を組まねばならない、そんな手強い魔獣が数十頭も群れて鼻息荒く獲物を探す。
とその刹那!彼らの足元は大きくパックリと割れ一頭残らずその割目の中に『飲み込まれる』
そして次の瞬間には割目は閉じ、何事もなかったかのように森は静寂さを取り戻す。
「うむ。この辺りはこんなものかのう」
『ふむ』と顎をさする永
祐樹が完全に眠りに落ちたのを見計らい、永は周囲の生命の波動を探索、翌日の行動半径に存在する脅威となりうる魔獣を『埋葬』していたのだ、生きたまま。
永は再び森に立ち尽くし、足の裏より繋がる地面から探索の波を送り周囲を探る。
反応が返ってきたのはほぼ害のない角ウサギやイノシシなどの獣類、そして虫や鳥など。
もうあらかた狩り尽くしたようだった。
「まあユーキの足じゃ、明日はこれより先に進むこともないじゃろ」
そう呟き微笑むと永は地面に溶けるように姿を消し、コアは地中を通って祐樹の元へ戻る。
野営地では相変わらず規則正しい寝息で深く眠る祐樹。
「ユーキよ。明日も楽しい冒険の旅が待っておるぞ」
そう呟いて永は『カカッ』と笑うのだった。
祐樹があの岩山からナワの街まで無事に到達できた裏には永の暗躍がありました。
まあそれは祐樹もうすうすは勘づいていたようですが。
ちなみに永は魔法なんて使えません。祐樹は手で木を燃やした永を見て『魔法だ!』と思ったようですが、あれは前に遥に喰らわせたアレと同じ静電気です。