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らせんのきおく  作者: よへち
静編
121/205

第121話 閑話10『疫病の魔王』



「そちらの書物はこちらへ回して下さい」


イミグラの中央教会、神官たちに指示を出しながら様々な書面に目を通し、決裁印を押して回る一人の少年・教皇ミーツォ。


静たちが迷宮で眠りに就いてはや一年。彼女の予告した通り、この街を皮切りに大陸全土に『疫病』が蔓延した。

その事に人々は恐怖し、恐れおののいたのだが


「皆さん、慌てる事はありません。私は天人様の天啓によりこの事を事前に知り、その為に祈りの時に入っておりました。再び天人様より天啓が降りました。この病で死ぬ者は出ないでしょう。不調を感じたのならば家でしっかり養生して下さい」


その教皇ミーツォの言葉により人々はさほどのパニックにもなる事もなく、多くの病床者を出したものの全土に広がった疫病はやがて終息をむかえはじめた。


「こんなのマッチポンプな詐欺行為だよね」


ハルカの元を訪れてため息まじりにそう呟く少年教皇ミーツォ、もとい吉井教授。

そんな教授の今のもっぱらの仕事は『各地に教会を建てる』事だ。

遥にしてみれば教会など無くとも人々を管理し把握するのは容易いのだが、教授の目指すところは『誰の助けもなく自立して繁栄を続ける文明』。その基礎となるものの一つ『戸籍管理』これを教会にやってもらうのだ。

そして教授にはもう一つの目的がある。それは『天人』と『ハルカ』の分離だ。


「私の命は有限だからね。私の亡き後は君が教皇の役目を担うんだよ」


まあいずれはキミも電源を落として役目を終えられたらと私は考えているんだけどね、と教授は笑う。


「それとも永遠えいえんに『神』としてこの地球ほしを見守っていくかい?」


その吉井教授の言葉に遥は


「いえ。静様と吉井様の協力もあり私は私の望む『役目』を果たせました。あとは静様との再会の約束を果たし、あの方々の行く末を見守った後にエイエンに頼んで私を終わらせてもらいます」


そう言って微笑む。


「そうか。彼らもまた『無限の命』を持つ者なんだ。それはそれでつらい『せい』だね」


不老不死の三人。その無限の命を『辛い生』だと表現する吉井教授。


「そうでしょうか。私は命が有限であるという感覚がわかりません。エイエンも同じだと思いますが」


それに人とは『永遠の命』を求めるものなのでは?と問う遥に吉井教授は


「まあそうだね。でもね遥、人の命は有限であるからこそ輝き、それを惜しむものなんだよ」


なのに無い物をねだっちゃうんだよね、人は。と教授は笑う。


「それに『命』という観点が記憶や意識ではなく『細胞とそれの持つ情報』だったとするのなら、私たちも『無限の命』を持つ者なんだよ」


まあでも『個』として無限に存在する君やエイエンみたいな人生、申し訳ないが私はめんこうむりたいね。と笑い、吉井教授は随分と前にみずからが淹れて冷めてしまったお茶をすする。


「ああ、吉井様。そのエンが管理するカブールの迷宮なのですが、十組目の踏破者が現れました。静様との例の約束を実行に移す時です」


それを聞いた吉井教授は『うっ』と顔をしかめ、がっくり肩を落とす。


「そっか…早いよ。もう少し遅くても良かったのに」


なにもこんな忙しい最中に、と教授は頭をかきむしる。


「わかってる、もう準備はできているよ。じゃあ各地の教会に伝達して発布させるようにしよう」


---


翌日。

各地の教会の掲示板にこのような発布がなされた。


『此度、世界に疫病を振り撒いた"魔王"。かの存在は強大で滅する事は至難であったのだが、天人の力と教皇の祈りをもってカブールの地下迷宮の最深部へと封ずることに成功した。眠りに就いたかの存在を討伐せしめし者には"英雄の称号"、そして"賞金一億d"を与えよう』


そして何より人々を驚かせたのは



『なお、かの迷宮には魔獣も住み着いておりますが死ぬ事はありません』



そのよくわからない発布により、腕に覚えのある冒険者たちは皆、頭に『?』を浮かべながらもカブールへと殺到したのだった。







静の残した『おまけ』の話です。

こうしてカブールの迷宮の最深部には魔王が眠っていることとなり、それをエンが門番として約三百年ほど護る事となります。


と言いますか無機物を操作し、この迷宮を作った『永遠トワ』であったエン。その都度難易度を調整し、見所のある挑戦者を最下層まで到達させて戦っていたようです。


次回はそんな遠に見込まれた、ある一組のパーティのお話です。




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