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神話戦線異常ナシ   作者: 田辺サトシ
9/12

第四章 おなじ話

「というわけだから佐倉さん、デートしようぜ!」


彼女の部屋に押し入り(鍵は開いていた)、自暴自棄じみたテンションで叫ぶ。

自分のベッドに腰掛けていた佐倉さんは、思い切りポカーンとした表情で俺を見た。因みに、私服である。ふんわりとしたワンピースに清楚な感じのするアウターを羽織っている。


「まあ、冗談なんだけどね?」


「はいィィイ⁉」


目を剥いて、怒り心頭といった具合に彼女は立ち上がる。


「もう、なんなの、君は!?バカにしてるの⁉」


「いや、違うんだよ。あ、違くないっちゃ違くないんだけども」


何をどう喋ったものかわからず、あまりにもしどろもどろなトークをしてしまう。ううむ。


「というか、君の勢いある入室、かなり怖かったからね?」


「あ、うん。ごめん」


目の見える俺は、誰かが入室してくればそれが誰なのかすぐわかるが、彼女はそうではないのだから、この苦言は全くその通りだろう。


「で、なんだっけ?デート?」


「うん。デートといえばデート」


「…………なんで?」


「……あー、その、田喜野井さんに言われたんだけどね?」


「先生が?」


「そう、先生。まぁなんか、水入らずで話し合いをしなさいって感じみたいだけど」


曰く、『君たちは一度ちゃんと話し合った方が長生きできるからね』だとか。


「……デートか、それ?」


「いや、君がデートかどうかの前提に疑問を呈しちゃダメだよね!?そんな誘い文句にのる女の子いる訳ないよね⁉」


「な、なにィ⁉」


それは困る。俺は今、死にたくなくてたまらないのだ。今朝までの俺なら、そんな考えは鼻で笑っただろうが、今の俺にとっては文字通り死活問題なのだ。

俺の秘めたる決意や焦りを知ってか知らずか、佐倉さんは、


「ま、ここにそんな風変りな女の子がいるわけなんだけどね」


と言って歩き出した。


「え、ちょ、ど、どこに?」


「どこにって、一応デートなんでしょ?」


「あ、はぁ、一応は、そうです」


「……だったら、良さそうな場所が一箇所あるんだ」


そう言って、ちょっとだけ楽しそうに彼女は微笑んだ。



***



「取ってきたよ、二人分の外出許可証」


俺たち欠陥兵器は、外出するのにも一応許可がいる。管理の一環だろう。まあ、全員出かけてて闘えませんでした、では笑えないから当然か。

もっとも、鴨川班は臨時休暇の真っ最中なので、余裕で取れる。

事務員から貰った紙切れを、佐倉さんに一枚握らせる。


「ありがとね。じゃ、行こっか」


彼女は、ニコリともせずに進む。

どうも、俺に対する好感度が下がっているらしい。困ったものだ。


「あ、ねぇ、ちょっといい?」


依然、少しムスッとした表情で彼女は振り向いた。


「なに?」


「俺、私服とか無いんだけど……」


「………へ?一着も?」


「ほら、今までずっとここで生活してたから、買いに行く機会もないし……」


「……んー、そっか。でも、あれ、うん」


しばらくうんうんと唸っていた佐倉さんだったが、


「………………多分、平気じゃない……?」


「……そんな自信なさげに言われてもな」


そんなわけで、俺にとっては人生初のお出かけである。


「……やっぱり、手は繋ぐんだね」


「……見えないもん」


今朝と同じように、彼女の左手を右手で包みながらの歩行だ。

彼女の体温は、俺より少し高い。故に、少し肌寒い春先時もあるこの季節には、非常にありがたい。


「あ、ちょっとストップ。信号が赤だから」


無言で、佐倉さんは歩みを止める。確固たる行き先が彼女の中にあるらしいのだが、いかんせん教えていただけないため、不安ではある。

無論、先ほどからちょいちょい聞いてはいるのだが、


「着いたらわかるよ」


なんて、少し、本当に少し、しかし心の底から嬉しそうに笑うのだ。

これでは、深くも聞けない。

仕方がないので、彼女の少し後ろを、手を引きずるようにされながら歩く。

それから、角を曲がって信号を渡ってを何度か繰り返していると、少し開けた場所に出た。


「ここは、…………空き地、かな?」


「大正解。ここはねー、割と街中なのに、人目に殆ど付かない空き地でさー。一人になりたい時とか、便利に使ってたんだよね」


俺の隣で、適当な倒木に座る佐倉さんは、脚をパタパタとさせる。可愛い。

確かに、周りに街路樹やビルがバラバラと無秩序に存在しているため、ぱっと見ではどんな誰がいるのかというのは、ちょっとわかりそうにない。


「いい場所だね」


「いいっしょ。特に今日は、朝方に沼人形がでたからねー。流石に、みんな怖くて家にいるだろうし、ど安全だよー」


そういえば、沼人形は屋外にしか姿を見せないと聞いた覚えがある。なるほど、一般人にできる最良の方法が、屋内への退避なのか。まるで災害だ。いや、災害には違いないのだけれど。


「それで、水入らずで話し合うんだっけ」


「そう、長生きするためには、そうしろって、田喜野井さんが」


「……何を?」


パタパタパタパタ、脚が揺れる。

しかし、そういえばそこに関する具体的なものは明示されなかった。まあしかし、気になっていることは一つある。


「あのさ、今朝の、深夜と鴨川さんが助けに来てからのことなんだけど……」


そう話をふると、彼女はピクリと肩を震わせた。


「……あー、待って。それなら、わたしからちゃんと言うよ。ちょっと長くなるけど、いい?」


「もちろん」


その為の『デート』である。


「ありがと。……その、わたし、眼が見えないでしょ?これ、生まれつきなんだよね」


何も見えない視線が、いつの間にかこちらを向いていた。


「だから、生まれた時から、何処に行くにも何をするにも、色んな人におんぶにだっこでさ。だから、今のわたしが生きてるのは、色んな人の優しさのおかげ」


何も見てこなかったからか、その眼は、全く濁っていなかった。


「その恩返しって訳じゃないんだけど、わたしは、この世界のために、この世界の人類のために死ぬのが、全然辛くないんだ。人類のために死ぬのが、わたしの死に方だ、みたいな感じでさ」


「…………あれ、でも」


「うん、わかってる。矛盾してるって言いたいんでしょ?」


そう。その通りだ。

死ぬのが辛くないというのは、今朝までの俺と同じだ。だから、俺に逃げろというのはわかる。筋が通っている。

しかし今朝、彼女は俺の先陣を許し、あまつさえそれを止めるでも諌めるでもなく、震えていた。俺と同じ精神状態ならば、真っ先にいの一番に先陣切って突っ込むはずだ。


「今から話すことは、しーちゃんにもひーさんにも先生にも詳しいことは話してない、超レアな過去だから、心してきいてね?」


おちゃらけた口調ではあるが、神妙な面持ちは崩れない。ふぅ、と見た目に似合わない老成したため息をついた。


「なんか、いざ話すとなると緊張しちゃうよ」


佐倉さんは、照れたように少し頬を歪め、笑顔の形に表情筋を組み替えた。

その動作が、なぜだか、奇妙なくらいに胸に突き刺さった。


「えっと、どうしよう。どこから話そうかなぁ」


「無理しなくていいよ!」


見ていられなくなり、思わず声を荒げてしまう。やっちまった。目の前の少女は、眼をまん丸くしている。


「あ、ごめん、えっと……」


「ううん、平気。こっちこそ、ウジウジしててごめんね?」


そう言って、今度はさっきよりは自然に笑顔を見せてくれた。少しだけ、胸をなでおろす。


「しーちゃんとひーさんって、幼馴染じゃない?」


彼女は、言葉を選びながら、そう言う。


「え?うん。めっちゃ仲いいよね、あの二人」


二人のことを少し思い出してみるが、じゃれあっている光景を見ない日は無かったように思う。

……幼馴染なのかペットと飼い主なのか、わかったもんじゃないな、しかし。


「それでね?わたしにも、幼馴染が居たんだ、一人」


「……………………へぇ?」


それは、全くの初耳である。


「その人はね?わたしより三つ歳上だったんだけど、わたしと同じタイミングで欠陥兵器になってさ、一緒の班に配属されたんだ」


彼女の声は、特に変化しない。でもそれは、意図的に震えを隠しているのが見え見えで。


「たまたまその班は、全員割と新米で、すぐにみんな打ち解けたんだよね。多分、それが良くなかったんだよ」


彼女は視線を落とす。


「初めて出撃した日、わたしは、一番槍で沼人形の元へ飛び込んだの。勿論、元からそのことは他の班員にも話してたよ?けどね」


ポタリポタリと、雫が落ちた。


「結局、ほかの三人もわたしと一緒に突っ込んできてさ。そしたらまず、幼馴染じゃない二人が、死んだの。ごく普通に当たり前に、戦死した」


彼女の脚に、水滴が積み重なる。


「死んだとこは、わたしには見えないんだけどさ。近くにあった体温とか気配とか、命の感覚っていうのかな?それが、フッと途絶えるんだよね、人が死ぬと」


次第に、声の震えや身体の震えが大きくなってきて、俺は思わず彼女の手を握ってしまった。

驚いたのだろう。大きく一度身体がびくりとなり、しかし次第に収まっていった。


「……ありがと。もう、大丈夫」


「え?でも……」


「大丈夫だから‼」


自らの喉を引きちぎるような彼女の叫びを聞いて、俺は、そうは見えないと思いながらも、何も言えなくなってしまった。手を離す。


「それで、二人が鬼籍に入ってから、わたしと幼馴染で必死に闘って、闘って、それで、わたしだけ生き延びたの」


あいつは沼人形と相討ちになって死んじゃった。

もはや彼女は涙を零しさえしない。


「で、丁度その頃、関西への寄騎から凱旋してきた鴨川班にも二人戦死が出たことがわかって、わたしと、次に来た新米をその穴に入れようってなったのが、半年前」


彼女がこちらを向く。


「最初は、ひーさんにもしーちゃんにも、自己犠牲狂いのイカれた女だと思われてたみたいで、なかなか打ち解けられなくて。結局、しーちゃんのおかげでなんとかなったけど、仲良くなるのに一月くらいかかったかな」


佐倉さんは、遠い目をした。なるほど、深夜のコミュ力の高さは折り紙付きのものらしい。


「で、半年経ってやってきたのが、他ならぬ君」


泣きすぎて真っ赤になった瞳で、俺を見つめてくる。


「本部長には、闘いが終盤になってきたって楽観視してる奴がいるせいで後輩が来るのは遅いと思う、とは言われたけど、まさかこんなに遅いとは思わなかったよ」


「いや、それを俺に言われてもなんだけどね?」


二人で、少しだけ笑う。風が彼女の前髪を撫ぜて、虚空へ去った。


「…………半年も来なかったんだよね、君はさ」


「?」


「半年経ったんだよね、三人が死んでからさ」


彼女の身体が、ガクガクと震える。まるで、今朝のように。


「さ、佐倉さん……?」


「これだけ時間が経てば、もう平気だと思ったのに!!」


彼女の矮躯に押し込められた悲惨が、飛び散るかのような絶叫。


「……もう、復帰できると思ったのに。今度こそ、ちゃんと死ねると思ったのに」


一度はとまったはずの涙が、堰を切ったように再び流れ落ちはじめた。


「でも、ダメだったよ。君には、逃げるようにカッコつけて言って、そこまでは平気だった。ちゃんと先輩ズラした闘う人間だった」


ぼたぼたと、彼女の顔から流血のように涙が溢れる。


「そこからは、もうダメダメ。山についた辺りから怖くてしかたなかったし、君と手を繋いだ時も、震えを悟られないようにするので必死でさ」


少女は自虐的に笑む。涙はとまらない。


「で、君が沼人形の正面に立ったのが雰囲気で伝わってきて、また人が死ぬんだなって思ったら、助けなきゃなのに、気づいたら崩れ落ちてた」


はい、わたしの話おしまいー。


最後にそうやって無理矢理笑顔を見せて、彼女の話は終わった。幼子が見せる泣き顔のような、歪んだ笑顔だった。


「先生は、佐倉さんのそれについてなんか言ってたの?」


「先生?……『トラウマを克服しろとも、恐怖に打ち勝てとも、言わないよ。けど、一人の人間として、生き延びた人間として、いつかその苦難を乗り越えて欲しい』みたいなこと言ってたよ」


死ぬのが怖くて前線に立てないとしか言ってないのに、全部お見通しでびっくりしちゃった。

そう言ったあと、彼女はこちらに涙に潤んだ視線を向けた。


「……さて、君の番かな、うん」


「へ?」


「やだな、腹を割って胸襟を開いて話すんでしょ?ほら、市川くんの話もしてよ」


若干睨むように、それでいて羨ましそうに彼女は俺をみる。


「わたしみたいに、半年前のわたしみたいに死が怖くない君は、何を話してくれるのかな?」


「そうだな……」


少し、口ごもる。


「俺もさ、同じザマだったんだよ、佐倉さんと」


「え?」


きょとんとした表情の佐倉さんを横目に、先ほど田喜野井さんに話したことを、繰り返し佐倉さんにも告げる。

死ぬのは怖くなかったこと。

沼人形の前に立ったら、弾丸が出なかったこと。

帰還した後、田喜野井さんに診てもらったこと。

結局俺は、死ぬのが怖いただの普通の人間だったこと。

ほとんどはしょらず、丸々全部語り尽した。


「ま、こんな感じかな」


「……確かに、同じザマだね」


「だろ?」


ニカッと彼女に笑いかける。しかし、これは不興を買ったらしく、ツンと顔をそらされた。むむむ。


「……えっと、佐倉さんは、どうしたいとか、ある?」


「わたし?そりゃわたしは、闘いたいよ」


明瞭な口調で、きっぱりと言い切った。


「怖いけど、怖くても、わたしは闘わなきゃいけないんだ」


さっきまで大泣きしていたのが信じられないくらいに、意志のこめられた瞳だった。


「…………強いね、佐倉さんは」


「……そうかな?」


彼女は照れたように頭を掻く。


「だいたい今朝も、そう思ってはいたのに上手くいかなかったし……」


「……あ、じゃあ、それならさ」


「?」


「罰ゲーム決めない?」


本日何度めかの、佐倉紗玖羅のポカーン顔がでた。


「いや、だから、次キチンと闘えなかったら罰ゲーム」


はっきり言って、この言葉は酷いと思う。

彼女の重すぎる過去に対して軽すぎるし、強すぎる意志に対して弱すぎる。



でも。



このくらいのフワリとした言葉で彼女の重さと強さに風穴を開けなければ、いつかそれに押し潰されてしまう気がした。


(気がしたんだけどなぁ……)


あまりに彼女の呆然とした表情から変化が起こらないので、しくじったように思う。


「ふ、ふふ」


(なんか急にめっちゃ笑顔だ!?)


これは、激怒フラグじゃなかろうか。笑いながら額に血管と怒りマークの浮かんでいるアレじゃなかろうか。


「すんませんふざけ過ぎましたよねごめんなさい俺が悪かったですなんでもしますどうかお許しを」


慌てて全力で頭を下げて謝罪する。土下座も辞さない覚悟だ。

しかし、しばし頭を下げていたが返答もリアクションもない。

これはガチでやらかしたパターンかと、戦々兢々としながら恐る恐る顔を上げる。


「いや、正直全然怒ってないけどね?むしろ割とグッドアイデアだと思ってるよ?」


「…………えぇー!?」


なんか、めっちゃ徒労だった。がくりと肩を落とす。


「あ、でも、なんでもしてくれるんだっけー?」


(……んん!?ダメなやつだこれ!?)


目がらんらんとしていた。案外、イタズラとか好きなのかこの子。


「な、に、し、て、も、ら、お、う、か、な、ー」


実に楽しそうである。


「そうだね、練乳かけて目玉焼きでも食べようか?」


「…………あれ?わたしのことバカにしてる!?」


「してるしてる」


ケケケと笑う。ちょっと強めの目力で見つめられた。


「ま、冗談だけど、どうする?俺も男だから、二言はないよ?なんかした方がいいなら絶対するけど」


「……そっかぁ。それならね」


ズッと、彼女の顔がこちらに寄せられた。見えていないからか、妙に近い。顔をどけようとしたら、後頭部に右手を当てられた。



「わたしより先に死なないで」



目と鼻の先で、彼女は言う。呼気が肌に触れた。


「お願いします」


俺の頭に触れている手が、カタカタ小刻みに震えていた。


「…………わかりました」


彼女の右手を握りしめる。


「絶対死にません」


佐倉さんは、俺の顔を見れない。

それでも、俺の決意が伝わればいいなと、心底思った。



***



「そういえば、さっきの罰ゲームだけどさ」


関東本部への帰り道で、隣を歩く彼女にそう声をかけた。


「思いついたけど、失敗した時に話すね?」


「それ、わたし一生聞けないんだけど」


かっけえ。

そういえば、相変わらず俺の手の中に彼女の手はある。カップルかって話だが、仕方ない。

しかし、なんだろう。



行きと違って、妙に気恥ずかしいのだが?



というか、自分の手が汗ばんでないか気になる。女性は特にそういうの気にしそうだ。いやまぁ、気にされた所で佐倉さんならネタにしてくれそうだけども。それでも、引かれたら嫌なのは確かだ。


「…………ってば」


いや、そこまで困らないはずなんだけどな?悪様に吹聴して回る人でもないし。彼女は善人だ。なんというか、見た目通り精神も幼いのかもしれない。わかりやすく、一本気質。深夜に近い。


「ちょっと、聞いてる!?」


「ふぇやぁい!?」


急に耳元で大声を出された。


「手が、痛いってば」


「んあ、ごめんごめん」


悩みすぎて、随分しっかり握ってしまっていたようだ。いかんいかん。大体、そんなことをしたら余計嫌われるというのに。

にしても、そうか。そんなにぎゅーっと握ってたか、俺。気づかなかったな。


「ほらまたぁ!!痛いって言ってるでしょ!?」


「え、また!?ごめんね!?」


佐倉さんが唇をとがらせる。ちらりとその表情を窺うと、言葉ほどは嫌がって無さそうだった。

良かった。胸をなでおろす。


(……そんな心配することかぁ?)


自分自身の思考だが、どうもよくわからん。


「あ、ごめん。ちょっとストップ」


なにやら連絡が入ったらしく、通常より若干物々しい携帯電話を取り出した佐倉さんは、それを耳に当てて立ち止まった。つられて俺も歩みを止める。

この携帯電話は戦線への支給品で、俺や佐倉さんなどの兵や、田喜野井さんなどの前線に立たない人にも配布されている。


「市川くん、朗報だよ」


「朗報?どんな連絡だったの?」


「近くにまた沼人形がでたってさ。お互い、決意と誓いを果たすチャンスだよ」


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