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神話戦線異常ナシ   作者: 田辺サトシ
12/12

エピローグ イルトエマ

「おーい!無事かぁ!?」


関東本部に帰り着き、慣れない松葉杖をつきながら(これも、酒々井班の人々が用意してくれたものだ。慣れすぎだってば)帰着した俺を最初に迎えたのは、深夜の大声だった。

なんだか、物凄く久しぶりに彼女を見た気がする。たかが今朝以来なのに。

とりあえず、心配させるのもなんだろうと、松葉杖を掲げ、適当に振り回す。

結果、思いっきりバランスを崩してこけた。


「バカかお前ー!?」


叫びながら深夜が駆け寄ってくる。

うん、正直今のはバカだったと思うし、近くに立つ酒々井の冷めた目が超辛い。

因みに佐倉は、沼人形にとどめをさしたのが彼女だということで、報告のために鴨川さんに連れて行かれた。

とにかく、このまま地に伏し続けるわけにもいかないので、なんとか立とうと試みる。


「あーあー、いいから寝てろ寝てろ!」


そんなことを言いながら、深夜が俺の腕を掴み、ヒョイっと持ち上げた。


「え、ちょっ……」


「いいからいいから、な?」


そんな調子で、最終的には深夜におぶられてしまった。何の因果だろう。


「二人が世話になったな、タタラ」


「別に、仕事だからな。気にしないでいい」


「そうか、悪いな。他の班員にもよろしく伝えてくれ」


深夜のその言葉に片手を振り、酒々井は車の方へと向かった。


「さ、帰るぞ」


「え、あ、うん。その前に、降ろしてくれる?」


「ヤダよ、なんか楽しくなってきたし」


「…………えぇー」


そんなわけで、おぶわれたまま、進む。このまま田喜野井さんの診察を受けることになるらしい。そりゃそうか。


「あの、普通に恥ずかしいんだけど……」


「別にアタシは恥ずかしくねえし」


「いやいやいやいや」


暴君か。

彼女はへらへらと、らしくない笑みを見せた。


「…………なんかあったのか?」


「……んえ?……イ、イヤー、ナンモナイヨー?」


下手か。わかりやすすぎるだろう。


「……それを、お前に言われるアタシの気持ちを考えたことはあるか?」


「いや、まずもって言ってねえよ」


もう不便というか、一方通行なテレパシーに近い。何の利点があるってんだ。


「とにかく、何があったんだ?」


「……あー、その、な?」


はっきりとした性格の彼女にしては珍しく、歯切れの悪い喋り方をする。これはいよいよ、何かあったらしい。


「なんだよ、言えって」


「んー、なんかあったといえば、あったんだけどな……」


それからしばらく彼女は逡巡していたが、最終的に覚悟を決めたらしく、口を開いた。


「アタシさぁ、たまたま聞いちゃったんだよ」


「……?何を?」


「お前がサクラに、デートしようぜって言ったの」



は?



「いや、別にな?思春期の男女がさ、どういう関係性を持とうが、とやかく言う気はアタシにはねえよ?」



 は?



「でも、確認って大事だろ?大事だよな?」



彼女は、世界を滅ぼすミサイルの発射コードを盗み聴きしてしまったかのように真剣極まりない表情で、こう言った。





「お前、サクラのこと好きなの?」


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