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序開
──聖典は綴る。
脆弱な人間を哀れ、悲観した世界の主は、
自らが創造した聖なる異形に命じて、その『力』を分け与えたのだと。
聖典は物語る。
だが、結局、最終的に人間は自滅する生き物であると識っている。
にもかかわらず、与え続けることしかしないその愚かさ。慈悲、否──それはもはや、滑稽というしかないのではないか。
しかし、そうではないと誰かが言う。その『力』を正しく使役するのが、私たちであると。世界は陰湿で残虐で冷酷で、おまけに絶望に満ち満ちていて。だからこそ、その『力』は世界の光になれるのだと。誰かが声を大にして叫ぶ。
何度、何度同じ自滅を繰り返そうとも。
誰か──彼女は、静かに喉を震わせる。
「もう一度、ここからはじめよう」と──。




