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SOES  作者: 照明屋 明抜
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松港

「やっぱ覚えてないかぁ。う~ん、すんません、ありがとうございました。」そういってため息つき、頭をボリボリとかきながら古びた一軒家から男が出てきた。


「またダメでしたか。港さんいい加減に身だしなみは整えてから、アポ取った方が良いですって!特に髪!パーマをあてるか、ワックスぐらい付けてください!」女はそう言ってムスっとした態度で外に停めてあった青いスポーツタイプの車に乗った。

それもそのはず、その男、港は服装に関しては紺のリクルートスーツをビシッと決めて着ているものの、髪はクセっ毛、いわゆる天然パーマで、髪が延び放題で端からみれば、だらしなく見えるのは当然だった。


「松くんゴメン。悪かったな~。髪がムチャムチャするのが嫌いで、ワックスとか付けたくないんだよ。」港はブツブツそう言いながら、また頭かきながら松という女性の乗っている車へ歩いた。


さらに港は愚痴を漏らした。「松はさ、髪質が真っ直ぐだから悩んだことないと思うけどさ。クセっ毛の俺からしたら、スッゴいコンプレックスな悩みなんだよ。パーマあてりゃ問題ないよ?でもそれって負けじゃん?」止まらない愚痴に対し、松が「早く乗って下さい。日が暮れる前に早くでますよ!」そう言ってさえぎった。港は歯痒そうな顔をしながら、はいはいと少しふて腐れたような素振りをして車に乗り込んだ。


港は車に乗り込むとジャケットの内ポケットから何回も折り畳んでは開いてを繰り返した何枚もの紙を取りだし、先ほど会った人の名前が書いてある項目に×印のチェックをつけた。「よしっ!次の接触者に会いに行くとしますか!次はと。遠いな。」そういって取り出した紙を内ポケットにしまった。


「次は京都区までお願いするよ。」そう言って港はシートベルトを締めた。車は東京区と京都区の区界に向けて走りだした。


港は思いに更ける面持ちで、助手席から外を眺めていた。すると港の携帯電話がコミカルな音で着信を知らせた。

「はい港です。」そういって電話に出た。上司なのか頭を下げたり、手振りしたりで電話していた。「わかりました。一旦戻ります。」電話を終わり、松に東京区に戻るように指示した。


車は向かっていた方向から、来た道へ戻っていった。


少し走らすと唐突に松は港に「港さんは何でこの省に入ったんですか?」と尋ねた。

松は気になっていた事があった。松は当時10歳の時にその震災で家族を失った。あの日何もできなかった自分が悔しくて、二度と大切な人達を失わない為に頑張って勉強し、鍛え、そして25歳になった時に公報でSOESの募集があり、すぐに応募して試験を受け、合格し、ようやく守れる立場の仕事に着く事ができた。それに対して港は試験も受けず、SOES上層部関係者の推薦で入社したらしく、それが松は気にくわなかった。

そして突然松の前に現れて「昨日入社したばかりの港 三渡です。今日から君の上司なんで宜く!」とチャラけた感じで挨拶をしてきて、本当に上司になのかと不愉快だった。さらに自分より後に入り、5つも若いこの男が何故急に幹部になったのか疑問も多々あった。

当時は嫌いだった。上司という事もあり、新人の頃は聞けなかったが、松がSOESに入社して3年がたった。そこで松はその時の疑問をふと思い出したので聞いてみたのだ。


港は松の質問に対して「壊れすぎたこの国を元に戻す為だよ。」外を眺めながら答えた。そして続けた。「国連、世界各国の人達のおかげで日ノ本も豊かになり成長した。だけどそれは見た目だけ。松はあそこにあるものが見える?」そういって助手席側の窓の向こうの荒れ果てた議事堂を指差した。

松は前に車が走ってないのを確認して助手席側を見て答えた。「はい。何もなく荒れ果ててる、崩れた議事堂跡が見えます。」そういってまた前を向いた。

港はそうかと議事堂跡を見ながら相づちした。


松は港が何を考えてるのか分からない部分が多かった。入社当初は気にくわなかったが、3年一緒に仕事してその態度には慣れた。そういうタイプの人間だと。ただ仲間として、港の事を知りたいと思って聞いてみたが、やはり港は変わり者だと思った。

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