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第4章 パトロール

第4章 パトロール


第1話 巡航


 アプリは、順調に進んでいた。

いくつかのROSを訪れた。

全てが、順調そうに見えた。

少なくとも、LB13に介入して来る者は、いなかった。

LB13が、お節介を焼くほど危険な領域も無かった。

 いくつかのLOSが、ムーへの留学と交流を望んだ。

その内のほとんどが、自力で自分の恒星系を脱出する事が、出来なかった。


 アインは、試作品を作っている。

「これで、全てのEXPレベルが測定できるはずだ」

アインは、試したい。

危険は無い。

身体の外側を一寸、測定するだけだ。

EXPレベル1以上になると、身体から何かを放射するらしい。

だが、それは普段、外側に放射されない。

身体の内側へと放射される。

 アインは、その放射するものの正体を知りたかった。

自分を被検体として、調べた。

解らなかった。

だが、その過程で、それを検知する事が可能な事が解った。

 アインは思っている。

「今までもそうだが、原理の解らないものを活用している。

いいのだろうか?」

アインには、諦めもある。

「次元の不可観測原理」が、阻害している事が予測される。

この世界に自分がいるかぎり、正確な観測データは得られないのだ。

この世界の外からしか、正確なデータは測定できない。



第2話 測定


 アインは、皆には内緒でそれぞれを測定した。


鎮也…パワーLV3、周波数LV4、速度LV3

未久…パワーLV0、周波数LV5、速度LV2

アイン…パワーLV0、周波数LV5、速度LV3

レオ…パワーLV0、周波数LV4、速度LV2

幸…パワーLV0、周波数LV3、速度LV2

新和…パワーLV1、周波数LV3、速度LV3

イワン…パワーLV5、周波数LV0、速度LV0

サム…パワーLV0、周波数LV3、速度LV3

ポセイ…パワーLV0、周波数LV4、速度LV4

マリヤ…パワーLV0、周波数LV4、速度LV1

アリス…パワーLV0、周波数LV4、速度LV3

リー…パワーLV0、周波数LV3、速度LV3

ロバート…パワーLV0、周波数LV3、速度LV3


ミサ…パワーLV0、周波数LV7、速度LV1


 皆のレベルが上がっている。

ムーを出発した時、皆のEXPレベルは、高くてLV1だった。

洗礼を受けて、初歩を覚えた。

呪文も使った。

精も発動させた。

「無意識の意識」「指数関数」も手に入れた。

様々な経験もした。


 その結果が、成果がこれなのか。

アインには、充分満足できた。


 足りないものが、2つあった。

1つ目は、防御レベルが測定できていない。

2つ目は、質だ。

アインは、関数の追求を止めていた。

アインの興味は「場」と「質」になっていた。

だが、この「質」を解明するのは、困難に思えた。


 物質の質は、4つの種類で解明できると考えている。

だが、精神の質は、いくつあるのだ。


 アイン「物質より精神の方がやっかいだ」



第3話 ムー


 アプリは、現在、ムーから800光年離れたところにいる。


 銀河系の標準座標を決めた。

ムーから銀河中心まで伸ばした軸をC軸と呼んだ。

C軸に直交する平面をX、Y軸と呼んだ。

 「次元の不可観測原理」から座標軸の目盛が均一でない事が予測される。

アイン「今は、仕方がないのだ」


C軸は、アプリの歩みに合わせて随時、修正して行く。

座標基準艦「サーベイⅠ」を製造した。

 サーベイⅠは、XとY軸を測量する。

XとY軸は、空間転移の時間を基準とし、単位は光年で現わした。

ROS内のローカル座標は、「サーベイⅠ」が測量したROS基準点を元に出した。

ROS基準点は、各ROSに5個設置されている。

3個あれば充分だが、5個あれば、そのROSの遷移量も測定できる。

C軸の座標は、メガ光年を単位とした。

そして、銀河の位置座標は(C,X,Y)で示された。

原点は、ムーだ。

座標(0,0,0)だ。


 不思議だが、空間転移を阻害するものが、時々ある。

ムーでは、この調査が行われていた。


 ムーの研究の勢いは、止まらない。

アプリが、歩んだROSを調べると、赤色矮星が6割くらいあった。

そして、白色矮星が2割くらいあった。

だが、両方とも1MSを超えるものは、少ない。

白色矮星は、密度が高い。

そして、トップとボトムクォ-クが豊富にある。

セントニウムは、特定の赤色矮星に豊富にある。


 各ROSには、LOSが1.2個平均で存在する。

文明度を分類する。

自力で、恒星系を脱出できるレベルのLOSは、7個しかない。

かつての地球を基準にすると、

20,21世紀レベルが2割。

16~19世紀レベルが2割。

0~15世紀レベルが3割。

それ以前が3割だ。


各ROSにTNSを設置した。

LOS同士の交流には、MTSが加わる。

LOSの自治には干渉しない。


 平穏に見えた。



第4話 警告


 何者なのか?

分からない。

 アプリは、強制的に停められた。

その力が何なのか?

分からない。


 停めた者が言った。

「あの空間爆発はお前達の仕業か?

空間が破れたら、どうするつもりだったのだ。

うん?

お前達は、EXP属か?

雑魚のいたずらか。

だが、度が過ぎる」


 LB13は、何が起こっているのか理解できない。

突然、強制的に停められた。

「EXP属?

聞いた事がある。

雑魚?

う~ん。

度?

…」

鎮也「あの空間爆発は、僕達が原因ではありません。

貴方達は?」

「では、誰がやったのだ?

そして、お前達に質問の権利は無い」


 その時、割り込んだ者がいる。

「まぁ、わしに免じて許してやってくれ。

あの空間爆発は、その者達が原因ではない。

それに、あれは線香花火を放ったようなものじゃ」

「あっ、貴方は」


 LB13は、蚊帳の外だ。



第5話 何が違う?


 鎮也「先生。

訳は説明して貰えないのでしょうか?」

「いつから、お前達の先生になったのじゃ。

少し、覗かせてやろうか」


 LB13の意識が飛んだ。

意識だけが、飛行した。

そこが、何処なのか?

分からなかった。

だが、違う。

何が違うのか?分からない程、違う。


 アイン「あれは、物質なのか?

あれは、精神なのか?

あれは、何なのだ」


 「役に立ったかな?

未だ、無理じゃな」


 意識が戻った。

鎮也「…」

レオ「…」

アイン「興味深い、が…」

他のもの達も無言だった。


 この世界の一部なのか?


 アインは、『深遠の手』を発動させた。

この精は、この世界を外から見る事が出来るはずだ。

その事を、アインは知っている。

だが、今まで使った事は無かった。

アイン「見えても、何も解決しない」


 その通りだった。

見えた。

いや、見えなかった。

銀河の中心から、半径15,000~17,000光年くらいが見えない。

何故見えないのか?分からない。

見えたのは、銀河の辺境だけだ。


 何も解決しなかった。



第6話 FCT属


 停めた者が名を告げた。

スザクと告げた。

彼は、銀河辺境をパトロールする4人の中の一人だそうだ。

そして、FCT属らしい。


 FCT属は、数学的に言えば「階乗」だ。

指数は、遥かに及ばない。

数量も複雑さも、見当が付かない。


 スザクは、FCTレベル3だと言う。

洗礼授与者のレベルは、いくつなのだ。


スザク「お前達は、何か勘違いをしている。

それより、あの方を何故知っているのだ?

何故、あの方はお前達を庇護するのだ?」

鎮也「あの方は、我々に洗礼を授けてくれた方です。

ですが、名前も存じていません」

スザク「…」

洗礼授与者「それくらいなら、よいじゃろう。

その者達にわしの名は、役に立たない」

スザク「分かりました。

ミュウレン様だ。

この銀河の席次第2位のお方だ。

私も、直接話が出来たのは、始めてだ」

鎮也「えっ!席次第2位?」

スザク「そうだ。

属で言えば、我々の2つか3つ上の方だ。

私にも、見当が付かない。

だが、何故ミュウレン様が、お前達を…」


スザク「私にもう一度、会いたければ、後1万光年進むがよい」



・アインの考察の第8話 集合


 「部分の総和は、全体にならない」

と、言った者がいた。


 アインは、思っていた。

「当然だ。

部分を拡張し過ぎているのだ。

部分は、単純化しなければならない。

 部分が説明できても、他の部分に皺寄せを与えるだけだ」


 全体集合が、全体である事を証明する事は、難しい。

それを、数学の概念で定義する事はできる。

 だが、現実世界で全体集合が現れる事はない。

仮に現れたとしても、その瞬間に、それは完全独立系となる。

完全独立系は、他の集合から干渉できなくなる。

 干渉できるのなら、完全独立系ではない。


 現在の技術で、全体集合を特定する事は出来ない。

大事なのは、部分集合を単純化し、その総和を全体集合に近づける事だ。

 だが、全体集合は、もっと大きな全体集合の部分集合だ。


 この世界は、部分集合である全体集合の集まりなのだ。


 アインは、思っている。

「部分集合は、部分の原理で説明しなければならない。

部分集合の全体集合が見つかった時、部分の原理は捨てられる。

全体集合の原理が必要になる。

 だが、その全体集合も部分集合だ。

進化とは、この繰り返しの事を言うのだ」


 アイン「果てしなく見えるが、地道な努力を必要とする」



・元素の第7話 銀


 銀は原子番号47の元素だ。

電気伝導率・熱伝導率・可視光線の反射率は、全ての金属中で最大だ。

殺菌作用を持つ事が、知られている。


47は、素数だ。

アインが喜びそうな数だ。

ムーでは、精神に弱く作用する事が知られている。

殺菌性は、この弱い作用が原因だと考えられている。

銀が金属(固体の相)として、自然界に存在する理由が説明されている。


 仮に「銀が気体だったならば」と、考えた。

結果は「地球に生命体の存在は無かった」と出た。

精神の紡がれている過程を阻害する事が、予測される。

かつての迷信は、ただの迷信ではなかったと、思われる。

誰かが経験した結果が、迷信として残ったのだろう。


 ムーでは銀を物質としてではなく、精神作用物として検討している。


銀イオンは、1価の陽イオンだ。

固体の相として安定している時は、あまり意味を持たない。

だが、液体や気体へと相が変わると特別な意味を持つ。

銀の融点と沸点は高い。

自然界で、相が変じる可能性は低い。

 ムーの研究では、タンパク質と反応し触媒化する事が解った。


 「生命体と深く関わりのある元素」である事が解った。



・遺伝子の第3話 覚悟


 丹波は、境界を探していた。

「歩み」と「防衛」の境いを探していた。


 歩みは、人類の必須の課題だ。

生きている限り、歩みを止める事は出来ない。

歩みを止める事は、時間を止める事と同義だ。

 大切なのは、歩む方向だ。

だが、その方向を決めるのは、誰なのだ。

今の人類に考えられるのは、個だけだ。

 かつて、個に酷く干渉していた時代があった。

ムーの基本は「全は一、一は全」だ。

「一」の方向は、全の方向に影響を与える。

「全」は、方向を持っているのだろうか?


 いや、「全」が全てだと言い切る事ができない。

丹波「無限の空回りだ」


 防衛は、分かる。

これは、本能だ。

本能の解明は、進んでいる。


「一」が「全」を離れる事がある。

これは、物質がいい例だ。

そして、離れた「一」は「全」となる。


 「全」は、無数に存在するのだ。

「全」の「全」も無数に存在するのだ。

つまり、「全」も「一」も同じものなのだ。


 問題は「一」が「全」になる時のきっかけだ。

候補がある。

それは「一」の覚悟だ。


 覚悟が無ければ「一」は「全」を離れる事ができない。


 丹波は、結論付けていた。

「今の人類は、覚悟が足りないのだ。

遺伝子の発現率が、これに重要な意味を持つ」


 彼は、この事をMTSに示唆した。



・ムーの技術の第2話 へプダイバリオン


 朝居が指揮を執っている。

へプダイバリオンは、暴れ馬のようだ。

いくつものクォ-クの組み合わせが実験された。

だが、全ての組み合わせがプラズマ化し、安定しない。


 1つだけ成功したものが、あった。

そのは、ジャンプクォ-ク21個から構成されるケンザイムⅡだ。

これは、電荷を持っていない。


 プラズマ化の原因は、電荷の暴走だと考えられた。

電荷を持つダイバリオンは、禁忌だ。

自然界の元素と化学反応を起こすと、不測になる。

危険だ。


 暗号を仕掛けた。

電荷に暗号を仕掛けた。

「密慮の牢」を用いた。

「密慮の牢」は無作為の暗号だ。

仕掛けた技術者も、解くのは困難だ。

多くの人類の意図が「鍵」だ。

「鍵」を得るのは、不可能だ。


 暗号を掛けた電荷は、他の物質と反応できない。

へプダイバリオンを加工すると同時に、暗号を掛ける。

加工されたへプダイバリオンは、再加工が出来ない。

 試作品が作られた。

だが、これはモニュメントとしてムーに飾られた。

試作品は、何の役にも立たない。


 だが、電荷を持つダリバリオンが作られた。

へプダイバリオンは、電荷を持っていた。


 そして、このへプダリバリオンは、アプリの強化にのみ用いられる事になった。

朝居「もっと、汎用性のあるダイバリオンの開発が必要だ」



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