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第2章 被検体

第2章 被検体


第1話 窪み


 アリスは、2つの滅亡したLOSで「窪み」を見つけていた。

これで、3つの窪みを見つけた。

「深さが違うのかな?

最も深い?のは、狂気の惑星です」


 アインの指向性の思考が始まった。

この時のアインは「トランス状態」だ。

生命維持は、全て本能にのみ任せる。

全ての思考を1方向に集める。

集中力ではない。

力ではない。

それは、質なのだ。

そこには、無防備なアインが横たわっていた。


「…

窪みは、解る。

ブラックホールの真逆なのだ。

強力な斥力場を発生させればよい。

だが、どうやって…

斥力子の集積装置か。

いや、斥力子には不純物が混じっている。

それを使って、人工的に反ブラックホールを作る事は、不可能だ。

トランスットⅡか。

これならば、可能かもしれない。

そして、重力子の半位相も加われば可能だ。

それ以上の技術なら、我々の手に負えない。

3つの窪みの深さ?に違いがある。

彼も、試行途中なのだ。

それ以上の技術は、ありえない。

では、どうすればよいのだ

符号反転装置は通用するのだろうか」


 アインのトランスが解けた。



第2話 呪文


 アインが皆に「答え」を伝えた。

レオ「試すしかない」

鎮也「ダメな時は、次の方法を取ろう」


 1番小さな窪みに対して、符号反転装置を作用させた。

効果があるように見える。

だが、符号反転装置が突然、消滅した。

窪みは、符号反転装置を敵と見做したのだろうか。

窪みは、反撃装置を持っているのだろうか。

窪みは、意識を持っているのだろうか。

何も解らない。


 鎮也が言った。

「いい機会かもしれない。

呪文を使ってみよう」

未久は黙っている。

暗黙の了解と、受け止めていいのだろう。

危険があれば、未久の示唆があるはずだ。


 皆の望みが集められる。

「窪みを消滅させたい」

強く、強く望んだ。

呪文を誰かが発動させた。


 あの蛇が現れた。

「又、お前達か。

今度は何だ。

そうか。

解った」


 蛇は、軽く尾を振っただけに見えた。

窪みが、無くなっていた。

誰かが言おうとした。


蛇「3つとも、やっておいた。

貸しは、あの者に請求しておく」


 アプリは、残り2つの窪みの場所に行った。

2つ共無くなっていた。

一か所には、垣だけが残っていた。

ロバートは、その垣を回収した。


 誰かが言った。

「我々の借りを支払うあの者とは、洗礼授与者の事だろうか?」



第3話 備え


 アインは考えていた。

「符号反転装置の消滅は、何が原因だったのだろう。

パワー不足か。

いや、違う。

もしそうなら、消滅ではなく、爆発だ。

対消滅でも爆発だ。

解らない。

誰かが、爆発を吸収したとでも、いうのだろうか」


 レオは、ムーと通信を行っていた。

「至急、セントニウムを転送してくれ。

量?

そうだな、月を消滅させるくらいかな。

うん、その何十倍も確保してあるのか。

なら、訂正だ。

月を5個、消滅させる分送ってくれ。

 それから、ニオブを少し送ってくれ。

量?

 お前の脳みそを密着させるくらいだ」


 新和が『無明の檻』を発動させた。

この精は、強力な亜空間を発生せせる。

その中での実験は、実世界に影響を及ぼさない。


 シランから老朽艦を1隻譲って貰った。

それを亜空間に運ぶ。

リーがいた。

リーは、ニオブを少量老朽艦の中枢部へ、転送した。

老朽艦は、機能しなくなった。

 ニオブの成果が、試された。

新和は、『無明の檻』を閉じた。

『無明の檻』は、内部の物質をバラバラにして現実世界に返す。

おそらく、バラバラとは、物質の最小単位だ。


 第1LOSに向かう。



第4話 第1LOS


ルッカスは、焦りと怒りに塗れていた。

「何故、被検体が届かないのだ。

実験が出来ない。

誰が、邪魔をしているのだ。

第2LOSもそうだ。

もう少しで被検体を増やせるところを、邪魔された」


 彼は、ほとんど万能の科学レアレベル者だった。

仮説は、湯水の如く湧き出る。

だが、実験が出来ない。

確証が得られないのだ。


 自分の仮説は、正しいと思っていた。

だが、少しの実験をすると、微妙な食い違いが出た。

彼は、「仮説より実験が大切」だと思うようになった。

彼は、50万年前くらいまでは、我慢できた。

「命を犠牲にしてまで、実験する事はない」

溜まった思いは、不満から欲求へと変わった。

欲求は、隠れて発散した。


 その頃、第1LOSでは、行方不明事件が起こっていた。

それが、じょじょに加速する。

 ルッカスが容疑者として上がった。

だが、証拠は無い。

当局は、ルッカスを軟禁する事にした。

もちろんそれは、ルッカスに気付かれないように、だった。

 だが、ルッカスは予測していた。

第1LOSには、ルッカスの頭脳を超える者はいなかった。

ルッカスは、心理学にも通じていた。


 彼は、心理操作装置「ハラスメント付加装置」を開発していた。

この装置は、威力を発揮した。

始めは、小さな嫌がらせが、各地で起こった。

それがエスカレートして行った。

 多くの者が、互いに苦しみを与え合う。

それは、内乱にまで達した。

 精神安定者は、脆くも崩れ去って行った。

当局は、ルッカスどころではない。


 ルッカスは、薄笑いを浮かべていた。

「これで、労せずに被検体が手に入る」



第5話 思わぬ事態


 ルッカスの思惑が外れた。

この惑星の中をエネルギーが飛び交う。

ルッカスは、装置を止めた。

だが、それは遅かった。


 この惑星では、滅亡へと向かう、戦争が始まっていた。

もはや、この渦は誰にも止められない。

ルッカスは、自分のシェルターに籠った。

そのシェルターを破壊するものは、この惑星には無い。


 何百年経たのだろうか。

外界に生命体は、いなくなった。

ルッカスは、孤独になった。

泣き暮れたのかもしれない。

気付くのが、遅すぎた。

装置を止めるのが遅かった、と気付いた。


 彼は、研究に没頭した。

いくつもの仮説を立てた。

開発が、成功したものもあった。


 10万年くらい前、彼の欲求が蘇った。

「物質の実験はいくらでも出来る。

だが、遺伝子の実験には被検体が必要だ」

彼は、誰にも分からないように、隣のLOSを攻撃した。


 始めは、数人の被検体を浚って来た。

だんだん加速が付いた。

「誰にも分かりはしない」


だが、隣のLOSから抗議が来た。

「お前の仕業なのは、分かっている」


ルッカス「私の高尚な実験を邪魔する者は、皆敵だ」



第6話 滅亡の惑星


 ルッカスも学習していた。

「あの装置を使えば、被検体がいなくなる」

彼は、隣のLOSに艦隊を送り込んだ。

それも、突然に現れたように見せた。

それは、ルッカスのカモフラージュだった。

 本当の狙いは「窪み」を作る事だった。

だが、失敗した。

「窪み」は、全ての精神を消し去った。


 ルッカスは、考えた。

「やはり、試さないとうまく行かない」

彼の標的は、その隣のLOSへと移った。


 標的となったLOSは、ルッカスにとって、簡単ではなかった。

何重にもフィールドを張っている。

暗号を用いている箇所もある。


ルッカス「楽しませてくれる」

彼にとっては、実験材料が増えただけだった。

理論的には、フィールドを破る方法を知っている。

暗号も解読方法を知っている。


 「装置を作って、試すだけだ」


だが、うまく行かない。

相当な時間が必要だった。


 その時間が、今の第2LOSを救った。

第2LOSでは、次々と破られて行くフィールドを見ていた。

ルッカスにして見れば遅くても、第2LOSにとっては早い。


 ルッカスは、ついに最後のフィールドを破った。

そして「窪み」を作った。

「窪み」は、改良してあった。

前の「窪み」は、斥力子だけを大量に発生させる装置だった。

何故、大量の斥力子が精神を消滅させるのか解らない。

 今度の装置は、重力子を混ぜた。

その結果として、亜空間が出来る事は知っている。

それが、精神消滅の緩衝の役目をする事が予測されている。

 うまくいっているように見える。

だが、被検体とした人数よりも、多くの人工が減って行く。

彼は未だこの時、空間爆発を知らなかった。

 原因を調べた彼は、失敗を覚った。

精神が空間爆発に飲み込まれている事が予測される。

それは、混ぜた重力子が無くなるまで続くだろう。



第7話 他のROS


 失敗を覚ったルッカスは、今の第2LOSに魔手を伸ばした。

だが、フィールドを破れない。

彼は、未だ、「複雑の木」を知らなかった。


 理論から実験へと興味が移った彼には、数学の素養が足りなかった。

刻々と変わる暗号を破れない。

彼は、選択に迫られていた。

諦めるか。

続けるか。


 彼の出した結論は、優先順位だった。

第1優先は、被検体を得る事だった。

第2優先が、第2LOSを攻略する事だった。


 彼は、他のROSへと向かった。

その惑星は、無防備だった。

簡単に落ちた。

そして「窪み」を作った。

今度の「窪み」は、空間爆発を起こさない。

空間飽和状態を保つように設計されている。


 面白いように、被検体が手に入った。

だが、今、邪魔をする者がいる。

被検体が、手に入らない。

第2LOSも破れない。


 ルッカス「誰だ、私の高尚な望みを邪魔する者は」



第8話 第1LOS


 アプリは、第1LOSに近付こうとしている。

目の前に大艦隊が現れた。

アプリは、既にそれを観測していた。

ルッカスの暗号フィールドは、解読されていた。

 セント砲が炸裂する。

ニオブが転送される。

 大艦隊は、見る間に減って行く。


 新和が、物質の補給を止めている。

大艦隊の周りを強力な結界が巡っている。

アプリもその中だ。


 第1LOSが、眼前に迫った。

アリスが感知する。

「この惑星に生命体は1つだけです」

ロバートがZF11を走らせる。

サムは、ポセイを残して皆を地上へと、降り立たせる。


 ZF11には、アリスも同乗している。

「あそこだけは、破壊しないで」

「了解!」

ZF隊は、Hエラドル砲を唸らせる。

残っているのは、1区画だけだ。


 ルッカスには、事態が飲み込めない。

鎮也「お前だけは、許す事が出来ない」

ルッカス「だっ、誰だ。お前らは」


 もはや、ルッカスに打つ手は1つしかない。

「窪み」を発生させた。

だが、それは逆流した。

ルッカスの精神は、飛ばされた。

何処へ?

誰にも解らない。


 アインも不思議だった。

「何故、逆流したのだ?」


 考えられるのは、あの蛇の余波だけだ。



・アインの考察の第6話 素数


 素数は、2から始まる不規則整数列だ。

不規則に見えるのは、その法則が解らないからだ。

整数列の中に現れる素数は、何を基準として現れるのだ。

途中までは、確認されている。

もっともらしい法則もある。

だが、証明はされていない。


 考え方の1種類に「上下」がある。

トップ・ダウン方法とボトム・アップ方法だ。

トップ・ダウン方法は、理論に近い。

「こうあるべき、こうなるはずだ」として、考える。

ボトム・アップ方法は、実験に近い。

部品作りから始める。

その部品を組み立てる。

予測図はある。

だが、その予測通りには行かない。


アイン「トップ・ダウン方法とボトム・アップ方法は、組み合わせて使うのだ」


 アインは、ムーでの研究に期待している。

彼らは、自然界の元素の特性を確定させようとしている。

結論は、いつになるのか、予測がつかない。

彼らの方法は、ボトム・アップ方法に属する。

彼らは、部品をアインに与えてくれる。


 アインは、トップ・ダウン方法を担当する。

アインは、「元素の特性は素数と関係している」と、考えている。

そして、それは「質に繋がる」と考えている。


 アインは、2次素数にも取り組んでいる。

素数が、現れる順番も整数だ。

そこにも、素数がある。


だが、未だ「序」だ。



・アインの考察の第7話 ベクトル


 確か、ベクトルと言う言葉を目にしたのは、中学の時だった。

高校の授業で、学習するらしいが、学習した記憶がない。

アインは、高校の普通科を卒業している。

 その時は、科学者になろうとは、思っていなかった。

彼は、動物好きだ。

できるなら、動物と一緒の仕事がしたかった。


 だが、生来の「質」なのだろうか。

1つの事に夢中になると、他の事に意識が回らない。

小学の高学年と中学の時が、それだった。

 彼は、動物の世話をする事が、日課だった。

合い間を見て、数学の教科書を漁った。

中学の時には、高校の数学を独学でマスターした。

 性格は、ずぼらだ。

夢中になると人が変わる。


 彼の始めての突然変異は、11歳頃なのかもしれない。

変人扱いされた。

 そして、MTSから迎えが来たのが、23歳の頃だった。


 その時、自分の役割を知った。

「数学だけでは、足りないのだ」

彼の能力の基本は、数学だ。

やたらと数値で現わそうとする傾向がある。


 そして、1つの「質」を持っている。

「疑問」だ。

拒絶するための疑問ではない。

前に進むための疑問だ。


アインは思っている。

「数学と疑問が自分を形成している」と。


 ベクトルを理解した時、面白いと思った。

全てがこれで、説明できると思った。

だが、それは間違いだった。

間違いに気付くのに数年かかった。


ベクトルは、「形」だけなのだ。

この世界は、「象」で構成されているのだ。


 アインは、ふと思う。

「方向と力」

「質と力」

「似ている」



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