TypedefStruct[0]="パーティー";
「絶対危険な目に合わせるなよ。そんなことしたらただじゃおかな、いて、サヤ、いたいって。」
詰め所前に着くと、既にサヤとマイケルは話が終わっていた。良く許したなと顔を見る前ならば思っただろうが、傷だらけの顔を見ればさもありなんというところだ。
今も俺に念押ししようとするマイケルの足をぐりぐりと踏みつけている。
「はは、分かっているさ。門が見える範囲からは出はしないよ。その範囲ならウッディーか、他には向こうからは襲ってこない動物ぐらいだろ?」
「おう、良く知ってるな? それ以上離れたらゴブリンどもが徘徊してるからな。本当は俺も着いていきたかったんだが」
「必要ありませんお兄様。それに私ももう十八歳なのですから、一人でも十分なぐらいです」
「そ、それはだめだぞ。はぁ。こんな感じだからなんとか守ってやってくれないか」
「苦労してますね。まぁ危なそうならすぐ帰しますよ」
そう言うとサヤは不満そうにするが、ここで反論したら長いと分かっているのだろう。無言で正門の方へ向かおうとする。
「あ、サヤちゃん、そっちよりは裏門の方がウッディー以外いなくてやりやすいんだ。そっちに行こうよ」
「そうなのですか? 裏門の方はあまり行ったことがなかったので」
「まぁちょっと分かりづらいしね。その代わりウッディー狩り放題だよ」
「狩り放題・・・すぐ行きましょう今行きましょう。」
そう言うが否や、彼女は裏門の方へずんずん進んでいった。
「あ、居ましたよ! あそこです。さぁ狩りましょう!」
速足で裏門を抜けたと思ったら、彼女はすぐに獲物を探し出す。
「まってよサヤちゃん。ちゃんと準備をしないと。ちょっと手を出して?」
「ん? こうですか?」
出された手を握り、「パーティー結成」と強く念じる。すると、頭の中にイメージがわいてきた。
name:サヤ
BaseLv:1
HP:100%
ME:100%
SE:0%
このあたりのゲームらしさが、完全には別世界だとは思えない理由だ。
「な、なにを?」
突然のことに彼女は驚いて手を引っ込める。そういえば、これでパーティー結成できなかったらただの軟派な男ということになってしまうな。
「ああ、ごめんごめん。一応パーティーを結成しておこうと思ってね」
「え? パーティーですか? 冒険者ギルドでないとできないと思っていましたが、さっきのようなことでも出来るんですか?」
「あ、ああそうなんだ。まぁ出来る人とできない人がいるみたいだけどね」
そうなのか。冒険者ならだれでもできると思っていたのだが。NPCは出来ないという設定なのか?
「まぁこれで俺とサヤちゃんとで一緒に戦うことができるよ。俺だけでも倒せるけど、一人でも倒せるようになりたいんでしょ?」
そうやって話をそらす。あまり異端だと思われても困るから。
「……サヤ。サヤと呼びなさいカツミ。」
「え?」
「パーティーを組んだのでしょう? ならば対等の冒険者の筈です」
あぁ、子供扱いされたくないのか。まぁ十八歳だというのならばそうだろうな。
「あぁ。ごめんごめん。えっとサヤ、よろしく頼むよ」
「はい! こちらこそよろしく! し、してやるから感謝しなさい」
なるほど。毒舌は人見知りするのを隠すためのものか。まぁ指摘してあげない方が良いな。
「さてとりあえず俺の戦い方を見せるから、そのあとでサヤち、サヤがどうやって戦えるか考えようか。ディー、短剣を2本頼む」
ちゃん付けしようとしたらにらまれたので慌てて言い直してディーに武装を頼む。結局ホームにも転生前の装備は無かった。まぁ期待はしていなかったけれど、あの装備は愛着があったので残念だった。
「はいはーい。左にダガー、右にさびたダガーですね! ほほいのほいっと」
ディーの掛け声によって両側に重みを感じる。別にこれぐらいの重さなら街中でも武装してても良いのだが、街中では武装しないというロールプレイを長年続けていたので癖になっているのだ。まぁこれが現実であるならば、一般人は武装していない方が何かと波風が立たなくて良いだろう。
「さて、じゃあ今から戦って見せるから良く見ててね、ってどうしたの?」
武器を構え、さあ始めようとして振りかえったところ、サヤが目を見開いてこちらを見ていた。
「よ、妖精? 何故こんなとこへ? それよりどうしてヒューマンと一緒にいるの?」
「おぉ、この人わたしがみえるのですね! エルフさんでしょうか?」
「そうか。ハーフエルフ、だったな。忘れてたよ。紹介しなきゃな」
そういえばゲーム中、NPCは妖精に無反応だったから忘れていた。プレイヤー達はもれなく、「妖精の加護を得た選ばれた冒険者」なのだ。エルフという特殊な種族以外、その存在を見ることも出来ないということになっている。
「こいつは妖精のディー。俺が駆け出しの冒険者のころからの相棒さ」
「はいです! ご主人さまとは八年の付き合いになるんですよ!」
えっへんと胸をはるディー。そこは威張る所なのか。
「そ、そう。少し変わっているとは思いましたが、そこまでとは思いもよりませんでした。でもよいのですか? 気が付いていたようですが、私はハーフエルフですよ?」
「あぁ、穢れだっけ? 俺は気にしないよ? なぁ? ディー。」
「はいです! 私としては久々にご主人さま以外の人と喋ることができてご機嫌なのですよ」
そういいながら俺とサヤの周りを八の字を書くように飛びまわるディー。こっちのディーはおしゃべり好きそうだしなぁ。
「ディーちゃんもわ、私とおしゃべりしてくれるの?」
「もちろんですよー。あ、でも私はご主人様のあいぼーですからね? そこのところは重要ですよ?」
「う、うん。えと、よろしくね、ディーちゃん。」
「はいです。よろしくされますよ、サヤちゃん。」
ふむ。そういえば普通の妖精はエルフの眷属で、エルフはハーフエルフを忌み嫌っているから結果的に妖精もハーフエルフにとっては敵対関係にあったのか。あまり深く考えてなかったな。まぁ嬉しそうで何よりだ。
「じゃ、改めて戦うけどどうする? ディーと遊んどくかい?」
「い、いえ。私もがんばります。あ、あとでお話しても良いですよね?」
「ああ。ディーさえ良ければ構わないよ」
「もちのろんですよー」
「話がまとまったところで行ってくるよ。まずは見ててね」
そういって両手に武器を握り、ウッディーに切りかかる。まずは両手で一撃ずつの二撃。おどろきつつも振りかえりざまの攻撃を軽いステップでよけて更に二撃。そのまま体当たりしてくるのを横に抜けるようによけながら更に二撃。そしてがら空きになった背後に渾身の力を込めて二本の武器をつきたてると、そのままウッディーは倒れて動かなくなった。
「ふう。こんなものかな?」
「す、すごいですね。あの数を一日で集めていたので強いのだろうとは思っていましたが、ここまでとは」
「そう? ウッディーぐらいなら慣れればこれぐらい問題ないさ。所で、サヤは何で戦うの?」
「は、はい。魔術なら少しは。初級魔術は一通り使えます」
「へぇ、すごいじゃない。ファイアーボールなら三発ぐらいで倒せるでしょ?」
「そうなのですが・・・一発撃って二発目打つ前に近づかれてしまうので一人では倒せないのです」
やろうとしたのか。なかなか度胸のある娘だ。しかし、流石は半分エルフの血を引いているだけのことはあるのか。ベースレベルが1なのに初級魔法を全て使えるとは。プレイヤーならすべて覚える頃には十ぐらいになっているものだが。
「そっか。んー、魔法で倒す場合に、一人で倒すのならば二つに一つだ。一つは近付かれる前に倒す、もう一つは敵の攻撃を避けながら魔法を使う」
「そ、そんなのどっちも無理です」
「いや、案外なんとかなるものだよ? んー、ちょっとやって見せるかな」
そう言いながら、魔法の一覧、と念じると使える魔法の一覧が出てきた。
転生前、基本的に攻撃は武器で行う近接ファイターではあったが、自己強化や敵の行動妨害といった魔法は習得していた。だから、すべてとはいかなくても基礎魔法ぐらいは残っていないかと思ったのだが。
「まさか、前使っていた魔法全部残っているとは。これは便利だ。まぁ熟練度不足で効果はあまり期待できないだろうけど」
「はい? 熟練度?」
「いや、こっちの話。じゃあ避けながら魔法を使う見本を見せるから見ててね」
そう言いながら、丁度良い距離に居るウッディーへファイアーボールを飛ばす。魔法は念じることで準備が始まり、口に出すことで発動する。
「さて、ここから向かってくるわけだけど、向かってくる間にもう一発撃てるなら撃つ、無理なら来るまで待つ」
そういいながら、向かってくるウッディーを見据える。ほんとは撃つこともできたが、あまり早く倒すと見本にならない。
そうやって突進してきたウッディーを脇に抜けるように回避しながら魔法の準備を開始する。念じてから発動できるようになるまでおよそ一秒かからないほど。熟練度は初期化されている筈だからおそらくサヤも同じぐらいで発動できるはず。
「ファイアボール」
準備完了と同時に発動。それと同時に回避へ移る。念じている間は動けないが、口に出した瞬間に回避は可能なのだ。そして今までいた場所へウッディーはくらいながらも攻撃を行っていた。もちろん誰もいなくなっているので攻撃はミスだ。
そして回避し終わればまた即座に準備を開始する。発動と同時に回避。燃えながら倒れ落ちるウッディー。
「ふう、こんな感じさ。敵の攻撃間隔が準備から発動までの時間より長くなるタイミングを見計らって魔法を使えばいい。無理そうだと思えばキャンセルして回避しても良いし」
「す、すごいです。」
「そうでしょう、えっへん。でもご主人様は魔法もつかえたんですねぇ」
「まぁサポート程度だよ」
今まで敵の集中攻撃を掻い潜りながら魔法を使ってきたのだ。これぐらいは初歩中の初歩である。もちろん準備に時間がかかる大魔法は無理だが、そんなものは当然守られながら使うものだ。
「まぁまずは俺が戦っている奴に魔法を当てて、攻撃を避けながら打っているイメージでやってみてよ。さすがにいきなり本番はこわいでしょ」
「はい、それでお願いします」
「それじゃあいくか」
「れっつごー」
TypedefStructは構造体を定義する構文です。
本来は以下のように使います。
typedef struct
{
内容定義;
}構造体名;
※Cの場合。
興味のある方は各プログラム言語の専用のページで調べてみてください。