ThreadMain[0]="コンビネーション";
「明らかにここが目的地、だろうな……」
サヤと共にルサ=ルカ達を追いかけた俺たちが見たものは、巨大な扉のある広間だった。
そしてそこには、さも当然と言わんばかりに門番が待ち構えていたのであった。
「結構長い時間、置いていかれてたのに追いつけたのはこいつのせいか……」
俺はその門番を見て唸る。ルサ=ルカ達であれば、普通の門番ならものともしない筈なのに、まだ倒し切れていない。それもその筈、強さ以外での倒しにくさならゲーム中最高クラスとも言われ、嫌われていた怪物だったからだ。
そいつは門番としては一般的な動く石像の一種ではある。だが、その素材が問題だった。
その素材は『砂』、この砂に埋まった遺跡にはとても似合った存在であるサンドゴーレムだ。動きは鈍重で、攻撃力は高い方ではあるが避けるのは容易い。このあたりはどの素材のゴーレムでも同じである。防御に関してはゴーレムは大きく分けて二種類あり、石でできたストーンゴーレムのような硬質のものと、水でできたウォーターゴーレムといった軟質のものがある。硬質のゴーレムは素材により硬さが変わるが、その硬ささえ貫けるのなら倒せる。貫けないなら倒せないといった分かりやすい存在。軟質のゴーレムは例え切り裂くことができても、ゴーレムの生命の源をつぶさない限りすぐに復活する。だが逆に言うとコアさえ潰せば倒せるために、コアを見抜く能力さえあれば、攻撃力がほとんどない攻撃でも倒せるという存在。
そして、このサンドゴーレムはどちらか? と言えば”両方”なのだった。魔力によって硬質化した砂を凝縮した軟体のゴーレム。その硬質化した砂を切り裂けるだけの威力の攻撃を、コアに狙って打ち込まなければならないという面倒極まりない存在だ。
「魔法で援護した方が良いでしょうか?」
「いや、止めておいた方が良いだろう。一撃で倒しきれる訳でもなく、対魔法生物用の解除魔法が有る訳でもない。多分今はコアを捜している最中、邪魔になるだけだろう」
サヤの魔力は天井知らずと言って良いほど時間と共に強力になってきているが、ピンポイントで攻撃する術がない以上しょうがない。火の魔術は威力はあるが収縮には向かないのだ。そして手数で攻めるタイプの今の俺も、特にできることが無いのが歯痒い。サヤも同じ思いなのだろう。
「おう、追いついたか兄ちゃん。まぁ走って疲れたろ、あの二人に任せておけば問題ねぇから周りの警戒でもしながら休んでいてくれや」
俺達に気が付いたヴォルドがそう声をかけてくれた。そう言う彼は安心しきって魔力回復に努めている。そうだな、出来ることとできないことがある。今俺たちに出来ることはこの後何かあっても対処できるようにしておくことだ。
「しっかし、こいつは普通のサンドゴーレムじゃねえな。普通のより硬いうえに巧みにコアの位置を悟らせない動きをしてやがる」
ヴォルドの言うとおりだった。サンドゴーレムは確かに嫌らしい敵だが、ルサ=ルカぐらいの強さがあればここまで時間はかからない筈であった。その違いは俺はゲームとの違いだと思っていたのだが、どうやらこいつはこの世界の中でも普通に強い方らしい。あまり時間をかけすぎる訳にはいかない為に、だんだんルサ=ルカが焦ってきている。
元々この手の軟体系ゴーレムをどうやって倒すかと言うと、色々な場所に攻撃を撃ちこみその時の反応(光るものがあったり、変に庇ったり)で見付けるのだが、軟体と言うには硬いこいつにはそれなりの予備動作の要る攻撃でなければ有効にならない。つまり攻撃回数が時間当たりに大幅に減ってしまっている。
それを補うためにルサ=ルカとニックが交互に攻撃しているのだが、それでもまだ見付けきれていない。せめて俺も弱点を見つけれる程度の攻撃ができれば良いのだが……。
「いや……、待てよ? もしかすると試してみる価値はあるかもしれない」
俺はそう呟きながら立ちあがってルサ=ルカ達のところへ歩き出す。技が使える以上、それに伴うシステムも有効なのじゃないかと思ったのだ。
邪魔にならないようにルサ=ルカとニックの攻撃の合間に俺の攻撃を挟む。このサンドゴーレムは、通常の個体に比べて防御は巧みな方ではあるが、攻撃は鈍重のままで、そんな攻撃では俺に当たる訳もないので邪魔さえしなければ問題ない。
「やはり、今の俺程度の攻撃じゃ表面を削るだけか」
効かないとは分かっていたが、やはり残念だ。だが、これは確認以外にも技を使うための準備だ。
「カツミ、おまえとはこいつは相性が悪い。休んでいても良いぞ、私たちだけでも倒せる」
「いえ、少し考えがあるんです。次は”少し強めの一撃”をしてもらえますか?」
「……分かった。まだコアは見付けていないがちょっと本気で行く」
訝しみながらもルサ=ルカは応じてくれる。彼女の武器である両手持ち長剣の”強めの一撃”であれば恐らく溜めた縦振り攻撃である『パワースラッシュ』だろう。ゲーム中のNPCとしてもたしか使っていた筈だ。
「切り裂け! 我が剣よ! はぁぁあ!」
俺の期待に応え、やはり『パワースラッシュ』を使ってくれるルサ=ルカ。これは元々強めの一撃の多い両手長剣の技の中で縦に範囲の広い技だ。俺は彼女の技のタイミングを注意深く見守り、攻撃が当たるタイミングを計る。
直撃。サンドゴーレムが縦に切り裂かれる。
そして、短めの一呼吸分待ってから、技を発動させる。
「ラッシュ」
俺はただのラッシュを放つ。ピアシングアタックを使えば貫通ぐらいはするだろうが、点での攻撃でコアを探すのは非効率すぎる。だからと言ってそもそも範囲の広い技をまだ覚えていない上に貫ける程の威力がない。であるのならば、普通に行けばこのラッシュも全てはじかれる筈だが……。
「な、縦切り四連だと!?」
「しかも威力もお嬢様ほどじゃないにしてもかなりの強さですか……」
ルサ=ルカとニックが俺の攻撃に驚きの声を上げる。それもその筈、ただの短剣による攻撃の筈なのにルサ=ルカのパワースラッシュと同じような縦切りが連続して放たれているからだ。
「良し! やっぱりコンボも使えるのか」
俺は心の中でガッツポーズを取る。コンビネーションアタック、通称コンボ。SAVRでパーティーを組んで戦うメリットの一つ。タイミング良く二人の技と技、または中級以上の魔法を繋ぐことで、一つ前の技の何割かの威力と範囲が次の攻撃に乗るのだ。その割合や効果の出方は繋ぐ技同士の相性によるが、この縦切り強攻撃系の技とラッシュのような連続攻撃系の技の相性はゲーム中でも頻繁に使われる強い方の組み合わせだった。
その効果は『前に放った縦切り技の半分の威力、範囲がそれぞれの攻撃に乗る』である。つまりルサ=ルカのパワースラッシュの半分の威力+俺の短剣で四連撃したことになる。結果、サンドゴーレムの左半身の殆どが消し飛んだ。
「何をしたんだ? カツミではこんな威力は出せないと思っていたんだが……」
「ルサ=ルカ将軍の攻撃をうまく利用したんですよ。詳細はまた後で、どうやら少しコアに傷つけれたようですよ」
「……分かった、ちゃんと後で教えてくれよ?」
そう言いながらも彼女はまたコアを捜すために攻撃を再開した。半分吹き飛ばしたがまだ生きていて、だが少し弱っている様子であるのならば、残り半分の中央よりにある筈だ。またコアの位置が移動しないうちに仕留めなければいけない。
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(しかし、どうやって説明しようかな?)
無事サンドゴーレムのコアを潰したルサ=ルカ達がこちらに戻ってくるのを見ながら俺は考えていた。まさかそう言うシステムですとそのまま説明する訳にもいかないだろう。
コンボはこちらの世界にもあるにも関わらず、他の誰もが見付けていない。戦闘経験の長いルサ=ルカ達が知らない以上、少なくとも一般的には知られていないようだ。けれど理由は想像が付く。それは相性とタイミングだろう。
そもそもコンボになる技の組み合わせがある。そうでなければ、または効果の低いものであれば偶々であったと思ってもしょうがないだろう。また、タイミングがかなりシビアなのもある。
『最後の技の最後の攻撃着弾の約0.8秒後から約0.1秒以内に次の技を当てる』
それがコンビネーションアタック成立の条件。それを相手の攻撃を掻い潜り行うのだ。普通は気が付かないだろう。ゲームでは八年という歳月の中で、廃人と呼ばれるゲーマー達が必死になって調査した結果に判明した条件なのだ。サービス開始後数年は、偶々でても致命打の一種じゃないか、という程度の認識だった。それを、運営側の数少ない技に関する説明欄に『技と技を組み合わせによって相性がある』といった表示があり、そこから推測して発見したという経緯がある。
元々普通の攻撃と”技”とをあまり区別していないこの世界の人々にはそもそも疑問に思うきっかけが無いために調べられず、現在も知られていないのだろう。ルサ=ルカもさっきの攻撃は”力を貯めた縦切り”としてしか放っていないようだった。ゲームでは”通常攻撃”を行うのと”技”を発動させるのには明確な違いがあるが、彼女達にとっては技とは攻撃の型の一つに過ぎないのだろう。
「さて、扉はニックとヴォルドが調べていてくれている」
だからそのうちに話せとルサ=ルカは言ってきた。いつの間にかヴォルドは扉の近くで何かをやっている。
「えっと、さっきも言った通り、ルサ=ルカ将軍の技の力を利用しているんですよ。タイミング良く攻撃することで技のエネルギーを利用することができるんです」
「ふむ……それは、私にもできるのか?」
「すぐには、難しいかもしれません。ですが可能か不可能かと言われれば多分可能なんじゃないでしょうか? 俺以外にも使える人は知っていますから」
NPCだったルサ=ルカに使えるかどうかは自信がない。けれどゲーム中のイベントでは他のNPCが似たようなことをやっていた筈なので出来ないことはないんじゃないだろうか。
ただ、教えるのも難しい。条件を言うのは簡単だが、実際にやるのはかなり厳しい。早すぎても遅すぎてもだめなのだから。俺も何度も失敗して体で覚えていたから出来る技なのだ。慣れれば技を見てからでも使えるのだが……。
ゲームの時の高難易度クエストはコンボが使えることが前提の難易度の敵ばかりであったために、必要に迫られて必死にタイミングを覚えた記憶が思い出される。
「そうか……わかった。お前だけの特殊能力、と言う訳では無いんだな? ならば良い、帰ったら教えてくれ!」
ルサ=ルカは俺の答えに満足したのか、また踵を返して扉の方へ向かっていった。俺だけが使えるかどうか、が問題だったのか?
まぁルサ=ルカはお人好しだからな……。ニック辺りには更に怪しまれただろうが、まあこの先いずればれる事だろう。問題を先延ばしにしただけのような気がするが、しょうが無い。その時はその時だ。
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少しの間マイケルと雑談しているとルサ=ルカが俺達に声をかけてきた、どうやら、扉の開け方が分かったようだ。
ゲーム的に言えば、この先には少なくとも何かは居る。それがボスなのか、イベントだけなのかは分からない。けれどコンボが使えるのは大きい。
「さて、気合いを入れて行くぜ!」
「おう」
「はい!」
覚悟を決めて気合いを入れたマイケルの掛け声に、俺たちは続いた。
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