PostMessage[0]="望まない日常";
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/Update /USER:KATSUMI /MODE:STEP2
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WORLD ==========>|100%
CHARACTOR ==========>|100%
$ SAVR:make install
WORLD [OK]
CHARACTOR [OK]
Installation Completed!
$ SAVR:
$ SAVR:NOAH -f
starting N.O.A.H
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目を覚ますと、そこは”見慣れた”天井だった。
聞きなれた、壊れかけのエアコンの少し不快な音。シンプルなデジタル表示の時計。
俺の、部屋だ。
今までの出来事は、ゲームの中でのこと、だったのか……?
「……起きるか」
簡易VR装置を取り外しながら、ベットから起き上がる。数年前と違って、今はもう脳波とやり取りするヘッドギアと、法律で義務化された心拍数をチェックする装置ぐらいしかない。
ふと、疑問に思う。
かなり長い間プレイしていた筈だが、別に体がだるいとか、臭くなっていると言ったことがない。ちょっと寝すぎたぐらいの感触である。だがそれはVR後はいつものことだ。
改めて時計の日付欄を見る。
「1日も経っていない……何故だ?」
最後にログインした時から5時間程度。つまり恐らく転生した丁度ぐらいの時間である。
ゲームですらなく、あれは夢、だったとでもいうのだろうか?
もう一度ログインすれば分かるのだろう。だが、……躊躇する。また、戻れなくなったら……。
「……飯でも食ってから、メールで運営にでも問い合わせるか」
どうせもう引退したゲームだ。バグかどうかなんて関わらず、どうなったかだけ聞けば良い。そう思って部屋から出ようと扉をあけると、
そこには居る筈のない”見慣れた少女”がいた。
「おっはよー、お兄ちゃん! やっと起きたんだね?」
「……ディー? なんで、ここに?」
そう、そこには妖精、ゲームにしか居ない筈のディーが、人間の少女のサイズの大きさになって立っていたのだ。
「もぉ、お兄ちゃん、また寝ぼけてるの?あのぶいあーるとかいうのやった後は大体そうなんだから。ほらほら、お母さんがご飯出来たって。先行くから顔でも洗ってきたら?」
まだ理解が追い付いていない俺を待たずに、そう言ってディーはリビングへ走って行ってしまった。
待て、”お母さんがご飯”と言ったか? 自称エリート営業マンの俺の母さんはご飯なんて作れないし、頼んでも作ってなどくれない。それは俺と親父の役割なのだ。仕事の内容はよく知らないが、我が家の家計の九割ほどを稼いでいる事実がある以上、文句など言える訳もない。
そして、そんなことを考えながらリビングへ行くと、そこには見知らぬ女性がいた。
「……だ、れ?」
出来るキャリアウーマンであることは事実であるのだろうが、そこの形容詞に若い時から「美人」とか「綺麗な」とかが付くことなどなかった母さん。だが、食事を並べている女性はどう年上にみても30前後が限界。それに明らかに美人だ。
「ほらね、お母さん。お兄ちゃんまたボケてるんだよ。私のことまで忘れるぐらいだし」
そんなことを、先に席についていたディーが頬を膨らましながら言う。
「ふふふ、もう、カツミはあのゲームが好きなのね。でも程ほどにしなさいよ? カツミなら勉強は大丈夫だと思うけど」
そんな事をにこやかに笑いながら喋りかけてくる。
……少なくともディーにとっての”母親”というのはこの人らしい。
だが、どう考えても俺の知っている母親ではない。急遽親父が離婚して再婚したとかなら兎も角。……無いな。親父が変わることなら有っても、あの親父が母さんと別れることなんで出来る訳がない。
「いや、貴女のような若い女の人は知らないと思うのですが」
ディーについては、もしかして俺がボケたのだろうか、との可能性を考えないでもなかった。あの転生後の話のせいで、まだ地に足が付いていない感覚だからだ。だが流石にこれは、俺は何歳の時の子だよ、と言いたくなる。単純計算で10歳前後か?
どこかで、会ったことはあるかもしれないが……?
「……ふふふ、なるほど、そういうことね、カツミ。もう、素直にトマトカレー食べたいって言いなさいよ。そんな若いだなんておべっか使わなくたって作ってあげますよ。でも今日材料買ってきたのよく分かったわね?」
しばし固まった後、何を勘違いしたのか納得して彼女は席についた。いや、トマトカレーなんて好物じゃないぞ。
「なあんだ、お兄ちゃんトマト好きだもんね。ほら、早く席についてよ、おなかすいたぁ」
「いや、どちらかと言えば嫌いな、って、あぁ、分かった分かった」
訝しみながらも、ディーに促されるままに席につく。夢の中のせいなのか、この女性は兎も角、ディーのことはあまり強く疑うことができない。俺の中では『知らない仲じゃない』からだ。
「いただきます」
手を合わせ、流されるままに食事を始める。
「……うまい」
一口、食べただけで分かる。ちょっと前まであの世界で携帯食糧を食べていたからというのもあるだろうが、普通にうまい。家庭の味、というやつだろうか。なんだか体に良さそうでもある。
「ふふ、なんだか今日のカツミは変ね。いつもと変わらないわよ?」
俺と親父の料理はレトルトにちょっと手を加えただけのもの。
『こんなものは食べたことがない』
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「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまぁ!」
「はい、おそまつさまでした」
「おにいちゃん! 一緒にゲームやろうよ! えっとね、えっとね!」
「ほらほら、お兄ちゃんは勉強があるんだから邪魔しないの」
「えー。つまんなーい」
「あ、えっと、その前に、ここは」
「ほらほら、ディーの相手は私がしておくから、安心して部屋に帰りなさい。ね、ディー。ご本を読んであげましょうか」
「わーい、えっとね、あのね……」
食後に問いただそうとしたのだが、そんな隙もなく彼女たちは母の部屋へ入って行ってしまった。
このまま追いかけて問い詰めるべきか……。考えながら扉の前に歩いて行き、そこで扉のノブに手をかけて、止まる。
そうだった。物心ついてから、この部屋に入ったことはなかったんだった。
放任主義で、基本的に殆どのことは許してくれる母。けれど、この部屋に入る事だけは絶対に許さなかった。その記憶がよみがえり、扉を開けることを躊躇する。
これは、夢なのか。それともやらせか、いたずらか何かか。
「……くそ、どうにでもなれ」
意を決して扉をあけると、
……そこには何もなかった。
何もない、黒い空間。
「……な、え? どういうことだよ。さっきの人は? ……ディーはどこに行ったんだ?」
訳が分からない。
『ピンポーン』
混乱していると、玄関のチャイムが鳴った。普段、滅多に鳴る事の無い、この家のチャイム。
今度は何だ? ……何なんだここは?
「……もう誰でも良い、誰でも良いから、助けて、くれよぉ!」
そう力いっぱい叫んだ時、呼応するかのように玄関が勝手に開く。
そしてドアからまばゆい光が視界を満たし、ついには何も見えなくなった。
エアコンの音が、止まった。
PostMessage ポストメッセージ
相手と内容を指定してメッセージを送るメソッド。
送られたメッセージは相手が処理するまで保留され、処理されたかどうかは送り側はそのままでは知ることができない。
※先頭の演出について
雰囲気をお楽しみください。分からなくても問題はありません。