悪魔のような愛娘
「悪魔のような愛娘」
「さてと……今夜は何にしようかな?」
私は買い物籠を持つと、食品コーナーへ向かう。
「ねえ、お母さん!」
「ん?」
娘に袖を引っ張られ、私は彼女の顔を見た。
「ねーねー、これ買ってぇ」
私は娘が持つ物を見て溜め息をつく。それは、明らかにオマケがメインで売られている、無駄に高いだけの「お菓子」だった。
「……あのね、美弥。こういう物は高すぎてうちじゃ買えないの。さ、戻してらっしゃい」
私がそう言うと、娘は一瞬ムッとしたような表情になって、すぐに目に涙を溜める。
……いつもの泣き落とし作戦ね。以前はよく私が折れて色々と買わされてたけど、今はもう騙されない。レジに並んでいる時、背後でほくそえみ『ちょろいもんよ』と、呟く美弥の姿を見てしまったからだ。あれ以来、二度と甘やかすまいと私は心に決めた。
「泣いても駄目。さっさと戻してきなさい、じゃないと置いて行くよ!」
娘は泣き止み、怨念の籠もった目で私を見つめ、お菓子を棚に戻す。
……ふっ、勝った。
「……フン、ケチな婆が。この頑固さ故に白髪が生えたのね」
こ、こいつは……!
私は美弥が言った一言に思わず立ち止まる。
確かに一度だけ鏡台の前で白髪の事をいったけど、あの時美弥は居なかったはず……。
でも襖に十センチ位の隙間があった気が……。
……いつからこんなに口の悪い子供になったのかしら?
「……今、何て言ったのかなぁ? 美弥ちゃん」
怒りを込めた目で、でも出来る限り笑顔を浮かべて娘を見る。
彼女に悪びれた様子は無い。
「何にも言ってない。ねえ、買ってよ! 買ってくれるまでここ動かない!」
ついに大の字になった娘はだだをこね始めた。
「そうして居たいなら、ずっとここに居なさい。お母さんは先に行くからね」
私が立ち去ろうとすると、娘はついに泣き出した。
……ふん、勝手にしなさい。
「うわーん! うちは貧乏だからお菓子も買えないんだ! きっと私が寝てる間に借金取りが来て暴れてるんだ! ……それでお金に困って怪しい仕事にまで手を……むぐっ!」
とんでもない発言を始めた美弥の口を塞ぎ、脇に抱えるとレジへ向かって全力疾走した。
周囲からの哀れみの視線が全身に突き刺さる中レジへと駆け込む。
……もう顔から火が出そうだった。ここのスーパーには恥ずかしくてしばらくこられない。
早く会計を済まして家に帰りたい……。
「……!」
買い物籠をよく見ると、ちゃっかりさっきのお菓子が入っていた。かといってもう戻しに行くわけにはいかない……。そんな事をしたら娘の言葉を肯定してしまう事に……)
仕方なく代金を支払いを済ませると背後から小さな声が聞こえて来た。
「……ちょろいもんよ」
こ、このガキは……!
家庭科の時間にノートに書いたものを見やすく直した物です(笑)
一人称初挑戦なのでおかしな所もあると思いますが、その辺は大目に見てください(汗)