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硝子の水槽

 寒かった。表面に氷が張っているのを男は確認した。冷たい水に手を入れて、氷を除けた。

「ほら、目高さん。起きて、ご飯だよ。」

男は目高に餌を上げるためにスプーンで水槽を軽く叩いた。


 二つ下の子がその様子を見て近付いてきた。

「ねえ、おにいちゃん。水に浮いた餌は泥鰌が食べられないじゃん」

とか言った。男は言った。

「泥鰌は寒い時寝ているんだよ。だから泥鰌さんには餌をあげられないんだ。」

その子は何か言いたげな顔でボールを蹴りだし、離れていった。


 目高は男に言った。

「お前、水槽叩くなよ。うるせえじゃん」

男は

「ごめんごめん。悪かったよ。」

そう言って玄関の中へ入った。カラカラと軽快な音がした。


 次の朝、目高は目を見張った、水槽に大きな手が降りて来た。

「おいおい、乱暴すんなって、おい!」

目高たちは男だと思っていた。手が引いた。目高は皆大慌てで隠れようとした。

 突然いつもの餌がドバドバと落ちてきた。目高たちはエラに入り込んだ餌で苦しくなった。

泥鰌は土の中から上がった途端、その大きな手に握られてしまった。身をくねらせた。


 男は見ていた。その子が家の硝子の水槽に深く手を入れて何かしているのを。男は近付こうとしたが、母に呼ばれて部屋の中に戻った。



 男が水槽の前に戻った。そこには目高の餌まみれで息絶えた泥鰌が蟻に噛まれ、無残な姿になっていた。目高たちは皆水面に浮いて、死んでいた。

硝子の水槽は、割れて、赤い血がその断面に付いていた。

 「目高たち元気か?」

父が来た。

男は父親に殴られた。その拍子に硝子で手を切った。

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