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 烏が街灯に繋がる電線に止まっていた。人がその下を通るたびに鳴き声を出して、驚かせていた。

男もそこを通った。烏は男に言った。

「そこ、通るな」

と、男は尋ねた。

「なぜ?」

「良いから通るな。」

烏は食い気味に言った。男は不思議だったから、すぐ近くの街路樹に居る事にした。


 どんなに経っても相変わらず、烏は下を通る者に叫び続けた。

やがて何度も通っていたみすぼらしい格好の皺だらけのおじいさんが、烏の下から怒鳴った。

「何度もうるさい!叫んでるな!」

と。烏は首を傾げて男に顔を向けた。「こいつは何を言っているのだ」と言いたげだった。

 おじいさんは足元にあった小さな石を持って、烏に向かって投げた。男はそれを見ていた。

烏は何も言わず去っていった。男はなぜだか烏がいた理由を知りたくなって、大荷物を持とうとしたおじいさんを見ていることにした。


 おじいさんは両手に持ちきれない荷物を持っていた。男は

「手伝いましょうか?」

と言った。おじいさんは

「いらん。来るな」

とだけ言った。男は街路樹にもう一度背を預けた。


 そしておじいさんが荷物を持った時、大きな音を立てたダンプが迫ってきていることに男は気づいた。ただ通り過ぎるだけかと思った。

ダンプは、なぜだか進行方向がおかしくなって、街路樹には当たらなかったが、荷物を持ちきれず、止まっていたおじいさんに突っ込んだ。


 烏は、また電線に戻って、鳴いていた。

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