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サルマー王国

 北方の大国、サルマー王国は中央ファンタジア帝国と似たような歴史を歩んできた国であった。周辺の小国を次々と征服し、領土を拡大した点は似ているが中央ファンタジア帝国と違う点は最北の覇者、ゼルビア帝国と同盟を結ぶことに成功したことである。いくつかの小国を滅ぼしたことで領土を接した両国は同盟を結ぶことを決めたのである。

 当時、ゼルビア帝国は北西で暴れるガスコーニュ帝国を警戒しており、そちらに全力を注ぎたいと考えていた。故に急速に大頭してきたサルマー王国と戦う事で力を削がれたくないと考えており、サルマー王国からの同盟の提案は渡りに船だったのだ。

 サルマー王国も最北の覇者と戦う事よりも周辺の弱小国を攻める事を優先したのだ。だが、ゼルビア帝国はあくまでサルマー王国側からの侵攻を防ぎたいだけでサルマー王国への救援等については全く考えていなかった。故に同盟と言っているが実際には不可侵条約に近い物であり、互いに軍勢を向けない事で同意したのだ。

 サルマー王国はその後も侵攻を続け、ゼルビア帝国と肩を並べられるだけの国力を手に入れる事が出来た。後は急速に拡大した王国の内部を整理し、反乱分子の鎮圧に力を入れていくはずだったがそこで彼らの運命は大きく狂う事となった。そう、大戦の勃発である。

 サルマー王国はゼルビア帝国と手を結んだようにガネリア共和国とも同盟を結んでいた。これまでのガネリア共和国を考えればサルマー王国の大頭を快く思わずに周辺諸国を率いて侵攻してくる可能性が高かったために早めに同盟を結んでいたのである。ガネリア共和国も最北のゼルビア帝国との緩衝地帯として利用できればいいと軽く考えていた為にこれを了承したが結果的にこれがサルマー王国を滅ぼす原因となった。

 大戦がはじまるとサルマー王国はガネリア共和国の要請を受けて軍を派遣することとなった。しかし、当初は大戦に参加する気はなかったが周辺諸国の大半が反帝国陣営についたことと、ガネリア共和国からの圧力に屈する形で派兵が決まったのである。

 しかし、派兵するからには徹底的にやると決めたサルマー王国は総数に近い12万の兵を出したのだ。数々の国々を征服した屈強なる軍隊だったが帝国の前に惨敗する事になる。そもそも、サルマー王国軍は精強だと言われているが戦った国々の大半が弱小国であり、格下相手の戦いばかりだったのだ。更に言えばサルマー王国は戦場まで長い道のりを歩かなければならず、到着する頃には疲労がたまってしまっていたのだ。

 そんな最悪の状態のサルマー王国軍は休む間もなく北方に展開する帝国軍4万と戦闘状態に入ることとなった。3倍もの差があった両軍だが上記の通りの最悪のコンディションであったサルマー王国軍はガネリア共和国軍にさえ連戦連勝を誇る北方軍に成す術なく蹂躙された。更に言えばこの時軍勢を率いてたのは後に帝国陸軍元帥にまで上り詰める大戦の英雄にして北伐の覇王の異名で呼ばれる事になるグスタフ・メラドリッチであり、サルマー王国軍は例え万全の状態でも勝つ事は出来なかった相手であった。

 この戦いでサルマー王国軍は壊滅。本国に帰還できたのは僅か2万であり、残りは散り散りとなって各地で帰化するか捕虜となってしまっていた。

 大戦も激化し、サルマー王国軍は軍の復興を行うまもなくトラキア王国軍の侵攻を受ける事となった。トラキア王国は数少ない親帝国陣営で大戦に参戦した国家であり、周辺諸国を次々と降しており、サルマー王国にまで手を伸ばしてきていたのだ。

 サルマー王国軍は征服した領土の民を無理やり徴兵し、トラキア王国軍への防御として用いたが帝国軍と同様に精強なトラキア王国軍の前にそれらは僅かな時間稼ぎにしかならなかった。サルマー王国はトラキア王国軍による侵攻開始からわずか2月後に王都郊外にまで侵攻を受け、そのまま王都の防衛戦が行われる事となった。

 この時のトラキア王国軍は13万にも及び、大半が大戦を勝ち抜いてきた精鋭であったが対するサルマー王国軍は長い道のりをかけて戻って来た敗残兵1万と周辺から徴兵した民間人5万と数と質の両方で劣っていた。無論、まともな防衛などできるはずもなく、サルマー王国軍は経った数時間の攻防の末に王都をトラキア王国軍に占領されたのである。

 王都の占領に伴い大半の王族と官僚は捕えられ、王国は機能不全に陥ることとなった。この話は瞬く間に王国各地に広がり、今が最大のチャンスだと感じた征服された国々の残党は即座に蜂起し、サルマー王国を内部からも崩壊させていった。

 更に辛うじて脱出に成功した一部の軍人たちが王族の末席を国王に据えて正統政府を結成。徹底抗戦の構えを見せたのである。これらの一連の流れはなんと王都陥落から半月の出来事だった。あまりにも早い王国の崩壊に流石のトラキア王国軍も何処から手を出せばいいのか分からない上に情報が錯そうするサルマー王国へのこれ以上の侵攻は無用な損害を増やすだけだと判断し、王都と周辺の地域を占領するだけに留まることとなった。

 戦後、王都は解放され、サルマー王国は多額の賠償金と引き換えに滅亡を避ける事が出来た。しかし、急速に拡大した王国は征服した土地を全て失い、更に北部では合流を拒んだ北サルマー王国が建国されてしまっていた。

 ゼルビア帝国の力を借りれないかと考えた者もいたがガスコーニュ帝国との本格的な戦争がはじまり、それどころではなくなったうえに衰退したサルマー王国を助けてくれるとも思えず、同盟も事実上破棄されている状態になってしまっていた。


「反帝国陣営の誰もが思っていた中央ファンタジア帝国が戦後の様子をサルマー王国が身を以て教えてくれている」


 後に、サルマー王国の衰退っぷりにとある歴史家はそう皮肉を込めてコメントしたという。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

上が大戦直前のサルマー王国と周辺地図で下が大戦後の地図になります。


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