セレスタイア連合
セレスタイア連合ははっきり言ってしまえば敗戦国の集合体である。
元々はセレスタイア王国が大戦で敗北したことで隣国に超大国が誕生したことに危機を覚えたことから始まった。
「我らは敗北した。だがまだ国がある。民がいる。力が残っている」
時のセレスタイア国王はそう宣言し、自国を中心とする連合国家の構想を提唱した。これは元々戦勝国になった際に周辺諸国との同盟として使う予定であったがその予定を大幅に変更し、対帝国同盟とでもいうべきものに変更したのである。
セレスタイアは最初に隣国のアレクギア共和国に話を持ち掛けた。セレスタイアは賠償金のみで済んだがアレクギア共和国は領土の半分近くを喪失している。北部の主要な農耕地帯は中央ファンタジア帝国に、もともと独立色の強かったベイケ公爵家が公国として独立し、ファルザー地方同盟に加わってしまっていた。国力は三分の一以下にまで落ち込み、衰退は確実だったがセレスタイアの話を受けて連合国家構想に賛同した。どのみち連合が誕生すればアレクギア共和国は3つの国に挟まれる事となる。今さら敵対していた国と友好関係を築く事は不可能である以上セレスタイアの話を受け入れざるを得なかったのだ。
次に狙ったのはセレスタイアの北部に位置する三国、カスティーノ王国、ローアン共和国、ゼレン王国だった。カスティーノ王国とローアン共和国は不毛な土地である南部以外を全てとられ、国家運営が不可能になりつつあった。セレスタイアの申し出は救世主の如き提案だっただろう。ゼレン王国も中央ファンタジア帝国に対抗するためにこれを受け入れ、大戦終結より4年後にセレスタイア連合が誕生した。
5つの国の連合国家であるがその実敗残国の集まりであり、まともな国力を持つ国はセレスタイア王国のみだった。それでも、漸く中小国程度の国力までは回復出来、復興と合わせて国力は回復していくと予想されていた。
しかし、それを快く思わないのが帝国を始めとする戦勝国である。彼らは自国の隣に強大な国家が誕生することを警戒した。これが普通の国ならまだしもその構成国は全て大戦で敗北した国家である。国力を付ければ報復戦争を挑んでくる可能性は十分に高かったのだ。
更に、大戦では反帝国陣営に国内の軍隊の通行権を渡したが終始中立を維持したファイアレント共和国はこのセレスタイア連合に対して真っ向から反発した。セレスタイア王国を除けば周辺国では一番の国力を持っていた彼らは大頭してきた連合を受け入れられなかったのだ。
結果、連合結成の翌年にはセレスタイア連合とファイアレント共和国との間で戦争が発生した。ファイアレント共和国は南方のスレンバニア王国を味方につけ、圧倒的な国力差で押しつぶそうと画策した。スレンバニアは大戦時には親帝国陣営としてセレスタイア王国と真っ向から戦い、勝利をもぎ取っている。敗北したセレスタイア連合では太刀打ちが難しい相手であった。
しかし、この戦いは予想外にも連合の勝利で終結した。急速な領土拡大で軍隊を各地に派遣していたスレンバニアは大戦時に比べて戦える兵士の数が減り、質も低下していた。そこへ奇襲攻撃を成功させたことでスレンバニアは連合と単独講和をする羽目になった。
一方のファイアレント共和国も連合の領土に侵攻したが大戦で培われた兵士の差は大きく、無警戒に進軍するファイアレント共和国軍をいともたやすく粉砕したのである。更に言えばこの戦いでファイアレント共和国は自国軍の半数を失う大損害を受けており、経戦能力を著しく失いつつあったのだ。
だが、この勝利を受けてセレスタイア連合はファイアレント共和国に講和を打診した。連合はあくまで反帝国連合として国家をまとめ上げる事であり、そうではない国との戦いは避けたかったのだ。そこでセレスタイア王国は連合内での発言力と自国と同等にすると交渉した結果、漸く戦争は終結し、ファイアレント共和国はセレスタイア連合に合流することとなった。
ファイアレント共和国の加入は更に東部の敗戦国に大きな衝撃を与えた。彼らは小国且つ敗戦国であるがゆえに多額の賠償金を支払らわされており、国家運営が難しくなりつつあったのだ。彼らは次々と連合に加盟し、中央ファンタジア帝国とスレンバニア王国の間に乱立していた諸国は全てセレスタイア連合に加盟するに至ったのである。
取り込めるだけ取り込んだ連合は各国の同一化を目指した。そこで連合政府を樹立し、各国の政府関係者を集めたのである。軍隊は各国から取り上げ連合軍として再編し、インフラ整備は国境を関係なく行われた。
これらの動きは各国の独立性を大きく損なうものであったが敗戦国としてどうしようもなくなっていた彼らには気にも留めていなかった。彼らの最終的な目標は報復戦争乃至相手にそれだけの危機感を与える程の国力を得る事にあったのだ。多少の独立性など不必要だと考えてしまうのは仕方のない事だろう。
結果的にセレスタイア連合は大陸南部の明確な反帝国国家として君臨することになった。彼の国はいずれ来るかもしれない次の大戦に備え、国力を高めており、中央ファンタジア帝国としても無視できない勢力へと成長を遂げているのだった。




