烈火VS黒霧
鳥の鳴き声が響く森の静けさの中で、浩一郎はぽつりと呟いた。
浩一郎「……美香たちは、大丈夫かな」
ことは「隊長も一緒ですし、大丈夫だと思いますよ」
隣で、ことはが落ち着いた声で応える。
だがその時――
「たすけてぇぇぇぇえええ!」
森の奥から、悲鳴と共に少年少女が駆けてきた。顔は涙と血でぐしゃぐしゃで、明らかに何かに追われていた。
ことはは反射的に駆け寄る。
ことは「どうしたの!?落ち着いて――」
バシュッ!
風を切る音とともに、鋭い矢が少女の背中を貫いた。
少女「ひ……!」
少女の目が見開かれ、そのまま地面に崩れ落ちた。赤い血が地面に広がっていく。少年の絶叫が森に響き渡る。
ことは「だ、誰だ……! こんな……!」
ことはが怒りに震える。
するとすぐに夜人が冷静に声を上げた。
夜人「副隊長……。崖の上に、第四部隊の――東雲幻矢がいます」
崖の上、黒い装束をまとい、冷ややかな笑みを浮かべた男が、次の矢を番えていた。
ことは「――東雲!!」
怒号が森を割った。
⸻
烈火と黒霧、2人の距離が縮まる。
わずかに呼吸の音が交錯し、次の瞬間――殴り合いが始まった!
ドンッ! ドガッ!
烈火「これじゃ埒があかねぇな……! 力、解放すっか!」
黒霧「いいね、そろそろ俺も“本気”を出してやるよ。まぁ、降参してくれるなら楽だけどな?」
烈火「ふざけんな……! お前なんかに、絶対負けるもんか!」
ゴオオオッ!
烈火の全身が、紅蓮の炎に包まれた。
情熱――心の火が、魔丸の効果と共鳴し、炎の化身へと変貌する。
烈火「燃えカスになれよッ!!」
「烈式・炎神の拳!!」
炎が拳に集中し、黒霧の顔面へと一直線に突き刺さる!
ゴッ――!!
……が。
黒霧は、まるで何もなかったかのように立っていた。
火が、まるで吸い込まれるようにその身体に取り込まれていく。
黒霧「悪くない火だ。けど……弱すぎるな」
「黒霧式・溶岩流・高炎拳」
次の瞬間、拳がマグマと化し、猛スピードで烈火に迫る!
烈火「ちっ……!」
ギリギリで回避するも、頬をかすり、血が噴き出す。
烈火(マズい……このままじゃ削られる……)
黒霧「俺の能力は“マグマ”。すべてを溶かし、燃やし尽くす。お前の火は、燃料にすらならねぇんだよ」
烈火は抜刀する。刀身に炎を纏わせ、全力を込める。
烈火「烈式・炎刀閃斬!!」
黒霧「黒霧式・溶岩流バズーカ!」
二人の必殺技がぶつかる!
――爆発。
轟音と共に地面がえぐれ、木々がなぎ倒される。烈火の左腕が吹き飛び、焦げた臭いが漂う。
烈火「ッぐあああ!!」
黒霧「終わりにしよう。……死ね」
「黒霧式・溶岩流バズーカキャノン!!」
灼熱の溶岩弾が、烈火の顔面に向かって放たれる――!
黒霧「……あばよ」
――その時。
「ブラックホール」
空間がねじれ、弾が虚空に吸い込まれた。
黒霧「――何……!?」
「ブラック斬」
次の瞬間、黒霧の胴体が斜めに裂け、吹き飛んだ。
煙の中から現れたのは――
「……めんどくせー」