5話 フュリスは方向音痴!? 漁港の少女との出会い
読者の皆様、作者の大森林聡史です。
この度は、この小説を気にかけていただきありがとうございます。
よろしければ、内容もお読みいただけると幸いです。
宜しくお願い致します。
【クエスト オブ サンハルト 5話】
サンハルトを旅立ち早10日⋯ドラゴンズタワーは一向に見えない。
方向が真逆なため当然だが。
(おかしいわねぇ⋯方角はこっちであってるはずなのに⋯)
フュリスは疑うということを知らず、自分の方向感覚を1ミリも疑っていない。
やがて海にたどり着いた。
(お、泳いで行けって事!?)
フュリスは、迷っているとすら思っていなかった。
そろそろ気づいて欲しい。
海岸沿いに村が見えたため、ひとまずフュリスはその村に立ち寄ることにした。
その村は小さな漁村で、どことなく村民の雰囲気は重かった。
「おや⋯? あんた旅人かね?」
1人の村民がフュリスに話しかけた。
白髪、白髭の年老いた漁師で、背はフュリスよりも低く、手はゴツゴツとしていて浅黒い肌をしていた。
「はい。ドラゴンズタワーという塔を探して旅しています」
「はて? この付近に塔などないが⋯」
「え? そんなはずは⋯」
フュリスの顔には、?マークが浮かんでいた。
「それよりもあんた女性だね、早く出ていった方が良い」
「どうしてですか?」
「この村には最近、若い女を生け贄に出せと怪物が襲ってくるのだ。生け贄に差し出された女はみな戻ってこん。そして、もうここの若い女は1人だけじゃ。あんたも早く出ていかないと、生け贄にされてしまうぞ」
話を聞いた途端、フュリスの表情がみるみるうちに険しくなった。
「だったら、尚更出ていくわけには行きません! その怪物とやら私が退治して見せます!」
「ほ、本当かね!? 儂らとしてはありがたいが⋯大丈夫かね?」
「ええ! 任せてください! そんな怪物を野放しにしておけませんわ!」
「おお、ではひとまず村長に会って下され」
「はい」
フュリスは、漁師に連れられて村長に会った。
「フュリス殿⋯でしたか? 話を聞くと怪物を退治して下さるそうじゃが⋯?」
「はい! お任せ下さい! 若い娘を生け贄にするなんて許せません!」
「好意はありがたいのてすが、大丈夫ですかな?」
「はい。私はこう見えて、武道家と聖女の末裔。邪なる輩などに遅れは取りません」
「それは頼もしい。それではあなたにお願いします。明日の夜に生け贄を祭壇に差し出すようになっておりますので、今日はこの村に宿をとります故、また明日、ここに来ていただけますか?」
「はい! 分かりました」
フュリスは、この漁村の宿に向かった。
その夜、扉をノックする音が聞こえた。
「はい⋯?」
フュリスが扉を開けると、少女が立っていた。
少女は顔立ちが幼く、10歳くらいに見える。
身長は小さく、ピンク色の髪が肩まで伸びていた。
簡素な布の生地の黄色いワンピースを着ていた。
「あ、あなたが、わたしの代わりにいけにえになってくれた人ですか!?」
「そうだけど⋯あなたは?」
「わたしはサラ。こんど、いけにえにえらばれたものです」
(こんな幼い子を生け贄にするなんて⋯許せない!)
フュリスは、怒りが沸いた。
「フュリスさん⋯でしたっけ? 怪物をやっつけるなんてやめて下さい! あなたにもしもの事があったら、わたし⋯わたし⋯」
サラの声は震えていて、目元に涙が浮かんでいる。
「私を心配して来てくれたのね⋯サラ⋯心配してくれてありがとう。私はこう見えても強いから大丈夫よ」
フュリスは、サラが安心するように優しく声をかけた。
「ほんと?」
「ほんとよ、約束するわ。私の帰りを待っててね」
また、フュリスはサラに微笑んでいる。
「わかった…お姉ちゃんの帰りをまってる⋯」
サラは、ウルウルの瞳で真っ直ぐ、フュリスを見つめた。
「ええ。ありがとう。さ、今日はもう遅いから帰りましょう」
「うん⋯」
フュリスはサラを家まで送った。
そして、翌日の夜になった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
長い文章に、お付き合いいただき、心より感謝申し上げます。
サラは、ひらがな表記が多くなりますがご了承下さい。