19話 ケンジロウのサバイバル術
読者の皆様、作者の大森林聡史です。
この度は、この小説を気にかけていただきありがとうございます。
よろしければ、内容もお読みいただけると幸いです。
宜しくお願い致します。
【クエスト オブ サンハルト 19話】
「助けてくれてありがとうございます。改めまして私はフュリスです。あなたは⋯ケンジロウよね?」
「そうだ」
「どうしてここに?」
「アラモス様のお導きさ」
「アラモス様の?」
「ああ、ここにあんたが囚われてるって聞いてね」
「そうだったのね、ありがとう」
「礼は聞き飽きたよ。それにエビウスって奴を見てたら、血が騒ぐのさ」
「血が騒ぐ⋯」
「そう。こいつだけは許しちゃおけねぇってね」
「ケンジロウ⋯あなたは⋯もしや⋯」
「おっと、とりあえずここを脱出しよう」
「そうね。ここはどこ?」
「とある孤島だ」
ケンジロウは、地図を取り出して場所を示した。
「こ、こんなとこに⋯!?」
「知らなかったのかい?」
「私、エビウスの城に乗り込んで、逆に捕まったの。それからの記憶がおぼろげで⋯」
「なるほど、まぁ、助かったから良いじゃねぇか。ここを出ることを考えようぜ」
「ええ」
そう言って、ケンジロウは浜辺の波打ち際に向かった。
「ケンジロウ、待って! まさか泳ぐ気?」
「そうだよ。そうやって来たし」
「う、嘘!?」
フュリスは、目を丸くして驚いた。
ここは、外海に面した孤島で、潮の流れが早く波も高い。
通常人間には、とうてい泳いでたどり着ける場所では無かった。
超野生児のケンジロウだから出来る事だった。
「ま、待って⋯わ、私じゃ陸に着く前に溺れちゃうわ」
フュリスも泳ぐ事は出来るが、外海を泳いで渡るのはとうてい無理だった。
「え? そうなのか⋯?」
「と、とりあえず船が無いか探してみない?」
「そうだな」
そう言って、ケンジロウは探しに向かった。
「きゃっ!」
「どうした!?」
「な、何でもないわ⋯」
(戦闘で気づかなかったけど、この人すごい格好してる⋯)
ケンジロウは、上半身裸に腰蓑1枚、草履に刀という原始人のような格好だった。
色黒で髪が長く、後ろで縛ってあった。
顔は、少し髭が生えていて、眼光は今は穏やかだった。
身体は、引き締まった筋肉質の体付きをしている。
が、筋肉ムキムキというより、細マッチョといった感じだった。
「何してんの? 置いてくよ」
「あっ! 待って!」
ケンジロウの足元は、砂浜から磯になったが、ケンジロウは平地を歩くかのようにひょいひょい進んでいく。
フュリスは、すぐについて行けなくなった。
「ケ、ケンジロウ! ま、待って! つ、着いてけない⋯」
「ん? じゃ、砂浜で待ってなよ」
「う、うん⋯そうする⋯」
フュリスは、悪いと思いながらも、ケンジロウのスピードに着いていくのも、無理だと思い待つことにした。
フュリスは、砂浜で待っていると、数分でケンジロウは島の周囲を回って戻ってきた。
「船は無かったよ」
「そう⋯」
「じゃあ、イカダを作るか」
「えっ!?」
そういうなり、ケンジロウは辺りの木を見た。
「良い木だ」
そして、ツルを見た。
「お、これこれ。これは丈夫なツルだ」
フュリスは、ポカーンとその後ろ姿を見つめていた。
「あ、斧がない⋯お!」
「ちょっと借りるぜ」
ケンジロウは、失神している魔物達から斧を拾うと、木を切り始めた。
「わ、私も手伝うわ」
フュリスは、慌てて駆け寄った。
「いいよ、慣れないだろうし、危ねーよ」
「ううん、私に考えがあるの」
フュリスは、風魔法を手のひらに集中し高速回転させた。
いわば魔法のチェーンソーだ。
「おお! これは凄い!」
ケンジロウは、思わず声を上げた。
フュリスは、木の幹に手を当てるとおがくずが吹き出し、幹に亀裂が入っていく⋯中程まで切った。
「そこで一旦止めてくれ」
「うん」
「そっち側に倒すから避けてくれ」
ケンジロウは、木を蹴った。
切れ目から避け、木が倒れた。
後は適度な長さに切り、ツルで縛り上げた。
ケンジロウとフュリスは、砂浜からイカダを流し乗り込んだ。
数日後、陸地に上陸し近くの漁村に入った。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
長い文章に、お付き合いいただき、心より感謝申し上げます。