18話 三度対決! マフィ!
読者の皆様、作者の大森林聡史です。
この度は、この小説を気にかけていただきありがとうございます。
よろしければ、内容もお読みいただけると幸いです。
宜しくお願い致します。
【クエスト オブ サンハルト 18話】
「フュリス、こいつは?」
「マフィという人よ。高位魔法と格闘技を使う強敵よ! 気を付けて!」
「分かった!」
マフィは、ケンジロウとフュリスから離れた距離に立っている。
そして、すでに詠唱を終えていた。
「フレイムカノン!」
「!!」
前にも見たことのある、高圧火球がケンジロウとフュリス目掛けてが飛んでくる。
ケンジロウとフュリスは、左右に飛んで身を避けた。
「相変わらず素早いね、そっちの坊やも早いじゃないか」
「そうかい?」
ケンジロウは、意に返さず魔法の詠唱をしていた。
「フレイムカノン!」
「なっ!?」
今度は、ケンジロウの手のひらから高圧火球が飛び出し、マフィ目掛けて飛んでいく。
マフィは、驚き慌てて身を避けた。
「に、人間風情がフレイムカノンを⋯」
「あんたの専売特許だとでも思ってたのかい?」
ケンジロウは、ニヤッと笑った。
「隙あり!」
フュリスがマフィに接近し、鋭い聖竜の爪が迫る。
「くっ⋯!」
マフィは、虚をつかれたがすんでのところで避けた。
「当たらないね⋯」
「そうかしら?」
マフィの頬に切り傷がつき、赤い血が滴った。
マフィは、自分の頬の手を当てて、手に血が着いた事を見た。
(なっ⋯! 虚を突かれたとはいえ、私に傷を⋯!!)
「おのれ! フュリス!!」
マフィは、フュリスを睨みつけた。
その目は怒りに燃えている。
「そっちにばかり気を取られてて良いのかい?」
「なっ⋯!?」
ケンジロウが流れるような動きで、いつの間にかマフィに接近していて、沙羅曼蛇で払った。
キィン⋯!!
金属がぶつかり衝撃音が鳴った。
「おや⋯?」
ケンジロウは、感触に違和感を感じ目をやると、マフィの黒いローブが千切れ、一瞬輝きを放った。
「今のはダイヤモンドだな。フュリス! こいつはダイヤモンドを身にまとってるぞ」
「分かったわ!」
(あ、あの一太刀で見抜いたというのか!?)
マフィは、驚愕した。
ケンジロウは魔法の詠唱、フュリスもケンジロウの話を聞き魔法の詠唱を始めた。
(くっ! 逃亡したくてもここは孤島⋯逃げられない! ならば!!)
「フレイムカノン!」
「トルネード!」
「うわあああっ!!」
マフィが考えていると、足元から竜巻が巻き起こり、そこへフレイムカノンの火炎が交わり、凄まじい炎の竜巻となって吹き荒れた。
「やったか⋯!?」
マフィは、黒いローブが焼けているが生き残っていた。
「さすがね⋯」
フュリスは、少し呆れた表情で呟いた。
「おのれ⋯!」
マフィは、怒りに燃え凄まじい形相で2人を睨みつけた。
「⋯!? おかしい⋯? ダイヤモンドをまとってない」
「確かにそうね⋯」
マフィは、ローブが焼けて黒い肌が出ているが、その身にダイヤモンドは見当たらなかった。
「今度はこっちの番だ! ストーム!」
「何っ!?」
「えっ!?」
マフィは、砂浜の砂を巻き上げて砂嵐を起こした。
(良し⋯! 我が最大の魔法を食らわせてやる!!)
マフィは、ありったけの魔力を込めて魔法の詠唱を始めた。
「目眩ましか!?」
「ケンジロウ気をつけて⋯⋯!? 急いで私の後ろに下がって!」
「え⋯? わ、分かった」
ケンジロウは、驚いたがフュリスの表情を見てすぐに従った。
(凄い⋯! 物凄い魔力を感じるわ⋯!)
フュリスは、マフィの魔力を感じ自身も魔法の詠唱を始めた。
やがて、砂嵐が静まりマフィの姿が肉眼でも見えた。
マフィは、全身に漆黒のオーラをまとっていた。
その姿は、禍々しく悪魔のようだった。
「やべぇ⋯!!」
「大丈夫よ⋯! 私が堪えてみせる!!」
「⋯分かった」
(ならば、俺は反撃の準備だ)
マフィはニッと、笑みを浮かべた。
「ダークネスレイ!!」
マフィは、青黒い極太のビームを撃った。
空気が振動し、ねじれ、バチバチ⋯と激しい音が鳴りフュリスに迫る。
フュリスは、白い光のオーラに包まれていた。
あの聖魔法エクスカリバーを唱えた時のように。
「ホーリーウォール!」
光り輝く真っ白な壁がフュリスの目の前に現れ、ダークネスレイとぶつかり合う。
「な、何っ!? ダ、タークネスレイを防ぐだと!?」
「くうぅぅぅっ!!」
激しい激突音を上げ、地面が揺れる。
ケンジロウは、1度腰の鞘に沙羅曼蛇を収め、抜刀の構えを取った。
闇と聖、2つの魔法がぶつかり合い、稲妻にも似た激しい音をたて、衝撃が空気を伝わる。
そんな中、ケンジロウはただ一人、波一つない海面のように静かに構えをとっている。
激しい爆発音と共に両方の魔法が相殺され消え、濃い煙に包まれた。
ケンジロウは、目を開き煙に飛び込んだ。
そして、突如マフィの目の前に現れた。
「ま、待て⋯!」
「問答無用⋯!!」
ケンジロウは、沙羅曼蛇を抜刀した。
「た、頼む⋯た、助け⋯⋯!? な、なぜ⋯!? 私の身体が見える⋯!? 身体が、そ、空に登る⋯」
次の瞬間、マフィは頭に砂の感触を感じた。
「わ、私の身体⋯! く、首が無い⋯!!」
マフィの眼に、自分の身体の首から上が無く、首から鮮血が吹き出している光景が飛び込んできた。
「とどめだ」
「や、やめ⋯」
次にマフィの眼に飛び込んできたのは、銀色に輝く、沙羅曼蛇の切っ先で徐々に大きくなり⋯その後は何も分からなかった。
マフィの眉間を沙羅曼蛇が貫いたのだった。
「むんっ!」
ケンジロウは、マフィの頭から沙羅曼蛇を引き抜くと、マフィの身体を滅多切りにし粉々に切り刻んだ。
ボトボトとマフィの肉体の残骸が落ちた。
フュリスは、その姿に呆気にとられた。
「ケンジロウ⋯そこまでしなくても⋯」
「いや⋯こいつは恐ろしい魔物だ。確実に止めを刺しておく」
「そ、そうね⋯」
フュリスは、それ以上何も言えなかった。
「最も⋯人間だったようだがね」
「え⋯?」
「この感触は人だよ」
「そ、そう⋯」
フュリスは、ケンジロウの冷たい視線とあっけらかんと言う姿に戦慄した。
ケンジロウは、ヒュッと刀を振り、刀に着いた返り血を飛ばし、その後布で血を拭い鞘に収めた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
長い文章に、お付き合いいただき、心より感謝申し上げます。