16話 囚われた聖なる武道家⋯救世主は野生児!?
読者の皆様、作者の大森林聡史です。
この度は、この小説を気にかけていただきありがとうございます。
よろしければ、内容もお読みいただけると幸いです。
宜しくお願い致します。
【クエスト オブ サンハルト 16話】
ところ変わって、ここはフュリスの牢獄。
(捕まっていてはどうもできないわ⋯かと言ってこの鎖ほどけないし⋯どうしたら良いの⋯)
牢獄に入れられ、フュリスもさすがに気落ちを隠せなかった。
「フュリス、いい格好だね」
「マフィ!」
フュリスは、キッと睨みつけた。
「へぇ〜、まだそんな気概があるとはね⋯さすがは聖なる女武道家と言ったところか」
マフィは、言葉とは裏腹に見下していた。
「私をどうする気!? 殺すのなら、早く殺しなさいよ!」
「そう、憤りさんな⋯あんたの処遇はこの方が決めて下さるさ」
「あ、あなたは誰!?」
マフィの横に黒衣のローブを纏った男が現れた。
長身で、フードの奥に赤い目が光った。
「私か? 私が邪竜王エビウスだ」
「あ、あなたがエビウス⋯!?」
邪竜王エビウスと名乗っているが、どう見ても竜には見えない。
どちらかと言えば魔道士に見える。
エビウスは、赤い瞳で真っ直ぐにフュリスを見つめた。
(な、何⋯? この威圧感⋯心臓を鷲掴みにされているよう⋯)
エビウスからは、圧倒的な強者感が漂い、その瞳は冷ややかだった。
(ふ、震えてる⋯? 私が⋯)
フュリスは全身が震え、表情が強張っている。
「私は人間の女は嫌いでは無い⋯特にそなたのような美しい女はな⋯どうだ? 私の女にならぬか?」
「な、何を⋯!?」
フュリスは、赤面し戸惑いを隠せなかった。
「嫌か?」
「⋯⋯」
フュリスは、次の言葉がでなかった。
ただ、自然と瞳が潤み今にも涙がこぼれ落ちそうだった。
「フフフ⋯まぁよい⋯私は無理矢理ものにするのは好かぬのでな」
フュリスは、呆然とした。
「さて⋯話は変わるが、お前に役に立ってもらうとしよう⋯」
「な、何をする気⋯!?」
「ムゥン!」
「きゃっ!」
フュリスの目の前がフラッシュした。
(意識が⋯薄れ⋯る⋯)
フュリスは、意識を失い倒れた。
「全世界に次ぐ!」
突然、全世界におぞましい声が響いた。
「そなた達の希望、聖なる女武道家フュリスは我が手に落ちた!」
「な、なんじゃと!?」
「まさか⋯フュリス殿が⋯」
サンハルト王、その他の人々が愕然とした。
横たわり、意識を失ったフュリスの姿が大空に映し出された。
その後ろにマフィが立ち、剣を喉元に突き立てていた。
「ああっ!!」
世界中の人々が嘆いた。
「そなた達の希望は砕かれた。諦め我が軍門に下るが良い。人間どもよ⋯」
間もなく空のビジョンが消えた。
「もうダメだ⋯! おしまいだ!!」
世界中の人々が悲観に暮れる中、ケンジロウは⋯
「何だ!? 今のは⋯俺の血が騒ぐ⋯こうしてはいられない気がする⋯!!」
「ケンジロウよ⋯」
「誰だ?」
「私は聖竜アラモス」
「アラモス? あんたがアラモスか?」
「そうだ」
「それで、俺に何のようだ?」
「先程のビジョンは見たであろう?」
「ああ⋯初めて見る人なのに、初めてな気がしなかった」
「そうか⋯そなたの出生は?」
「詳しいことは分からねぇ⋯だが、アラモス様の導きは聞けと、じっちゃんから聞いている」
「そうか⋯では先程の女性を助けに向かって欲しい」
「おお! 人助けは望むところだ! どこに行けば良い?」
「ここだ」
ケンジロウの目の前に、地図が現れフュリスの牢獄の場所が記された。
「分かった!」
「頼むぞ」
ケンジロウを刀を背負うと、牢獄の方角に向かって一直線に無人島を駆け抜け、海に飛び込んだ。
ケンジロウは、魚よりも早く泳ぎ、腹が減れば魚を捕らえて食べ、夜には小島に上陸して眠り、朝早く海に飛び込んだ。
これを数日繰り返し、あっという間にフュリスの牢獄についた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
長い文章に、お付き合いいただき、心より感謝申し上げます。