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世の中、真面目に頑張るひとが報われることもある。  作者: イチイ アキラ


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18/21

18 拝啓、北の国より


 北が何故大事か。

 それは二百年ほど昔になる。


 北のその山脈を越えて侵略してきた国がある。

 正気かと誰もが疑った戦略だが――だが、越えられた。


 それはすぐこちら側からの猛反撃でそれを防ぐことができたが。

 皮肉だが、その国はこの国を侵略中に他の国に攻め落とされた。

 そしてこちらに残ったものは降伏し、今ではこの国の民となっている。祖国がもう亡ければ、受け入れてくれた――暮らしやすいこの国を大事にしよう、と。


 しかし――時に逆に考えるのだ。


 もしまたそんな正気を逸した国が現れたら。

 もしまたそんなことが起きたら――逆もまた、できるのではないか、と。


 そのため、北の大切さを知るものたちは――……。



「といっても、自殺行為だべ」

「……ですね」

 トガロックス山脈の麓。

 万年雪のその雄大な天然の防衛壁。


 見ておくべきと叔父らに言われた意味がわかった。


 こちらからもこれを越えて侵略?

「無理ですよねぇ」

「んだぁ。そんなの命令されたら、謀叛おこすべな」

「あ、僕もそっちにのります」

 現場を知らないものほど無理をいう。

 こうして現場を見ることできて、よかった。

 経験を積めて良かった。

 親達の気持ちを受け止められただろうか。

 かつて父も、妹を心配したという名目で、何度か足を運んだと聞いた。

 自分の初めての訪問が、失敗の罰と歴史に記録されはしないが、身内にはそう覚えてられるのが恥ずかしい。

 でも。

 それが己が罰。


 そして思い上がりを砕かれた。

 自分なんてまだまだだ。


 もしも将来、戦争になるとしても――自分はこれを越えさせるような命令は出さない。

 自国の民こそ大事。

 あの子爵令嬢が耐えてくれたのは、そういうことだ。民たちも、また。


 越えて――侵略なんて。



「勘違いしたお偉方ほど、ぬくぬくした部屋んなかで作戦の指示さするべ」

「ぬくぬく」

「いやさ、北だけじゃなかんべ。これは、他の辺境伯さたつも皆、同じだべ」

 北も南も、西や東も。どちらも等しく大事な土地――防壁。

 北の大地の伯爵は、本人自覚無しの戦術家の頂点だった。

 これもまた、北の血統。

 この血と、我が流れを混ぜた――ハイブリッド。


 それがあの従姉妹姫か。


 それをひしひしと感じたこの視察という名の、クラーリィの罰。

 しかし、よくわかった。


 北の人々は、王都の我らがよほどの馬鹿をやらかさない限りは、まだ……まだまだ、仲良くしてくださると……。





 しかしいつ、越えて来るものはいないともかぎらない。

 歴史では成功してしまっているのだから。

 そのための備えは、決して軽んじるわけにはいかない。


 北は――国の大事な防壁。


 ……と言うことを、裸の付き合いで。

 トーカロ地方。

 ひっそりと温泉郷でもあった。

 どうせなら一っ風呂浴びてくるべと伯爵に案内されたのは、自然を観ながら入れる露天風呂。

 もちろん、王妹殿下もたまに使われるから設備はばっちり。高級仕様。

「僕まだ帰りたくないぃ……」

 温泉気持ちいい。

 食い物も美味い。

 叔母が療養先にしたのも然もありなん。

 従姉妹につけられたという名目の教師たちが、こちらに移住したのは。もしや……。

「温泉、最の高……ここに住みたい……」




 その頃、王宮にて。

 王太子殿下の執務室にて。


 留守番中の側近たちが何故かイラッとした。不思議。



労働のあとに温泉ならねw

(とある将軍のアルプス越えを参考に。気になる方はご自分で検索してくださいまし。

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