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第三王女、クラリス

 国王陛下達、王室の面々がホールへと姿を現し、ホールにいる全員が注目する。


 さて……例の発表は、この冒頭で行うのか、それとも晩餐会が盛り上がりを見せる中盤で行うのか……。

 そんなことを考えながら、国王陛下を見守っていると。


「皆の者、よく集まってくれた。今日は皆の普段の王国への忠誠とその献身を労うため、ささやかながらこのような席を設けた。存分に楽しんでくれ。そして……」


 国王陛下が後ろへと目配せをすると、第一王子、第二王子、そして第三王女のクラリス王女が、横一列に並んで一歩前に出た。


「この度、第一王子のニコラスについてだが、王太子としての権限を白紙に戻し、余の次を担う者について再考することにした。加えて、これまで慣例であった男子のみ王位継承権を与えるといったものを見直し、クラリスに王位継承権を与えるものとする」

「「「「「っ!?」」」」」


 国王陛下の宣言に、貴族達が一斉に息を飲んだ。

 とはいえ、そんな反応を示したのは、伯爵以下の貴族達で、残りの侯爵以上の高位貴族はただ無言で注視していた。


「今後は、第三王女が王立学院を卒業する五年後(・・・)までの間に、三人を見極めて誰を王太子とするか決定するものとする。皆の者、よく覚えておくように」


 そう言うと、国王陛下はホールの貴族達……とりわけ、第一王子と第二王子の派閥に属していた者達を一瞥(いちべつ)した。

 これは、今後の王位継承争いにおける牽制の意味もあるのだろう。


「ギル……国王陛下は、あなたとの約束をお守りになられましたね……」

「はい。そこは、さすがは国王陛下と言わざるを得ません」


 この王国にとって何を優先すべきか、どう動かしていくべきかを分かっている国王陛下だからこそ、僕はあの提案をしたんだ。

 それに、すんなりと受け入れたということは、国王陛下自身も第一王子に不安があったのと、クラリス王女のほうが優秀であると認めていることの証左だ。


 いずれにせよ、僕としては聖女であるシアと一緒にラスボスを倒して、それからは二人仲良く幸せに暮らしていけるのであれば、それ以上を望むつもりはない。


「では皆の者、大いに楽しんでくれ」


 その一言を残し、国王陛下は一旦(・・)この場から去った。

 といっても、すぐに戻ってくるけど。


「さあ! シア、僕達も目一杯楽しみましょう!」

「はい!」


 僕はシアの手を取り、早速料理があるテーブルへと向かう。


 そして。


「ふああああ……美味しいです!」

「それはよかった。では、こちらも」

「はむ……ん……このお魚の料理も美味しい!」


 とまあ、僕はシアの餌付けに勤しんでいた。

 あはは、シアが美味しそうに食べるから、ついついこうやって食べさせてしまうよね。


 そうやって、僕が顔を綻ばせるシアを眺めながら頬を緩めていると。


「小公爵様、少しよろしいでしょうか?」


 後ろから声をかけられ、僕は少し面倒だと思いながら振り返る。


「これはクラリス殿下……」

「ウフフ……ごきげんよう」


 クラリス王女が、カーテシーをした……って。


「クラリス殿下、王国の臣下である僕に王族のあなたがこのようなことをしてはいけません」


 そう言って、僕は慌てて彼女のカーテシーを止める。

 さすがに一応は目上に当たるクラリス王女に、下の者が行うカーテシーをさせるわけにはいかない。


「そうでしょうか。小公爵様のほうが年上でもありますし、当然の礼儀かと思いますが……」

「いいえ、年齢は関係ありません」

「ウフフ、小公爵様がそうおっしゃるなら、次からは気をつけます」


 そう言うと、カーテシーをやめてクラリス王女はニコリ、と微笑んだ。

 だけど……うん、やはり第一王子や第二王子とはわけが違う。


 王女であるにもかかわらずあえてへりくだる姿勢を見せ、僕を立てると共に周囲の貴族に対しても良い印象を与えるようにしたか。なかなか計算高い。


「王国の星、クラリス殿下にご挨拶申し上げます」


 僕の隣に並び、優雅にカーテシーをして挨拶をするシア。

 その姿は、先程のクラリス殿下とは比べものにならないほど、その所作が美しい。


「ギルバート閣下の婚約者(・・・)で、プレイステッド侯爵家の長女、フェリシアと申します」


 僕の婚約者であることを強調し、シアは自己紹介をする。


「ウフフ……フェリシア様、よろしくお願いしますね。先程も小公爵様とフェリシア様のお二人を眺めておりましたが、本当に仲がよろしいですね」

「「ありがとうございます」」


 いつもならもっとシアを褒めそやしているところだけど、今回は(・・・)シア共々短く礼を述べるに留めた。

 ……正直、まだクラリス王女の腹の内が見えないからね。


「二人共おやめください。それに、お礼を言うのはむしろ私のほうですよ?」

「そうですか?」


 クスクスと笑うクラリス王女に対し、僕はあえてとぼけてみせる。

 おそらくは王位継承権についてのことだろうけど、だからといって、別に僕はクラリス王女を推しているわけではないからね。


「ウフフ……本当に、小公爵様のような御方が私を支えてくださると嬉しいのですが……」


 クラリス王女は、上目遣いでそんなことを告げた。

 驚いた。まさかここまでストレートに勧誘してくるなんて。


「申し訳ありません。僕はまだ、誰かにつく(・・・・・)つもりはありませんので」

「そうですか……」


 僕が明確に断りを入れると、クラリス王女が少し物憂げな表情を見せた。

 まあ、まだ王位継承権を与えられたばかりで、後ろ盾となる貴族や派閥なんてあろうはずもない。


 それに、有力貴族のほとんどが第一王子か第二王子、そのどちらかについているからね。

 残っているのは、侯爵が一人、辺境伯が一人と伯爵家がいくつか……それと、僕だけだ。


「……ですが、望み薄、というわけではなさそうです。これからも色々と(・・・)あるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします」


 そう言い残し、クラリス王女は他の貴族のところへと行った。

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