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晩餐会の会場へ

「あはは。今日はあの王子達、どんな表情をしているでしょうか」


 王宮へと向かう馬車の中、僕はシアにそんなことを話しかけた。

 元々、今日の晩餐会は、例の第一王子が僕達を呼び出した手紙と一緒に、屋敷に招待状が届けられたもの。


 本当であれば今日の晩餐会は臣下の貴族達を労うだけのものだったのに、二人の王子……特に第一王子がやらかしたせいで、第一王子の王太子としての地位を白紙に戻したこと、クラリス王女にも王位継承権が与えられたことが正式発表される場になってしまった。


 当然、耳聡い貴族達にはこの情報は既に入っており、晩餐会では派閥の再構築のために、貴族達は活発な動きを見せるだろう。


 僕? 僕はそんなものに興味はないので、シアと目一杯ダンスを楽しむ所存。

 何より、シアはブルックスバンク家に来てからずっと家庭教師にダンスを学んでおり、今ではかなりのダンスの腕前になっている。


 というか、やはり主人公でヒロインだからなのか、何でもすぐに上達してしまうのだ。


「ふふ……ニコラス殿下やショーン殿下のことよりも、私はあなたと過ごす晩餐会のほうが、楽しみで仕方ありません」

「あはは、ならよかった」


 もちろん、今日の晩餐会にはプレイステッド侯爵や妹のソフィアも出席しているだろうけど、トラウマを克服し、聖女の力に目覚めたシアからすれば路傍の石以下だろう。

 だから、あのどこか怯えていた頃とは違い、彼女がこうやって穏やかな表情を見せることができるようになったことが、僕は心から嬉しい。


「シア……先日の狩猟大会とは違い、今日は正式にあなたのお披露目の場でもあります。なので、あなたの素晴らしさを存分に見せつけ……」


 そこまで言って、僕は思い留まる。

 いや、そのせいでシアに懸想する馬鹿が現れたらどうしよう。


 もちろんその時は全力で排除するけれど、ざまぁされる未来しかなかった僕でさえ、シアは受け入れてくれたんだ。何が起こっても不思議じゃない。


 すると。


「ギル? ひょっとして、失礼なことを考えておられませんか?」


 シアが、ジト目で若干不機嫌そうに見つめていた。


「い、いえ! ただ、よからぬ子息達がシアに懸想してしまい、万が一のことがあったらと……「それです!」……シ、シア!?」


 身を乗り出し、シアは僕の頬を両手で挟む。

 あ……シアの顔、近い……。


「私がどのような殿方に見つめられようと、言い寄られようと、私が心移りするようなことだけは決してございません! な、何より、ギルよりも素敵な殿方なんて、世界中を探しても、その……いませんから……」


 う、うわあああ……そんな綺麗な瞳で至近距離から見つめられながら、しかも顔を真っ赤にしながら消え入りそうな声で言われたら、その……っ!


「ふあ!? ギ、ギル!?」

「シア……シアがいけないんです……シアが、そんなに可愛いから……!」


 感極まった僕は、シアを思いきり抱きしめた。

 うん、こんなの我慢できるわけがない。


「も、もう……ふふ」


 でも、シアもシアで少しだけ口を尖らせるも、すぐに嬉しそうに微笑んでくれた。

 なので僕は馬車が王宮に到着するまで、彼女をずっと抱きしめていた。


 なお、御者に指示して思いきり遠回りをさせたのは仕方ないよね。


 ◇


「シア、どうぞ」

「ふふ……ありがとうございます」


 王宮の玄関に馬車が横付けされると、僕はシアの手を取って降ろした。


「こうしてシアと王宮に来るのは、二度目ですね」

「はい。ですが、ギルと王宮に一緒にいるのは、これが三回目です」

「あはは、そうでした」


 今日の会場となる王宮のホールへと向かいながら、僕達はクスリ、と微笑み合う。

 予想どおり、貴族達は僕達を見てひそひそと噂をしていた。


 フフン、シアの美しさに見惚れるがいい。

 だけど、彼女は僕の婚約者(・・・・・)なんだから、勘違いするなよ……って。


「シア?」

「ふあ!? あ、い、いえ……ふふ」


 周りにいる令嬢達に対し眉根を寄せながら見ていたシアに声をかけると、彼女は驚いた後、誤魔化すように愛想笑いをした。

 シアのこんな反応、珍しいな……。


「何かあったのですか? もし、あなたが不快になるようなことなら、この僕が……「い、いえ! 大丈夫です!」」


 僕がそう言うと、シアは慌てて止める仕草をした。

 ふむ……すると一体……。


 シアのそんな行動を不思議に思い、首を傾げながらも、僕とシアはホールの中に入った。


「ふわあああ……!」


 そのあまりの豪華さに、シアが思わず感嘆の声を漏らした。

 まあ、王室が開催する晩餐会なんだ。これくらいは当然するよね。


「あはは。シア、見てください」


 僕はシアをもっと驚かせようと、テーブルに用意されている豪華な料理を指差した。

 もちろん、うちの公爵家だってあれくらいの料理はいつでも用意できるけど、こういう晩餐会という雰囲気の中でだと特に美味しそうに見えるからね。


「ふわあああ……ギル……まるでここは、夢のような場所ですね……!」

「あはは! 良い例えですね!」


 シアの言葉の……仕草の一つ一つが愛おしくて、僕は、もっともっと、と求めてしまう。

 そうやって色々とシアに説明しながら彼女の反応を楽しんでいると。


「国王陛下並びに王妃殿下、王子殿下、王女殿下の御入場です」


 王宮の侍従の言葉を受け、僕達をはじめ貴族達は一斉にホールの階段に注目する。


 そして……国王陛下達、王室の面々がホールへと姿を現した。

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