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国王陛下との謁見

(おもて)を上げよ」


 謁見の間で(かしず)く僕とフェリシアに、玉座に着いた国王陛下が静かに告げた。


 国王陛下の両脇には第一王妃と第二王妃が座り、騎士団長のモーガン伯爵が三人を守る。

 また、謁見の間の端には宰相の“スペンサー”侯爵がやや緊張した面持ちで見守っていた。


 加えて、(かたわ)らには死刑宣告を待つ囚人のような表情を浮かべた、王太子……いや、第一王子と第二王子がいる。


「それで……小公爵ギルバートよ、この度は不肖の息子二人がお主の大切な婚約者であるフェリシアを侮辱したこと、愚息の父親として謝罪する」


 国王としてではなく、あくまでも父親として頭を下げる陛下。

 まあ、臣下に対してこのような姿勢を見せるだけでも、破格の対応ではある。


「ついては小公爵への詫びとして、この二人への処分について、お主の判断に委ねようと考えておる。申してみよ」

「であれば、一つご提案したき儀がございます」

「ほう……? それは、どういったものだ?」

「はい。次の国王について、第三王女であるクラリス殿下を加えた上で、再考いただきたく存じます」

「「「「「っ!?」」」」」


 僕の提案に、謁見の間にいる者達がどよめいた。

 古い歴史を持つマージアングル王国において、女性が王位継承争いに参加することになるなんて一度もなかったことなのだから、このような反応になるのは想定内だ。


「ふむ……して、提案の理由を尋ねても?」

「理由は単純明快。最も優れた御方こそが、王となるべきだと考えているからです」

「なるほどのう……」


 答えを聞き、国王陛下は顎鬚(あごひげ)を撫でながら静かに目を(つむ)る。

 チラリ、と王太子と第二王子のほうへと視線を向けると……はは、悔しそうにしているな。


 まあ、オマエ達が優秀じゃなく、次期国王に相応しくないと言っているのと同じだから、それも当然か。


 そして。


「うむ……分かった。小公爵の提案を聞き入れ、まずはニコラスの王太子としての権利を剥奪、その上で、クラリスを含め三人の今後の資質を見極めた上で、改めて王太子を決めることとする」

「お聞き届けいただき、ありがとうございます。このギルバート、国王陛下に心から感謝申し上げます」

「うむ」


 国王陛下は満足げに頷くと、玉座から立ち上がり、謁見の間から出る。

 第一王妃と第二王妃も、その後に続いて謁見の間を出た。途中、二人の王妃は僕とシアに微笑みかけてくれた。まあ、当たり前だよね。


「さあ、シア……僕達も帰りましょう」

「はい」


 シアの手を取り、僕達も謁見の間を出た。


 ◇


坊ちゃま(・・・・)にしては(・・・・)、かなり寛大な処置となりましたな」


 王宮から戻り、心配そうに待っていたモーリス達に結果を説明すると、少し不服そうにゲイブがそう告げた。

 モーリスはいつもどおり澄ました表情をしているので何とも言えないが、アンも納得していないようだ。


「いや、これでいいんだ。少なくとも、第一王子と第二王子はマイナス評価からのやり直しだし、第三王女はあの二人よりも間違いなく優秀だ。これからは僕の意を汲んで、二度とこんなことはないだろうし」


 何より、あのまま王国との戦となって僕達が勝ったなら、それこそ王国全体まで面倒みないといけなくなる。僕はシアと自分の領地のことだけで手一杯なんだよ。


 それに……小説どおりラスボスと戦うことになるのであれば、本当の聖女(・・・・・)であるシアと共に戦うのは、一応はあの王子達だ。

 なら、いざという時のために残しておいてやれば、まあ……盾代わりにはなるだろう。


「そうですか……」

「まあまあ、今回のことで僕達は王室に対し、とんでもなく恩を売ることができた上に、国王陛下の頭を下げさせたんだ。それも、公式の場でね」


 これについては、僕も少し驚いている。

 最初は、精々応接室かどこかで国王陛下が軽く謝罪する程度かとも思っていたけど、陛下はそれ以上の形で応えてくださった。


 ここまでされると、さらにこちら側が文句を言ったら、今度は僕……いや、シアに悪い印象を持たれてしまう。

 それだけは、絶対に避けないといけないからね。


「ということで、狩猟大会での一件についてはこれでおしまいだ。そんなことよりも、僕としてはあんな連中のことは忘れて、シアと幸せに過ごすほうが余程重要だよ」

「わ、私も同じ思いです。私は、ギルと一緒にいられればそれだけで幸せですから……」

「シア……」


 シアの言葉が嬉しくて、彼女をそっと抱き寄せた。

 王宮では我慢していたから、ここでは遠慮なくシアを堪能しよう。


「コホン……坊ちゃま、フェリシア様と仲睦まじいのは大変よろしゅうございますが、その前に」

「っ!?」


 咳払いをして淡々と告げるモーリスに、僕は戦慄する。

 ま、まさか……。


「王宮に行かれていた間の分の仕事が残っておりますので、こちらを済まされてからでございます」

「チクショウ! そうだろうと思ったよ!」


 モーリスの心無い言葉に、僕は思わず悪態を吐いた。

 うう……せっかくシアとゆっくりできると思ったのに……。


 だけど。


「あ……そ、その! ギル……頑張って!」

「任せてください!」


 胸の前で小さく両手の拳を握るシアの声援を受けて、僕も俄然やる気になったんだけどね。


「……これからは、フェリシア様に坊ちゃまを操っていただきましょう」


 ……モーリス、聞こえているからな。

お読みいただき、ありがとうございました!


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― 新着の感想 ―
[良い点] テンポよく更新お疲れ様です。 自分の作品に転生とは、黒歴史が実現したみたいな感じですね。 [気になる点] 何で第三王女だけ追加なのかな? 第一王女と、第二王女は何で出てこないんだろう? 妾…
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