真なる聖女 ※フェリシア視点
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新作もスタートしました!
■フェリシア=プレイステッド視点
「早く! 次の患者を!」
「「「「「はい!」」」」」
私の声に、騎士団の皆様が答える。
この王都の広場には、ヘカテイア教団の卑劣な行為によって多くの民衆が怪我で横たわっていた。
中には、救うことができなかった方々も……。
「フェリシア様! こちらです!」
「はい! 【エクストラヒール】!」
上級回復魔法をかけると、瀕死の患者は一命をとりとめる。
本当は最上級回復魔法で完全回復をしてあげたいのですが、そうするとこの人数全てを救うには、魔力が枯渇してしまいます。
悔しいですが、まずは命を救うことが先決。その後の治療については、王宮及び女神教会から派遣されるだろう回復術士にお任せいたしましょう。
「次です!」
「はい!」
そうして私は、脇目も振らず次々と患者の怪我を治療していると。
「フェリシア様! 女神教会から回復術士が到着しました!」
「っ! その方々をすぐに治療に当たらせてください!」
「はっ!」
ふう……これで、少しだけですが逼迫した状態から抜け出せそうです。
そう思い、私は深く息を吐いて汗を拭う。
その時。
「聖女様! こちらです!」
女神教会の神官に案内されやって来た、困った表情を浮かべる一人の女性。
ああ、そうでしたね。
このような事態でこそ活躍しなければならない者が、一人いることを忘れていました。
――私の妹だった女、ソフィア=プレイステッドを。
「おお……! ひょっとして、“氷結の薔薇姫”と謳われるフェリシア様ですか! あなたも救援に駆けつけてくださるなんて!」
そんな彼女を射殺すような視線で見つめているところを、神官が目聡く私を見つけた。
そのおかげで、ソフィアも私を認識したようですね。
「……ごきげんよう」
「お姉様……」
私を見て、眉根を寄せるソフィア。
王立学院で既に実力差を見せつけていますから、私が目障りで仕方ないでしょうね。
ですが。
「何をしているのですか? まだ多くの方々が苦しみながら私達の治療を待っているのです。あなたも聖女なら、一人でも多くの患者を救いなさい」
「っ!? い、言われなくても分かっています!」
そう冷たく言い放つと、ソフィアは不貞腐れながら患者に回復魔法をかけ始める。
ただし、かろうじて上級と呼べる程度の回復魔法を。
「……言っておきますが、勝手に無理して使い物にならなくても、私達は面倒を見る余裕はありませんから」
「っ! 馬鹿にしないでください!」
私の言葉にソフィアは声を荒げるけど……彼女の実力で上級回復魔法を使い続ければ、すぐに魔力が枯渇することは目に見えています。
どうやら、あまり期待はできなさそうです。
それからも、私とソフィアは患者に回復魔法をかけ続ける。
尽きることない患者に、私の魔力もかなり減った。
ソフィアに至っては既に魔力が枯渇し、神官に悪態を吐きながら休んでいる。
元々期待していないので、どうでもいいですが。
ですが……私だけはここでへこたれるわけにはいきません。
今もギルは、王都の人々を救うためにヘカテイア教団の連中を相手にしておられるはず。
それに、あの御方は今回の件で自分のせいだとして、心を痛めておられます。
なら、そんなギルの心を救うのは、婚約者であるこの私の役目……いえ、私だけがその資格があるのです。
だから……だから……。
「私は救ってみせます! 傷ついた方々を! 絶対に!」
魔力を振り絞り、ひたすら回復魔法を行使し続ける。
既に私も魔力の枯渇が始まっていて、身体中が悲鳴を上げ始めていた。
「まだまだ! まだまだです!」
「っ!? フェリシア様! もうお止めください!」
騎士団の皆様が私を見て、止めるようにと促す。
ですが……まだ終わっていません!
そして。
「次! 次の患者は!」
私はあらん限りの声で、次に治療すべき患者を連れてくるようにと叫ぶ。
なのに、私の前に次の患者が現れない。
「何をしているのですか! 一刻を争うのですよ!」
すると。
「フェリシア様……怪我人は全て、フェリシア様がお救いくださいました」
「え……?」
騎士団の皆様が、涙を零しながらかぶりを振った。
見ると、騎士団だけではなくて、駆けつけた王宮や女神教会の方々、それに民衆も、私を見つめながら涙を流している。
これは……一体……。
「フェリシア様……いえ、“氷結の薔薇姫”様……ありがとう、ございます……っ!」
「「「「「ありがとうございます!」」」」」
みんなが一斉に押しかけ、次々と私に感謝の言葉を告げる。
その様子に、私はただ困惑した。
「フェリシア様……あなた様こそが、真なる聖女様でございます……!」
とうとう女神教会の神官達は、そんなことを言いながらひたすらに祈り続ける。
ですが、私はそんな聖女などと呼ばれたところで何一つ響かない。
私が求めるのは、あの御方が……ギルが、この私を『シア』と、蕩けるような声でお呼びいただくことだけ。
私は……ギルだけいればいい。
「全ての方の治療が終わったのであれば、私はもう行きます! 騎士団の皆様、私をギルの元へ連れて行ってください!」
「「「「「はっ!」」」」」
号令を受け、私をギルの元へと導いてくれる騎士団。
さあ……行きましょう。
愛する人、ギルがいる場所へと。
私は、魔力が枯渇してへたり込むソフィアを一瞥すると、ただギルのいらっしゃる場所へと急いだ。
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「ただの村人の僕が、三百年前の暴君皇子に転生してしまいました~このままでは強引に妃にする予定の冷酷侯爵令嬢に暗殺される運命なので回避するために奮闘したら、すごく溺愛されました~」
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