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ヘカテイア教団の暴挙

「ゲイブ! 確認できている爆破物の数は!」

「はっ! 広場と城門付近、二つですぞ!」


 馬を全速力で走らせながら、僕はゲイブに確認を取った。

 せめて被害が少なければいいが……。


 そして、僕達は広場へとたどり着くと。


「「「…………………………」」」


 僕達は、その光景に思わず絶句した。


「痛い……痛い……」

「うう……っ」

「お母さん……どこ……」


 ヘカテイア教団のメテオラの箱による被害で、王都に住む多くの民衆が地面に転がり、うめき声を上げていた。


「クソオオオオオオオオオオオオオッッッ!」


 それを見た瞬間、僕は大声で叫んでいた。


 ヘカテイア教団に対する怒りで。

 そして、これを未然に防げなかった僕自身への怒りで。


 僕は、前世でこの物語を書いたんじゃないのかよ!

 なんで……なんで連中がこんな真似をすることに気づけなかったんだよ……!


 アイツ等は、人の命なんて何とも思っていない連中なのだと……どれだけ関係ない者を巻き込もうとも、毛ほども思っていないということを分かっていたはずなのに……っ!


 どうにかなってしまいそうで、僕は胸を掻きむしる。


 その時。


「ギル! 大丈夫です! 怪我をされた皆さんは、この私が全て治療してみせます! だから……だから、そんなに自分を責めないで……?」

「あ……」


 僕の身体を抱きしめ、シアがサファイアの瞳を涙で濡らしながらそう訴える。

 この、どうしようもない僕の心を救おうと、必死で……。


「……ありがとう、ございます」


 彼女の瞳を見つめながら、僕は静かに感謝の言葉を告げる。

 僕は、シアの優しさに何度救われるのだろうか。


「よし!」


 気合いを入れ直すため、僕は両頬を思いきり叩いた。


「ゲイブ! 騎士達に指示を出し、人々の救出を急げ! 怪我人は、一か所に集めるんだ!」

「はっ! ただちに!」


 僕の指示を受け、騎士団は救出作業に当たる。


 そして。


「シア……では、お願いいたします」

「はい、お任せください! ですから、あなたは!」


 シアが、僕の背中を強く叩いた。


「あなたは、卑劣な連中に裁きを!」

「はい!」


 シアの(げき)に、僕の心がこれ以上ないほどに奮い立つ。

 さあ、始めよう。


 ――この僕が、貴様等に必ず地獄を見せてやる。


 ◇


「ハア……ハア……ッ!」


 ランスと盾を抱えながら、僕は王都中を駆け回る。

 少なくとも爆発は広場と城門付近なのだから、その二つを結ぶ線上に連中はいると見て間違いない。


 何より、こんな騒ぎを起こしてしまっては、ゲストハウスに戻ることもできないだろうから。

 なら連中は、この騒ぎに乗じてクラウディア皇女の奪還を図り、破壊した城門から王都を脱出するはず。


 屋敷のほうはあの(・・)モーリスがいる上に、アンのトラップで易々と侵入することは難しい。

 それに、あの転移魔法陣は敷地内に投げ込まないと使えないし、あの大きさでは大勢を移動させるには不向きだ。


 加えて、こちらにはアルカバン司祭すらも圧倒したサンプソン辺境伯に、王国最強の魔法使いであるマリガン卿までもが屋敷に詰めている。

 こちらが全て片づく頃には、向こうも終わっているだろう。


 すると。


「坊ちゃま!」

「! ゲイブ!」


 僕の後を、ゲイブが追って来た。


「広場の指示はどうした?」

「はっ! 後の指揮をジェイクに任せております。それに、どうやらクリス様がアンダーソン伯爵家を通じて王宮に使いを出し、王国兵とも連携して王都の警備と救援体制の強化を図っておられます!」

「そうか、さすがだな」


 事後処理も含め、クリスなら全て上手く取り計らってくれるだろう。


「ハハハ! 後は我々が暴れるのみですな!」

「ああ!」


 そして、僕達は城門前へとたどり着くと。


「っ!?」


 挨拶とばかりに、どこからか投げナイフが飛んできた。

 もちろん、それは全て盾で弾き飛ばす。


「ゲイブ」

「どうやら連中は、この城門を制圧したようですな」


 見ると、クラウディア皇女に付いていた使者達十数名が、城壁に立ちながら僕達を見下ろしていた。

 それにしても。


「……まさかたったこれだけで、僕とゲイブの二人を相手にできるとでも思っているのか?」

「思っているのでしょうなあ。でなければ、あのような表情を浮かべたりはしますまい」


 僕とゲイブは、肩を(すく)める。

 本当に、身の程知らず共が。


「貴様等、これを見ろ」

「「「「「っ!?」」」」」


 僕はおもむろに懐から女神ヘカテイアの肖像画を取り出した瞬間、連中は息を呑んだ。

 それと同時に、連中の一人が飛び道具を投げてきたが、ゲイブにあっさりと打ち落とされた。


「ほう? これは針か」

「そのようですな。おそらく、毒も塗ってあるでしょう」

「ふむ……」


 フン、馬鹿なことを。


「今この針を投げた奴。貴様のせいで、この女神ヘカテイアはこの僕に踏み潰されることが決まった」


 そう告げると僕は持つ手を放し、肖像画はヒラヒラと舞いながら地面に落ちる。

 それを、僕は(ねじ)じるように踏みつけた。


「「「「「…………………………」」」」」

「はは、どうした? 貴様等が先に手を出したからこうなったんだ。崇める女神がこんな目に遭ったのも、全て貴様等のせいだよ」


 殺気を込めた視線を向ける連中に対し、僕はせせら笑った。


 その瞬間。


「貴様ああああああああああああッッッ!」

「ただでは殺さん!」

「死以上の苦痛を与えてやる!」


 怒り狂うヘカテイア教団の連中が、我を忘れて一斉に襲いかかってくる。


「ゲイブ、やるぞ」

「はっ!」


 僕はランスを、ゲイブはウォーハンマーを構え、連中を迎え撃った。

お読みいただき、ありがとうございました!


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― 新着の感想 ―
[一言] へカティアの刺繍入れた服着てたら攻撃できなさそうな集団ですね
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