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忠犬ハリード

「それで、クラウディア皇女と残念な第一王子の面談は上手くいったけど、次は何をするの?」


 クリスがパンを口に含みながら、おもむろに尋ねる。

 それにしても、クリスも食事のマナーは完璧だけど、相変わらず美味しいものは頬の中に溜め込む癖は治らないな。まるでリスみたいだ。


「そうだな。クラウディア皇女は今日を含め、あと九日間は王国に滞在される。その間に、極秘で会談の場を設けるつもりだ」


 彼女もまた、ブリューセン帝国内にはびこっているヘカテイア教団を快く思っておらず、僕達と手を結ぶことを求めてきた。

 皇帝自身が現時点でどうなのかは分からないが、少なくとも次期皇帝となるクラウディア皇女がこちら側なのであれば、今後はあの国から連中を一掃することができるだろう。


 そうなれば、いよいよ次……ラスボスに、小説よりも一年以上も早く手が届く。


「ふうん……じゃあ、その会談はギルバートとクラウディア皇女の二人きりで行うの?」

「いや、少なくともシアとクリスには同席してもらおうと思っている。僕達三人は、運命共同体だからね」

「ふえ……う、うん……そ、そうだね……ボクと君は、親友(・・)だもんね……」


 僕の言葉に、クリスが顔を真っ赤にしてうつむく。

 もちろん、僕は明確に彼女の想いを断ったが、だからといってたとえ頭の切れるクリスでも、そう簡単に割り切るのは難しい、か……。


「とにかく、少なくとも今日と明日は第一王子がクラウディア皇女との仲を深めるために、王都を散策されるはずだ。不本意だと思うが、あの馬鹿王子が変なことをしないように、僕達も同行して見守るぞ」

「はい!」

「うん!」


 そう告げると、シアとクリスが元気よく返事をした。



 その時。


「坊ちゃま、お食事中のところ失礼します」

「? モーリス、どうした?」


 食堂へとやって来て一礼するモーリスに、僕は首を傾げながら尋ねる。


「はい。そのニコラス殿下とクラウディア殿下に同行される際、この者も一緒に連れて行ってくださいますでしょうか」


 そう言ってモーリスが身体を少し横にずらすと…………………………あ。


「ギルバート様! どうぞよろしくお願いします!」


 現れたのは、リズの兄であり小説のヒーローの一人でもある、ハリードだった。

 というか、モーリスに預けていたことをすっかり忘れていたなあ……。


 そして、その褐色イケメンが顔を上気させながら全力で尻尾を振るところ、相変わらずメンドクサイ。


「え、ええと、ギルバート……彼は誰なの……?」


 少し怯えるように若干身体を引き、おずおずと尋ねるクリス。

 まあ、初対面でアレだと、さすがに怖いよなあ。


「彼はリズの兄でハリードと言う。元はヘカテイア教団の暗殺者をしていたが、今では僕の()だ」

()……」


 そう聞いた瞬間、クリスが僕とハリードを交互に見やった後、引くどころかシアの陰に隠れてしまった……。


「ね、ねえ、フェリシア様はあのなつく人と手懐けるギルバートが気持ち悪くないの……?」

「おいおい、失礼だなクリス」


 眉根を寄せながらシアに尋ねるクリスに、僕はツッコミを入れた。


「ふふ、大丈夫ですよ。ハリード様は基本的に無害ですし、ギルもああ見えて一線は超えていませんから」


 そう言ってニコリ、と微笑み、クリスに諭す。


「それよりも、私とクリス様は同い年で友達(・・)なのですから、私のことを()をつけてお呼びいただかなくても大丈夫ですよ?」

「あ……」


 シアの言葉に、クリスが目を見開いたかと思うと、。


「プ……アハハ! そうですね! だけど、それでしたらフェリシア様……ううん、フェリシアも、ボクのことはクリスと呼んでください!」

「ふふ! はい、クリス!」


 シアとクリスは、手を取り合いながら微笑み合う。

 うん、すごく尊い。それこそ、間に挟まった瞬間に何者かによって僕の命が奪われてしまうほどに。


「尊い……」


 ハリード、よく分かっているじゃないか。

 だがシアに少しでも懸想してみろ。その時はリズが何と言おうが、絶対に息の根を止めてやる。


「コホン、まあいいや。それでモーリス、ハリードは大丈夫なの?」

「はい。元々それなりに技術は持っておりましたので、教え込むのはさほど難しくはありませんでした。後は経験を積ませることです。特に……執事としてのマナーを」

「…………………………」


 全身を震わせながら、直立不動で目を(つぶ)るハリード。

 どうやらモーリスの指導は、この褐色イケメンにトラウマを与えるほど過酷だったみたいだ。


「分かった。ならハリード、しばらくは僕の身の回りの世話と護衛……は特に必要ないが、頼んだぞ」

「は、はい! お任せください!」


 ()であるこの褐色イケメンは、力強く胸を叩いて小説のヒーローに相応しい笑顔を見せた。

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