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代わりの従者

 次の日になり、僕は早速動き出した。


 本当はアンダーソン家の冤罪事件を晴らすことを最優先すべきだが、クリス曰く、第一王子の従者の育成が最優先だということで、該当する子息令嬢の確保に向かった。


 ということで。


「宰相閣下……ニコラス殿下の従者候補として、クリフ殿にお願いしたいのですが……」

「う、うちのクリフですか!?」


 朝から僕を出迎えた宰相が、突然こんな話を切り出され、目を丸くする。

 まあ、昨日の今日でこんなことになるなんて、思いもよらなかっただろうから当然だろう。


「はい。クリフ殿は僕達と王立学院での学友でもありますし、ニコラス殿下とも近い立場におられます。何より、クリフ殿はスペンサー侯爵家の次男。今後を見据えても、適任ではないでしょうか」

「う、ううむ……」


 宰相が腕を組み、唸る。

 とりあえずは後継者である長男もいるし、何なら三男もいるのだから、クリフ一人生贄に出したところで痛くはないはずだ。

 それに、ブリューセン帝国やヘカテイア教団の実情を理解している宰相なら、その重要性も分かっている。


 既に、答えは一つしか用意されていないことも。


「……宰相閣下、もちろんただ(・・)でとは言いません。確か……宰相閣下はショーン殿下に(くみ)していたと思いますが……?」

「そ、そうですが……」

「本当は、クラリス殿下に鞍替えしたいのでしょう?」

「っ!?」


 僕の言葉に、宰相が息を呑んだ。

 そう……二か月前の能力判定での一件で、第二王子の評判はかなり落ちた。

 聖女認定を受けたソフィアの存在、そしてその父親であるプレイステッド侯爵が第二王子を支持していることもあり、かろうじて王位継承争いに踏みとどまってはいるものの、このままではクラリス王女が次期女王となる可能性が高い。


 宰相としても、できれば勝ち馬に乗りたいものの、第二王子派の領袖(りょうしゅう)に位置するためにそう易々と鞍替えなんてできない。


 そこで、クラリス王女派のトップである僕が、宰相と良好な関係を築いていることを見せつければ、周囲は勝手に想像してくれる。


 宰相は、クラリス王女の支持に回ったのだと。


 だが、実際は第二王子派に(くみ)したままで、第二王妃に対して不義理を働いたわけでもない上に、クラリス王女が次期女王に選ばれても、冷や飯を食わされることもない。


 つまり、どちらに転んでも宰相……スペンサー侯爵家は安泰というわけだ。


「どうです? 僕と手を結ぶことで、宰相閣下はこんなにもメリットを手にすることができるんです。悪い話ではないと思いますが……」

「むむむ……」


 そんな僕の甘言に、宰相はますます唸る。

 だけど、ここまでくれば答えなんて既に決まっている。


「……分かりました。うちのクリフを、どうかよろしくお願いします」


 ほらね?


「ありがとうございます。クリフ殿であれば、必ずや大役を果たしてくださることでしょう」


 僕はそう言ってニコリ、と微笑むと、宰相と握手を交わした。


 ◇


「ということで、クリスに指示された子息令嬢について、各家から了承を取り付けたぞ」

「本当! わああああ……やっぱりギルバートってすごいね!」


 僕の帰りを待ってくれていたシアとクリスに報告すると、クリスが身を乗り出し、手放しで僕を褒めた。いや、そこまで大したことはしていないんだが……。


「ふふ……クリスさん、私のギル(・・・・)にかかれば、この程度のことは造作もないことですよ?」

「むう……そ、それはボクだって分かってますよ……」


 クスリ、と微笑みながらそう告げるシアに、クリスが口を尖らせた。

 だけどシア……クリスは()なんだから、張り合う必要はないと思うんだけど……でも嬉しい。


「ギルバート様、お疲れ様でした!」

「ああ、ありがとう」


 リズから労いの言葉と共にお茶の注がれたカップを手渡され、僕は口に含む。うん、美味い。


「リズ、お茶を淹れるのが上手くなったね。美味しいよ」

「はわ!? あ、ありがとうございます!」


 微笑みながらそう告げると、リズが頬を赤くしながら、嬉しそうにお辞儀をした。

 うむうむ、雇用主たるもの、部下の勘張りはちゃんと褒めてあげないとね……って。


「「…………………………」」


 何故かシアとクリスが、僕とリズを交互に見ながら眉根を寄せている……。

 き、気にしないでおこう。


「さあ、次はいよいよ冤罪を晴らす番だ。僕とシアは、これからアボット子爵領へ向かう。その間に、クリスは第一王子の従者となる子息令嬢の指導を頼んだぞ」

「う、うん……」

「? どうした?」

「……ボクも、一緒に行きたかったなあ……って」


 そう言うと、クリスが寂しそうに微笑んだ。

 連れて行くことも考えたが、クリスが一緒にいればアボット子爵が警戒してしまうかもしれない。

 そう思い、クリスを同行させなかったんだがな。


 すると。


「……クリス様、一つだけ方法があります」

「「「っ!?」」」


 僕達の様子を見守っていたアンの言葉に、僕達は一斉に彼女を見た。

お読みいただき、ありがとうございました!


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