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19 最終話 終局?

 5,3000字にわたる夜の営みを終えて――


 後輩(ウサ)……沙歩子(さほこ)と一緒にいたして、至り、体中にじんわりとしみとおっていく余韻を味わっているところ。安心感と満足感、そして解放感。

 一連の夜のなかよし行為が終了したわけで、これで俺たちの夜の対局は終わった……はず。


「ぐず……ぐす……、ぐしゅ……、ふえぇぇ……」


 終わってから、もうしばらく時間がたっているのだが、彼女の泣き声が止まらない。


(感極まる、って感じだよなあ……)


 布団にくるまり、添い寝しながら、彼女の髪を撫でてやる。

 抱き寄せたり、あたまのてっぺんに口づけしたり、背中を撫でてやったりする。それを何度か繰り返していると、彼女はようやく落ち着きをみせ始めた。


 しばらく、ひっく……、ひっく……と続いていたが、やがてそれが小さくなっていく。徐々に静かに、満足げな深い鼻息に変わっていって、その移り変わりを俺はぼーっとしながら聞いていた。


 いやー、満足しきった感じだ。満足しすぎて頭が働かない。もう何も考えられない。賢者タイムとかそういうのとは次元が違っていた。悟りタイムに近い。この満たされた状態が続くと、何か宗教でも開いてしまいそうだな……。


 けれど俺の腕にくるまれて胸元で丸まっていた彼女が、ちゅっ、と乳首に吸いついてきて、思わず「おぅ……」と声が出てしまって、それを彼女がくすくす笑って、俺は宗教の開祖になることを喜んで放棄した。


「おちついた……か?」


 びっくりするくらいかすれた声が出て、自分でもびっくりする。


「うん……、ごめんね? どうしても涙がとまらなくて……」


 後輩の口調が様変(さまが)わりしている件……。「ッス口調」はどこ行った……。


 はっ!? もしやこれが伝説の、「誰にも見せない」とか、「恋人にしか見せない」というカノジョの姿! カレシしか経験できない……恋人の会話! 恋人の特権!


「まあ? 俺の胸でなら? いつ泣いても? いいけどな?」


 こんなアホなセリフにも後輩がくすくす笑っている。かわいい。

 こいつ……こんな笑い方もできるのか。やばい、かわいい。


 ただもう、あんまり会話をしなくていい気もしていた。くっついていれば、すべてわかりあえるような気がする。


「あったかいな〜、先輩、あったかいな〜。あったかあったか、あったかなな(・・)な〜」


 (ふし)をつけるような口調で何度も「あったかい」を繰り返している。たぶん「あったかい」という言葉自体にはそれほど意味はなくて、何度も繰り返すことで幸せをかみしめている、そんな様子だった。


 実際、布団の中でくっつき合っているから、めちゃくちゃ温かい。そして気持ちいい。幸福に、さらに幸福を重ねた気持ちよさ。


「おまえもあったかいよー……」


 満足しつつ、抱き寄せて応えていると――


沙歩子(・・・)


 ん?


()()()じゃなくて、()()()ッスよ?」


 あ、口調が戻った……。


「はい先輩、リピートアフターミー、『愛してるよ沙歩子』、どぞっ!」

「あ、あ、あ、……アイシテルヨー(棒)」


「はいブッブー! だめッスよ! 『エッチの後、男の人は冷たくなる』っていう話は、ほんとだったんスね? 先輩の冷血な態度で、今リアルに実感したッスよ」


「えー……。俺そんなに冷たい?」

「そうッスよ、体温もめっちゃ下がってきてないッスか? もう冷めちゃったんスか? このままわたしにも冷めちゃうんスか? しくしく(棒)」


「いやいや、そんなことないだろ? それにな、終わったあと男は体温が下がるもんなんだよ!」

「はいはい、そうッスね〜、そうッスね〜」


 軽く流された……。理不尽だ……。


「せんぱ〜い、もっとあったかくしてくださいよ〜ぅ。あったか先輩と、もっといちゃいちゃしたいッスよぅ〜」


 ただのノロケだった……。


「わかった、わかった」


 後輩を抱きしめ直しながら思う。この……ウザいけど、ほんとは俺のことを想ってくれてて、エッチなことにも楽しく挑戦して、びっくりするくらい気持ちよさそうになってくれる後輩が、この子が、俺の彼女なんだよなあ……と、あらためて実感する。


 今日俺たちがやったこと――恋人同士がするあれこれは、全部が初めてで初体験だった彼女だ。

 この部屋に誘うのにも、すごく勇気がいっただろうし、脱衣将棋という一見奇策に思えるやり方で俺にアタックしてきたのも、今になってみれば微笑ましく思う。


「ん? 何笑ってんスか?」

「あー、いやーその、な? 将棋がきっかけで、おま――()()とこんな関係になれてよかったな、ってな」


「そ、そ、そう……ッスか……。それはなにより……ッス(もごもご)」


 お? 名前を呼んだからか、照れているっぽい。


「そういえば『夜の対局』の方は、結局勝負がついた……? つかなかった……? よくわからないな。まあ二人とも気持ちよかったってことで、これで終わり――」


「まだ終わってないッスよ?」

「え?」


「まだもうひと勝負ッス」

「え……」


「まだできるッスよね?」

「えええ……」


 俺の彼女が、絶 倫。


「はい、いくッスよ〜。▲7六歩!」

「へ?」


「『へ?』じゃないッスよ。〈脳内(エア)将棋〉で勝負ッス! はい、次先輩」

「ちょっと待って、俺それできない……」


「え〜、なんスかそれ、なんスかそれ〜、そんなのつまんないッスよ〜」

「いや、できないものはできない」


「え〜……。じゃあ、先輩負けたら、強制アレでしこしこして、もう一発出してもらうッスからね!」

「いやもう無理だろ!? 今日何発出したと思ってんの!?」


 四発だよ!? しかも短時間で!


「はい、四の五の言わないッス。先輩はたぶん、追いつめられたらできる子ッスよ? 符号を間違ってたらわたしが言いますから。はい、先輩どうぞ!」


 まじか……。もうこの時点で彼女の強引さに押し負けてるから、勝負は決まってる気がする……。


 このまま後輩の口車に乗せられ、思い通りにずるずると流されていき、流れにのって――はっ!? と気がつけば彼女と二人、小舟の住人。大きな河の流れの上で、ぼーっと河岸の風景を一緒に眺めながら、これからの人生を送っていくんだろうか……。それもいいな……。


 いかん、変なことを考え始めたな。


「ええと? △3四歩? とか?」

「おぉ〜、やればできるじゃないッスか!」

「そ、そうか? へへへ」


 完全に乗せられてるな。……おだてられてる、とも言う。


「じゃあッスねえ……、▲2六歩」


 にーろく? ええと……後輩はさっき7六で角道開けて、今飛車先を突いたのか。あれ? 俺の方の飛車先の歩を動かすとすると、符号は何になるんだっけ? 2? 7? 8? 四? ……あれ? やばい混乱してきた……。


 わからなくなったので、さっき突いた3四の歩を進めることにする。これならわかる。中央に進めるなら四を五にすればいい。


「△3五歩……かな?」

「……………………」


 すると急に後輩が黙りこくってしまった。


「せんぱい……、なんスかそれ……」

「あれ? 間違った!?」


「間違ってはないッスけど……」

「けど、なんだ?」


 妙に歯切れが悪い。それにこの気配は――照れてる?


「ここで△3五歩って……、反則ッス……」


 えええ!? 反則? 間違ってないけど反則!? さらに混乱してまごつく。3五歩……。3五歩……。何かあるのか?


 ()()()


 あれ? 前にも似たような状況で悩んだな。たしか昼の対局中に、俺が三間飛車やったときだ。あのときも彼女は3五歩を気にしていたような……?


 うーん? と考えていると――


「あ、もしかして意味わかってないッスか? ええとッスね、ヒント。わたしの名前はなんでしょう?」

「ウサコ」

「そうじゃなくって! ……シタの方のぉ、名前ッスよ……えへへ」


 そう言いながら後輩は、俺の片手をとると、自分の下腹部からさらにシタへと導いていって……、俺の手をお股で挟んでしまった……。


 さっきの乳繰り合いのなごりで、まだたっぷりと残っている温かさが心地よい。ついでにシタの方で、俺の指をパックマンしているのが、大変にエロい。


「ええと、『沙歩子』……、が、どうした?」

「ふっふ〜、実はわたしの名前ですが、今さらながら、『歩』があります」


 ほんと今さらだな。


「そして沙は3、子は五とも読めるわけです。つまりわたしの名前は、沙歩子(3 歩 五)、これを並び替えると――?」


「あ、3五歩」

「正解ッス! つまり先輩は今、わたしの名前を愛おしそうな手つきで()したんスよ……。ほら、こんな風に……」


 と後輩はささやきながら、今度は俺のもう一方の手もとって、自分のおっぱいの谷間に強めに押し当てた。


「3五歩とか、三間飛車って相手に指されたら、ちょっとドキッてするんスよ。急に自分のところに刃物突きつけられたみたいに、ドキってするんス。ほら、今先輩のかっこいいナイフな指が、わたしの心臓を突き刺そうとしてるみたいに、す〜って先輩の手が、わたしに伸びてきて……ね? わたしドキドキしてるんスよ?」

「そ、そうだな……」


 今、俺の手はそれぞれ、お股に挟まれつつ、谷間に挿し込まれている。手指にしっとり感と、伝わってくる心臓の鼓動……。後輩のドキドキ音がすごく速い。


 つられてこっちもドキドキしてきた……。耳元で自分の脈がドクドクしてるし。そしてアレも妙にドクドクしてきた――


「あんっ……♡ せんぱい……、ちょっと元気になってきたッスか? わたしに当たってるのがモゾモゾ……動き始めたッスよ♡? ……ふふふ♡」

「あれー? おかしいなー?(棒)」


「どうするッスか〜? このまま脳内将棋続けるッスか? それとも……もっとエッチな対局に切り替えて、えへへ♡ もう一回というのも、ありッスよ♡?」

「そうだなぁ……」


 それもアリかな、と思っ――


 はっ! だめだっ、これは後輩の策略だ! いい感じに俺をいい気にさせて、流れをつくって、エッチな雰囲気に持ち込んで、こちらを罠にはめて、俺の精を全部吸い取って、精根尽き果てるまで、枯れ果てるまでヤりまくる作戦だな!? そうはいくか!


 だが俺の手は完全に彼女のお股とおっぱいにくっついたままだった。離そうとしてもびくともしない。まったく離れようとしやがらない! 魅惑の両谷あいに、完全に絡め取られてしまっている……。

 いかん、このままでは後輩の誘惑にずるずると引きずられていってしまうっ!


 そう、またしても流れは完全に……後輩!




(了)

最後までお読みくださってありがとうございました!

よろしければ感想などもおきがるにどうぞ〜……ッス。

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