変人ハーレムをつくろう
これまでなろうに書いてないのに、ナーロッパに憧れて書いてみた。なお、キリスト教はないので、ハーレムは作れるが、イスラム教でもない。
ここはナーロッパにある小さな国、エロナ王国である。
小さな国だが、住民も王様も極めて適当に気楽に暮らしていた。楽観的な国民なのである。
冬の終わりのことである。高齢の王が崩御した。前王ポポンス・エロナイスは風邪をこじらせて肺炎になりしばらく伏せっていたがそのまま亡くなった。そして第3王子カーダハ・エロナイスが跡を継いだ。
エロナ王国の王位継承はやや複雑である。王位交代を少なくし、1人の王が長いこと国を治めるように作られている。成人している王の子で1番若いものが王位継承順第1位であり次の王になる慣わしである。エロナ王国は小さく貧乏なので、王位継承式典の回数を減らしたいのだ。
「戴冠式はいつになるのじゃ」
もと第3王子、今は王であるカダーハは侍従長を王の居室に呼んで尋ねた。前王の葬式から二月が経ちカダーハは退屈していた。いつまでも悲しんではいられない。
「三月の服喪期間がありますので、あと一月の辛抱です」
「もう少し早くできないか」
「難しゅうございます。三月の服喪は極めて短い方でございます。平時ですので1年は喪に服するのが前王陛下に対する敬意でございましょう」
「国民は1日だけではないか」
「国民生活に影響がありますからな。1日でもパン屋が開かないと住民は困りますゆえ」
「うーむ、つまらんのじゃ」
服喪期間でも王としての執務はある。毎日、朝食後に宰相から国政についての簡単な報告を受け、「うむ、良きに計らえ」と答えているのだ。
それなのに王としての楽しみはまだ始められないのである。おかしいではないか。
「ハーレムの入れ替えはまだ出来ないのか」
「みなさま喪に服しておりますから、追い出すわけには行きませんぞ」
エロナ王国の祭神は地母神アイエである。王位の安定のためにもハーレムを調え、継承者を育てることは必要だ。王位を安定して長く保つには早く子を作り、そして長く子を作り続けることが重要である。
安定した王位こそが国にとって何よりも重要なのだ。
「しかし、そろそろ候補者の選定に取り掛かってもよいでしょう」
侍従長の言葉にカダーハ王は喜んだ。
「さっそくはじめるのじゃ。余の好みは分かっておるか」
「ではそこからお聞きしましょう」
こうしてカダーハ王のハーレム計画が始まった。
なぜ王はハーレムを持つのか。それは確実に子を残すためである。なぜ子を残す必要があるのか。それは王位争いを起こさせないためである。王はそもそも国内を治めるために存在する。しかし、王位継承争いが起こっては国内が乱れる。
このために、王家には王位継承争いを起こさないための工夫がいくつもある。まず、王位継承順位は常にはっきりと示されている。次の王の候補者だけでなく順位を付けているのは、戦争や流行病で王位継承候補者が複数1度に亡くなるという可能性を考慮しているのである。
王位継承者は血統優先である。人格や人気などで王を決めると意見の相違が出て争いになるからである。ただし、あまりにも不適格な者は王が継承候補者から外すことができる。これは王の専権事項であり、他のものは口出しすることができない。
また王は隠し子を認知して継承候補者に加えることも出来る。これも王の専権事項であり、王の死後に隠し子が判明しても王位継承者にはなれない。
王に問題があって子供ができない場合は、王の兄弟姉妹の子が候補者になる。ただし、外国に嫁や婿に行った兄弟姉妹の子供は継承候補者とならない。
このように複雑な王位継承の問題を少しでも避けるためにハーレムを整えることは重要なのである。ただし、カダーハ王は単に女と遊びたいという動機で行動しているのであるが。
侍従長は近衛長官に依頼して、近衛兵の中から2人をハーレムの姫探しに割り当ててもらった。デコ・セタカーイとトッチョ・ボコノンの二人である。ちょうど2人には近衛兵として分担された役割もなく暇だったからである。
2人は謁見室に入った。近衛兵だから何度も来ている謁見室である。玉座があり、その両側に知り合いの近衛兵が立っている。トッチョは手を上げて知り合いに挨拶しようとしたが、デコが止めた。そこで手をあげると、王に気安く挨拶するように見えるではないか。
トッチョはデコと並んで絨毯の上を進み、王の前で跪く。跪いてみると、絨毯がずいぶんすり減っている。年季が入った絨毯である。伝統の重みと王国の財政状態を感じさせる。
カダーハ王は直接2人に姫の好みを語った。
「ともかく変わった女がいい。変な女を選び出すのだ。あとは遊び相手が欲しい。余とゲームをする相手を連れてくるのだ」
「顔やスタイルはどういうのがお好みでしょうか」
侍従長が尋ねる。
「変な顔で変なスタイルの女を選ぶのだ。変な女をたくさんハーレムに入れて変人ハーレムを作るのじゃ」
「人数は5人まででございます」
侍従長の答えにカダーハ王は拗ねる。
「なんと少ない。もっと大勢欲しいのじゃ」
「今年は前王の葬式もございましたし、王の戴冠式も予定されています。予算が足りないのです」
「戴冠式など質素にやればよいではないか」
「外国からの来賓もありますので、そういう訳には参りません」
仕方がない、今年だけの事情ならあとで増やすことも出来るだろう。カダーハ王は考えた。
「許す。5人でよい。戴冠式までに候補者を揃えるのじゃ」
「承知しました」
デコとトッチョは声をそろえて答えた。