平凡女子は恋愛初心者です。~普通の恋愛を望んでいますがイケメン社長が逃がしてくれません~
あなたはどんな恋愛をしたいですか?
その中でもごく平凡な恋愛の夢見る平野まりあの前に現れ求婚をしてきたのは大会社社長の広崎渉。
こんなイケメンと釣り合うわけないでしょ!!無理無理無理無理。お断りします。
って、なんで諦めないの!?
「僕と結婚してください」
「はい??」
冒頭から動揺してすみません。私、平野まりあ24歳。一般事務で働く極々普通のサラリーマン家庭の見た目も普通女子です。なのにどうしてプロポーズなんてされているんでしょう?恥ずかしながら彼氏なんていた事がないので・・・気を取り直して
「どなたかと間違えてはいないですか?」
「いえ、僕は平野まりあさん、貴女に求婚しています。申し遅れました、僕は広崎渉と申します。」
「はぁ。広崎さんはなぜ私に求婚を?私と広崎さん会った事もなければ面識すらないですよね?」
「会った事もなければ面識も無いですね」
「ではなぜ?」
「僕の身内を助けていただいたんです。二か月前、具合の悪かったおばあさんを助けませんでしたか?」
二か月前。確かにあの日、買い物に出かけた先で具合が悪そうなおばあさんを助けた。暑くて体調を崩したんだろうおばあさんに声をかけ、日陰に連れて行き冷たい飲み物を渡し迎えが来るまで付き添った。お礼をしたいというおばあさんに、早く家に帰って体を休めてくださいと言って辞退した。
「二か月前、確かにおばあさんを助けましたが」
「それが僕の祖母です」
「えぇぇぇぇぇ!?広崎さんのおばあさんだったんですか?」
驚く私に目を細めて広崎さん続けて
「祖母はまりあさんの献身的な姿と、お礼をしたいという祖母の気持ちより体調を心配して送るという事すら辞退して帰っていった姿に感動して、孫嫁に欲しいとまで言い出したのです」
は?感動??なんで???具合の悪い人を介抱するのは普通でしょ。そんな人に家がどこかも分からない私の為に長時間車に乗せるのが申し訳なかったから辞退しただけなのに。そんな思いが顔に出ていたのか広崎さんは少し困った顔で
「祖母は会長夫人と言えば分かりますか?そんな祖母の周りには下心を持った人間が集まり媚びを売るんです。縁を持ちたい・自分の会社に箔をつけたい。そんな人達が体調の悪い祖母の心配をしますか?次は誰に媚びようかと心の中で考えながら上辺だけ祖母の心配をしている『フリ』をしているのです」
「そんな・・・」
「そこに下心を持たない、ただ純粋に祖母の事を心配するまりあさんは聖母マリアに見えたそうです。そして是が非でも僕のお嫁さんに!と進めてきたので、申し訳なかったのですが少々調べさせてもらいました。迎えの車を待つ間色々と世間話をしてたようなのでそれを元にですが・・・」
「ちょっと待ってください。少し整理させてください。広崎さんのおばあ様は会長夫人という事は、広崎さんは何をされているんですか?」
「言ってませんでしたね。僕は祖母とは別の会社で働いています」
「役職を伺っても?」
「お恥ずかしながら、社長をしています。」
「むむむむ無理です!!社長と結婚なんてつり合いが悪いですよ!!」
動揺する私の手を取り優しく微笑みを向ける広崎さん。
普通ならばここでグラつくんでしょうが、私の愛読書である恋愛小説には高スッペクの人には親が決めた婚約者がいるというのが相場。相手もそこそこのお金持ちとくれば、私は完璧な邪魔者。そこまでおバカではありません。
「広崎さんには親が決めた許嫁とかいるんじゃないですか?」
「僕の方にも祖母と同じく、僕の地位とお金目当てに寄ってくる女性はいますが、そんな人はお断りです。両親が恋愛結婚だったのもあって結婚に関しては自由にさせてもらってます。その中でもまりあさんは祖母の理想とする女性だったようで、僕に話を持ってきた時は興味本位で調べただけでした。報告書を読む内、僕の理想の人だと確信しました。なので、冗談でもからかってもいません。本気で貴女と結婚したいと思っています。」
「でも・・・」
とても魅力的な話なんですが、顔は人並み家族もごく普通のサラリーマン家庭。
広崎さんの得にならない事を理想とする女性像だけで決めてもいいんでしょうか。私はただ普通の恋愛をして優しい旦那様と普通の結婚生活を送りたいと夢見ているだけなのに。
「やっぱり無理です。私では広崎さんの会社を発展させられるほどの財力はありませんし、社長と一社員に過ぎない私とでは不釣り合いです。広崎さんと釣り合う方は探せば他にいるはずです。それでは失礼いたします。」
そう告げて私は帰路についた。
「僕は貴女を諦めるつもりはありません」
遠ざかる私の背中にぼそりとつぶやいた広崎さんが怪しげに微笑んだ。
衝撃のプロポーズを断ってから平穏な日常を送っていたある日、上司から呼び出され会議室に行くと専務までいた。何か重大なミスをしたのかと思っていたら専務から
「来月から本社の社長秘書補佐として来てほしいと社長自ら君を指名された。何か心当たりはないかい?」
「へ?社長秘書の補佐?本社に知ってる人はいませんが」
「だよねぇ。本社研修で行ったくらいで、同期でも秘書と関わりのある子なんていないよね」
お互いに「不思議だよね」的な空気の中会議室のドアがノックされ、中に入ってきた人を見て私は目が限界になる程開いた。そこには広崎さん??に似た中年の男性が立っていた。
「忙しいところすまないね。その子が平野まりあさんかな?」
穏やかに話す広崎さんに似た男性に専務は頭を下げ
「お疲れ様です社長。この者が平野まりあです」
「少し平野君と二人きりで話したい事があるから席を外してもらえるかね」
「分かりました。何かありましたらご連絡ください。」
そう言って専務達は会議室を出て行った。二人きりになった途端社長は目じりを下げ
「驚かしてしまってすまないね。平野君も薄々は気付いているだろう?」
「もしかして、広崎渉さんのお父様ですか?」
「正解だよ。そしてこの本社の現社長でもある。顔を合わせるのは入社式以来かな」
「あの・・・お聞きしたいのですが、なぜ私が社長の秘書補佐として働く事になったんでしょうか?恥ずかしい話、私は秘書検定を受けてもいません」
「私情を挟むのはよくない事だとは思うんだが、母さんと渉から言われてしまって・・・」
「お母様?」
「あぁ、この会社の会長夫人と言えば通じると聞いているけど」
!!!広崎さん・・・ここでは誰の事か分からなくなるから渉さんのおばあ様がこの会社の会長夫人!!?ちょっと待って、落ち着こう私。一から整理していこう。
前に具合の悪いおばあさんを助けた。そのお孫さんが渉さんで求婚をして来た。でも、私は分不相応としてお断りした。よね?なのにどうして・・・渉さんのお父様の秘書補佐を命じられるんだろう?
「混乱しているところ悪いんだが、私から説明させてもらってもいいかな?」
「お願いします。」
「前にも聞いたと思うが、以前母を介抱してくれた時に欲や下心のないただ純粋に母の事を心配していた君の姿にとても感動してね、渉の嫁にしたいと薦めてきたんだ。渉も君の人柄に興味を持って性急にプロポーズしてしまったと聞いている。ここまでは合ってるかね?」
「はい、合ってます。ですが、プロポーズはその場でお断りしました」
「渉の会社の得にはならない。だったかな」
「そうです。私と結婚しても渉さんの会社にとって得になる事はありませんし、不釣り合いだと思います。私みたいな平凡な女が渉さんの横に立つより、渉さんの会社の得になる人、隣に並んでも釣り合う人がいいはずです」
内心この話を早く終わらせたい私は思った事をそのまま話した。すると社長は
「はっはっはっ。話に聞いた通り自分の事より相手の事を先に考えて動く子なんだね。心配しなくても私の会社も渉の会社も他の令嬢と結婚して会社を存続させないといけないという状態ではないから安心してほしい」
いやいやいやいや、『安心してほしい』じゃあないんですよ。私の安息の危機なんですよ!女の妬みは怖いんですよ!仮に渉さんと婚約したとします。会社のキレイどころのお姉様方に呼び出されて罵倒されるはずです。それだけではなく、どこぞのご令嬢からも『身分を弁えて身を引け』と言われるはずです。そんな未来こっちからお断りします。
「それと、君を社長秘書補佐とするのは渉が自分の秘書として将来引き抜きたいそうで、私の所で秘書検定を受けてもらって実務経験を積ませるそうだ。そうすれば実力を買われたと周りも納得せざるをえないだろ。まあ、多少の嫌味はあるだろうが何とかなるだろう。君は仕事は丁寧で速いと聞いている。君なら大丈夫だ」
驚きで開いた口が塞がらないとはこの事なんですね・・・
秘書補佐として働くのは渉さんの会社へ行く為の検定取得と実務経験。私の意見は無しですか・・・そうですか。沸々と怒りが込み上げてきた私は怒りを抑えつつ
「社長、渉さんと会えるよう連絡を取ってもらってもよろしいでしょうか。」
にっこりと微笑みつつも怒りオーラが抑えきれてなかったようで、社長はたじたじになりながらも今夜渉さんと会う約束を取り付けてくれた。秘書補佐として働く事は保留にしてもらって、会議室を後にした。ただ、上司には社長との関係を聞かれ、適当にごまかしておいた。これが面倒なんだよ!!一般ピーポーとお偉いさんが会話するだけで下衆の勘繰りする人はいるんです!
終業後、渉さんに指定されたお店は和食店の個室。思いっきり場違いな感じがします。私なんかが入るようなお店ではありません。一人で入る勇気がなく外で待つこと数分、渉さんが来ました。
「暑かったでしょう。中で待ってくれててよかったのに」
スマートに私をエスコートして個室に入った私達は飲み物を注文した後本題に入った。
「私を渉さんの会社に秘書として引き抜くとお父様から聞いたんですが・・・」
「あぁ、その話ね。そうだよ、君を僕の秘書にしたいんだけど、資格も経験もないから父の下で秘書検定を受けて実務経験積んでから婚約者兼秘書として引き抜くと話してあるんだ」
「婚約者!?結婚の申し込みはお断りしたはずですが」
「僕は了承していないよね?」
にっこりと逃がす気はないと言われてるような気がして、思わず本音が出てしまいました。
「こっちは朝から社長と秘書補佐として働く事の話題で上司や先輩方に質問攻めにあったんですよ!?正直言って迷惑なんです!ましてや渉さんの会社に婚約者兼秘書として働く事が知れ渡った時どんなことになる事か・・・」
ブルブルと震える私を見ながら、渉さんは
「何か問題でも?」
なんて軽く言われた私は
「問題大有りですよ!!こんな平々凡々の私に高スペックの社長が婚約者なんて渉さんイメージが落ちるわ、私の周りには婚約者の座を譲れって嫌がらせされるんですよきっと。そんなの私はごめんです。私は普通の恋愛をして普通の結婚生活を送りたいんです!」
私の力説を肩を震わせながら聞いていた渉さんは
「ごめんごめん。君があまりにも可愛い悩みを言うもんだから。周りの意見を無しに考えてみてくれないか?君自身は僕に興味はない?」
「それは・・・」
ないとは言い切れない自分がいます。こんな素敵な人今後出会う機会なんてないはずだし、夢を見ても罰は当たりませんよね?
「それは?」
「興味はあります」
「だったら・・・」
「でも無理です。こんなイケメンと付き合ったらドキドキして心臓が持ちません。」
「ドキドキするって事は僕の事を少なからず異性として意識してくれてるんだね。」
嬉しそうに話す渉さんに対し、顔に熱が集まった私は下を向いて視線を外した。そこへ飲み物が運ばれてきたから取り敢えず話は中断して食事をする事に。流石社長が行くお店だけあって凄く美味しいです。このお店に来ることもないだろうと思い、デザートまでしっかり味わいました。
すると、渉さんが何故か私の隣に座るではありませんか!!男に免疫のない私はハードルが高いです。えっ?前の方で手を握られてたのはどうなんだ?あれは男の人として意識してなかったからというか・・・仕事で握手するのと同じ特別な感情がなかったから手を取られても何ともなかったんです。なのに、隣に座って手まで握られて私の顔は苺のように真っ赤になり、心臓がバックバクです。
「まりあさんの勤務態度は父から聞いています。真面目で丁寧・仕事が早いと。だからこそ秘書というスキルアップをして僕をバックアップしてほしい。実力さえつけば周りはとやかく言いませんよ」
にっこりと微笑む渉さんの顔を見てしまった私は落ち・・・
落ちたらヤバいと私の中の何かが訴えているような気がします。何とか気を確かに持って
「確かにスキルアップは魅力的です。でも、それと渉さんのバックアップは別の話です」
「何が違うんですか?僕は大好きなマリアさんが目の届く場所で仕事をしているのを見て安心して仕事ができる」
「お父様の下で仕事していても同じじゃ?」
「いいえ違います。まりあさんの可愛い笑顔に男性社員が気付いて声をかけて来たりなんかしたらと心配で仕事が手につかなくなります」
真剣な顔で何言ってるんですか?大好きとか可愛いとかホント男に免疫のない私には爆弾ワードです。
「すみません。男性に免疫がないもので手を放してもらえるとありがたいのですが。あと、可愛いとかも・・・」
「男性とお付き合いしたことは?」
「恥ずかしい話、彼氏がいた事はありません」
「じゃあ、僕が初めての彼氏なんですね!」
何とも嬉しそうに話す渉さんですが・・・ちょっと待ってください。今、初めての彼氏って言いましたよね?私の聞き間違いではないですよね。
「私、付き合うなんて言いました?」
「男として意識してるんですよね?だったらそのまま付き合っても・・・」
「無理です!」
必死に断わる私に渉さんは両手を私の頬に添えて
「ここで付き合うと言ってくれなければ『キス』しますよ」
更なる爆弾ワードが!!意地悪な微笑み悪魔のしっぽが見えそうです。は?キスの一つや二つやったらどうだ?だ・か・ら!男に免疫がないんですって!恋愛初心者です。もう許してください。
今、この状況も恥ずかしさで涙が出そうなくらいなんです。真っ赤な顔を両手で挟まれ逃げる事もできず、イケメンな顔が迫ってきているんです。
「分かりました!渉さんとお付き合いします!!だから放してください!!」
「本当ですね?」
「はい!!」
「じゃあ、キスはやめます。段階を踏んでいきましょうね。ただ、ハグだけはさせてください。それ以上はしないと約束します」
「むむむむ無理です。」
「ホントまりあさんは可愛いな。顔なんて熟れた苺みたいに真っ赤で」
くすくす笑いながら優しく包み込むようにハグをする渉さんは私の耳元で
「よろしくね、まりあさん」
イケメンのうえにイケボ。それを耳元で囁かれては撃沈・腰砕けになるでしょう。真っ赤な顔、涙目で
「とりあえず、お試しという事でいいですか?」
「えっ?結婚前提だよね」
うん。話し合いが必要です。
「僕がまりあさんを捨てるなんてないから。逃がさないよ」
黒い笑みを見たような気がした私は決めた事を早くも後悔しそうです。それに、夢に見ていた恋愛ともかけ離れている気が・・・
「まずは、父の下で秘書検定を受けて実務経験積んでね。そうだ!その間にまりあさんのご両親にも挨拶しないとね」
なんか一足飛びに話が進んでるような。
平野まりあ、恋愛初心者ですがこんな恋愛ありなんですか!?
平凡女子は恋愛初心者~を読んで頂きありがとうございます。
私の初投稿作品になります。内容としては起承転結がなってないグダグダな作品なのではと思っています。人物設定・物語の流れ、そのどれもが未熟なんだろうなと思いながらも短い話で作ってみました。
私自身も平凡で、誰もが御曹司と付き合えたら・・・と思います。
私だったらこんな展開の方が面白い。なんて想像の幅が広がるお手伝いができたのなら幸いです。
また、次の作品でお会いできるのを楽しみにしております。