世の中の役に立つ人
ぼくの将来の夢は、「みんなの役に立つ人」になることです。
どうしてそうなりたいのかというと、ぼくはテレビが好きでよく見るのですが、ぼくが好きな番組、アニメでは必ずヒーローがあらわれます。
ヒーローは、困っている人を無料で助けて、みんなを笑顔にするのがかっこいいと思うからです。
今はまだクラスの友達を笑わせるとか、それくらいしかできないけど、大人になったらみんなの役に立つ人になりたいのでがんばろうと思います。
◆◇◆
――いくつになれば大人と呼べるのか。自分は本当に大人になれたのかも分からないまま月日は流れる。
“人の役に立つ存在”に、なんて思い描いたような大人にはなれないまま……二十年が過ぎてしまった。
ただ無為に過ごしたつもりはない。きちんと勉強もしたし、それなりの会社に就職もした。
ボランティア活動でもすれば思い描いた存在になれるだろうか、と考えてみたりもして色々と顔を出してみたが――どれも自分の中でしっくりとは来ないままだった。
一人を助けたところで、どこか別の場所では違う誰かが悲鳴を上げているような気がして。人助けをしようとすればするほどに己の無力さを痛感する日々を過ごしていた。
だけど、ついに見つけた。それはある日、ぼんやりと眺めていたSNSの雑多な投稿の中で。
初めて“その人”を見た時、魂が震えた気がした。誰よりも目立つ“その人”の言葉は人々を一喜一憂させ、耳を傾け涙を流していたんだ。
誰もが心の奥底で切実に欲する存在を、この世界に絶対必要な存在を見つけた。
今まで、何と遠回りをしてきたことか。
◇◆◇
子供のころのぼくへ。僕は“世の中の役に立つ人”になることが出来たよ。
“自分より弱い存在が見つからなくて困っている人”
彼らを助ける存在。
“誰かを笑うことで自分を保ちたい”
みんなを笑顔にできる存在になれたんだ。
世界中の誰もが心の奥で必要としている存在になれたんだ。