005 朝、目覚めたらタイムリープしていた。十年後に。 ~中学生なのに社畜~
【あらすじ】
三原典子は、Web小説を読むのが好きな中学3年生。普段は読まないタイムリープ物を一気読みし、そこで描かれる恋愛模様に想いを馳せ、そして……翌日、タイムリープしていた。十年後の、ワーカホリックなOLに。これは、高校受験を控えた中学生とドロドロの人間関係にまみれた社畜社員の両方の生活を、恋愛の理想と現実のギャップに苦しみながらも乗り越えていく物語である。
【ジャンル】
現実世界〔恋愛〕またはローファンタジー〔ファンタジー〕
【キーワード】
タイムリープ 中学生 サラリーマン OL 社畜 ざまぁ
【本文】(第一話冒頭レベル)
------------------------------------------------------------
昨日、過去にタイムリープするという小説を呼んだ。有名どころの出版ブランドではなく、Webの小説投稿サイトで公開されていたものだ。文体やストーリー展開が私にとって無難だったせいか大変読みやすく、一晩で一気に読んでしまった。受験勉強の息抜きとしてもちょうど良かったかもしれない。
内容としては、会社に勤めて数年のサラリーマンが中学生時代に精神が飛び、当時憧れていた同級生と今度こそ仲良くなろうというものだ。本来であれば、この作品のターゲット層は、タイムリープ前のサラリーマンの世代なのだろう。
でも、私―――三原典子―――は現役中学3年であり、本編である中学校生活で繰り広げられる恋愛模様そのものが楽しめた。たまに描かれるヒロイン視点に感情移入したのも理由にあるかもしれない。いやまあ、私が憧れの対象になるなんてあり得ないんだけど、そこはそれ。
だから、なのだろうか。
今日の朝、目覚めたらタイムリープしていた。
十年後に。
…って、そっち!?
◇
「えっと、『(株)藤谷商事企画営業部第二企画課広報企画係』…長いっ」
枕元にあった携帯端末を操作し、ホーム画面にあった名刺アプリのアイコンをタップして表示した私の肩書は、妙に長かった。ネットで調べた限り、可もなく不可もなくの中堅企業のようだが、それだけに、下っ端感あふれる長い肩書と言える。
「でも、成績は悪くなかったとはいえ、中身は中学生だよ、私…。夢なら早く覚めてー」
どうやら、会社近くの単身者向けマンションを借りて住んでいるらしく、自宅としてのスペースに他人の気配は感じられない。