高くそびえる城塞の護りと決起の心
私だって世界に歯向かうちっぽけな十本の刃がある。
だから恐れるな、この世を刮目しよう。
当然この世界のお金なんて持ってるわけないしクエストに必要なものなんて何一つ帰る訳じゃない。
頼りになるのはちっぽけな十徳ナイフ一本のみというなんともハードモード、もしくはそれ以上か。
他には栓抜きやら缶切り、コルク抜きなんてあるけどたぶんこれらは戦闘においてたぶん使うことは無いかもしれないし攻撃に回せるものはやはり使い慣れたナイフくらい……頼むからいざというときは不思議な力を覚醒させて欲しいと願う。
そんなことないと思うけど。
「さて、単身で王国の外に出てみたけど城塞の壁……スゴい。」
内側からは見えることはなかったけどバリスタと呼ばれるとんでもなく大きなボウガンに典型的な大砲、そしてなんと言っても分厚く、なおかつ高くそびえる壁。
ここまで護りに徹するのは【なにか】から守るためであるのはわかるけど、ここまで大がかりにする必要があるほどっての山のような壁はあいにく見ている暇なんて無いんだ……あとでじっくり見てあげるかもしれないから許してね。
今ははっぱ草ってのを探さなきゃいけない。
誰かが空を見上げろって言ってたのを思い出したけど、たまには下を向いてひねくれながら生きるっていうのも案外悪くないよ。
私みたいなアウトローにはうってつけ。
「うぅ……これはクローバー、これは知らない雑草。 全くどれがはっぱ草なのか皆目つかないよ。 いったいなにに使うためにギルドは集めてるのってほどふざけた名前してるし。」
平原を道行く他の人々は居るには居るんだけど、こういう困ったときは第一に助けを求めるのは鉄則中の鉄則。
しかし、陰キャの私が他人に話しかけろとはラスボス倒せと言われるよりはるかに難しいんだな……これが。
さすが陰キャ、陰なる者よ。
「さすがの私でも時間が解決してくれると思うことはあれどこれは詰みなのかな? まずはっぱ草っていうのがどんなものなのかわかればこっちのものなんだけど。」
ブチブチとそこら辺の名もなき、いや名前も知らない雑草を引っこ抜いてはもらった袋にゴチャ混ぜにひたすらぶちこむあるのみ!!
偶然はっぱ草が一キロでも取れればあとはギルドの方で選別してって無理を押し通してバンバンザイ、この考え……なかなかナイスでしょう?
さすが私、悪知恵だけは一級品と見た……と言うか見ろ!!
「となれば無差別じゃあぁああいっ!!」
そう、私は芝刈機。
人間芝刈機とはこの私の事、周りの視線が痛くてナンボ……クエストクリアするためなら私は惜しまないっ!!
くぅ……耐えろこの屈辱に。
それともやはり他人に助けを乞うということもいずれは必要な局面があるなら……変わろう、私も。
聞くは一時の恥、聞かぬは……一生の恥だから。
「次に通りかかった人に何がなんでも聞いてみなきゃ。」
私の心は大きく脈動し今までにないほど奮い起った。
今なら自分から話しかけれる、そんな気がしてならない。
いや、【誰かに話しかけたい】という気持ちが爆発しそうな今ならきっとできるはずなんだ。
強いだけじゃダメだ、人は群れることで安を得る。