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【20200221】

【読者の反応】

一緒に滅びよう。 20%

一緒に生きよう。 80%

ルルだけは生き残らせよう。 0%

一緒に世界を征服しよう。 0%


#ツイッタゲーム

「一緒に生きよう」

俺はカンちゃんにそう言った。

カンちゃんやホオジロ姉さん達の計画に、過去の自分が賛同して自ら魂の器へこの意識を転送したという事実を踏まえた上で。

「……でも」

決めてと言ったカンちゃんだったけれど、彼女は彼女で答えを決めていたのだろうか。

「でも、あなたが……あなたが生き残るということは、ウラシマも残るということだから……逆だったら良かったのに。あなたでさえなければ」

「カンちゃん」

彼女の言葉を遮る。彼女らがどれほどの決意で、どれほどの犠牲を払ってまで、事を進めてきたか。それは十分にわかっている。だからこそ。

「試してみたいことがあるんだ」

どうして、滅びを決心している俺たちに、クリオネ姉さんは自分の分身を託したのか。そしてその分身は作りあげるのに5ヶ月もかかるのか。ウラシマは簡単に、体の構築や修復をできるのに、だ。

それにこの滅びを先導していたホオジロ姉さんは最期になぜあんな言葉を。

きっと理由がある。俺たちが生き残れる方法がどこかにあるはずなんだ。

なあ、ウラシマ。ここへ俺の元の体が、他の人間達が、どうやって連れてこられたんだ?

『迷い家に入り込んだ生殖機能を有する男性のうち健康状態の良い個体を識別して転送しました』

迷い家ってのは地上にあるんだよな?

『はい』

こちら側から迷い家の方への転送って出来るか?

『番人は役目を放棄しないよう転送出来ない設定です』

その辺は想定内だ。ただ、一方通行ではないんだろ?

『はい』

条件はなんだ?

『番人は転送禁止です』

ということは、人間ならば?

『転送可能です』

じゃあ、ルルは?

クリオネ姉さんが俺に託した

このルルは、クリオネ姉さんが渡してきた情報をもとに造られた。その情報とやらの中に、人間のナニカが含まれていたんじゃないかなって。

『転送可能です』

やっぱり!

ウラシマ、この脳内会話を、カンちゃんにも聞こえるように出来るか?

『可能です』

『発声機能を生成します』

うわ、手の甲が痒い!

手の甲がみるみる膨らんでゆく。あっという間に握り拳よりも大きなコブが出来て、そこに唇が現れた。シュールだ。

「受精に使用した精子は人間のものとなります」

「受精?」

カンちゃんの表示に再び険が。

「い、いや、お、俺じゃない! 俺のじゃなくて……ほら、前に操縦してた人、た、多分だけど」

「慌て過ぎると逆に怪しい」

「え、いや、あの」

「ウソ。からかっただけ。さっきハラハラさせられた仕返し」

ああ、嘘でよかった……。

ホッとした俺の手を、カンちゃんはたどたどしく握る。

「信じてるよ……信じてる……から、怖いの。不安なの」

俺は思わずカンちゃんを抱き寄せた。今度は、

拒まれなかった。

「心音……赤ちゃんのはまだ聞こえないね」

俺の胸に耳をつけているカンちゃんの声が、俺の中に優しく響く。

「カンちゃん、それでね、試してみたいことってのはね……」




二年後。

俺は頬に久々の風を受けていた。潮の香りが濃い海風を。

目の前に広がる海は凪ぎ、太陽の沈みかけた水平線まで続く光る道を静かに描いている。

「ねぇ、もしかしてあれが……太陽ってやつ?」

夕焼けの赤から逃れるように俺の後ろに隠れていたカンちゃんが、こわごわと海と夕陽とを覗き見る。

「そうだよ」

「眩しいのは、人間の体だから?」

本当に最近はこればかり。あれから一年かけウラシマに人間の体を二つ作ってもらい、意識を移してもらってから……そこからが長かった。脳に意識が馴染むまで三週間。自力で歩いたり食事したりできるようになるまで二週間。そのあとが特に酷かった。

腸内細菌が整いきるまでが腹痛と下痢の嵐。その時にカンちゃんが初めて発した「これって、人間の体だから?」は、その後ずっと流行語大賞だ。こんなに早く走れないのは、こんなに少ししか跳べないのは、傷の治りが遅いのは、骨が脆いのは……彼女がどれだけ戦士だったのかを思い知らされる。

なんだかんだで地上で普通に生活できるとウラシマの許可が出るまで二年もかかってしまった。

「太陽は誰だって眩しいものだよ」

「そうなんだ。へぇ……あ、見て! 迷い家の入口が消える」

カンちゃんの声に振り返ると、俺たちが今出てきたばかりの昔ながらの民家が、空間を軋ませながら消えてゆく。

次にウラシマは最後の命令を実行するはず。自らを破壊して、この海の遙か奥底でひっそりと永久の眠りにつく……はずなのだ。

「ウラシマがなくなったら、この体、止まったりしないかな?」

「大丈夫だよ」

「こんなに不安になるのは、人間の体だから?」

「そうかもしれないねぇ」

カンちゃんが俺の二の腕にぎゅっとしがみつく。

「うふふ。私たち、守ってもらおーね!」

「うー」

言葉を理解しているのか、俺が抱っこしているルルちゃんも嬉しそうに相槌を打つ。

「ああ、ちゃんと守るよ」

黄昏の空にいつの間にか輝いている一番星を見つめながら、俺はそう答えた……けれど。

心の中では、これからどう生活していこうかとドッキドキである。

魂の器以前の生活のことは結局思い出せないまま。赤ん坊を連れて今夜住む所さえ決まっていない現状。

そしてもう一つ、最後にウラシマから渡されたこのどう見ても玉手箱。困ったときに開けろって言ってたけど……どうしたものか。

「ねぇ、こんなにすぐにお腹が空くのは、人間の体だから?」

待って待って。今、決めるから……まず何をするかを。


【終わり】



見切り発車からの、手探り実験企画。選択肢の視点もそこそこ定まらず、次話発表のちょいちょい遅れ等々至らない点も多々ありましたが、選択者ゼロの憂き目にも遭わずなんとか最終話までたどりつきました。

本当にありがとうございます。


では、またいつかどこかで|_・)

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