【20200214】
【読者の反応】
クリオネ姉さんとは何もないことをキッパリ主張する 0%
まず「元の姿」というワードに飛びつく 33.3%
黙ってカンちゃんを抱きしめる 66.7%
激闘の末に目玉を奪ってきた……という物語にする 0%
#ツイッタゲーム
カンちゃんが無事だったことへの喜びが一番大きかった。あとはそんなに一度に説明できないくらいに事態が複雑なこと。だからまずは抱きしめて、それからゆっくりと説明するつもりだった。
しかし、カンちゃんを抱きしめたはずの俺の両手は、払いのけられる。
「ごまかす気?」
「その姿……人だった頃のあなたによく似ている……でも違う。本当に、あなたなの?」
戸惑いと怒りの混ざった声。しかもカンちゃんの瞳は潤み始めている。それが喜びの涙ではないことは容易にわかる。
そしてもう一つわかったこと。これが俺なのだということを、俺はどうやって説明できるのだろう。
さっきまで違う姿をしていた、つまり容姿を変えることが出来る俺。過去の記憶もおぼろげで……俺は、俺であることを証明する術を何も持っていないのだ。もどかしい。あの魂の器の頃は思ったこと全部伝えられていたのに。
「懐かしいねぇ。英雄のお姿をまた見られるとはねぇ」
不意に足元から声がした。
あの美しい片目の老婦人だ。
「こんな老体を治療していただきありがとうございます」
「そ、そんな……もとはと言えば俺の不注意で……その……すみませんでしたっ」
頭を下げた俺の肩に何かが触れる。
『残存体組織を回収します』
かなり小さくなっていたかつての体と共に治療の記憶も戻ってきた。
「カメや。このお姿は、あの大戦でウラシマを操縦していたお方のお姿ですよ」
「でも……ホオジロ姉さん……この姿……似過ぎなんですよ」
「人がこの地を去ったのは遠い遠い昔。地上へ渡った人がそこで繁栄し、その血統を継いでいたとしてもおかしくはないと思います」
え、それ子孫ってこと?
俺の先祖かもしれない遠い昔のウラシマ操縦者……その人とクリオネ姉さんとの間に一体何が……って、忘れてた。子どもが何たら言ってたよね?
『生育は順調です』
続けて脳内の声が伝えてきた期間を俺の知っている単位に直すと……20週間くらい。人の半分か。
でも生育って……この男の体のどこで?
すぐに自分の脳内に、今の身体の情報が湧いてくる……子宮? 俺の身体に子宮があるの?
『取り込んだ情報より再構築しました』
どうやら俺の下腹部にはクリオネ姉さんの子宮が構築され、5ヶ月後には子どもが生まれてくるみたい……名前はルル。
え? ちょ、ちょっと待って? 俺が産むの?
「あなたもそう思うよね?」
カンちゃんの声で我に帰る。ヤバい。まるきり聞いてなかった。だってさ……俺が産むとか……他の話なんて飛んじゃうよ。しかもどこから産めるっての。
『出産可能まで生育後、産道を成形します』
そうだった。この体はどんな形をしていようが、所詮ツクリモノだったっけ。
「ごめん、カンちゃん。色々ありすぎて……先に俺の状況を説明させてくれないか? そのことで頭が一杯で、会話が全く入ってこないんだ。本当にごめん」
カンちゃんは何かを言いかけた唇を不機嫌そうに閉じる。それから大きなため息をついて……ようやく表情を柔らかくした。
「わかった。まず、聞く」
俺は、クリオネ姉さんが望んだことを、そっくりそのまま説明した。理由は聞かされていないが、このホオジロ姉さんならもしかして何か知っているかもしれないし。
すべてを話し、そして二人の反応を待っていると……地響きがだんだん近づいてくるのを感じた。
「とりあえずヤマトへ避難しましょう」
カンちゃんに続いて俺も走りだそうとしたとき、ホオジロ姉さんが俺の手を握った。というか、何かを握らせて……うわわ。目玉?
「せっかく助けていただいたのに申し訳ないけれど、私はここで……クリオネ姉さんと共に滅びます。あの子と……クリオネ姉さんの子どもを、よろしくお願いします」
「え、でも……」
とっさに出来た返答がそれ。それ以上言う前に、突如として開いた床の亀裂にホオジロ姉さんは飛び降りてしまった。
俺はといえば、反射的にその亀裂から飛び退いてしまっている。自分の不甲斐なさが歯がゆくて仕方ない。
「早く! 来て!」
そうだ。カンちゃんを守らなくては。
急いでヤマトへと走る。さっきのカンちゃんの体よりも速さや力強さを感じながら。
ヤマトの入り口をカンちゃんが開いたまま待っている。俺はそこに飛び込んだ。
「ホオジロ姉さん……やっぱり来てくれなかったんだね」
カンちゃんは俺にしがみついた。その肩は微かに震えている。
「……わかっていたはずのお別れなのに……やっぱりつらいよね」
俺の頭の中の声……ウラシマが、さっきのカンちゃんとホオジロ姉さんの会話を圧縮して再生してくれる。
本当はこの海底都市を滅ぼして、終わりにするはずだったけれど、俺とカンちゃん、そしてルルは、ここを脱出しなさい、と。
そもそもこの海底都市は、遠い過去の大戦争で使用された最終兵器を封印するための場所だった。そしてその封印を解こうとする者へ対抗するために、クリオネ姉さんの劣化版であるカンちゃん達「番人」が作られた。しかしその番人の中に兵器を使用して再び戦争を起こそうとする者が現れるとは、
さすがのアトランティス人も気づけなかったのだろう。ホオジロ姉さんやカンちゃん達、一部の番人は、この都市の支配権を獲得したアンコウ姉さんが侵略を開始する前に、この都市をすべて、自身も含めて破壊するはずだったのだ。
魂の器に入る前の俺も、それをわかった上で協力したようだ。
「ねぇ、今でも一緒に、滅びてくれるつもりはある?」
カンちゃんが俺にしがみついたまま言った。彼女の吐く温かい息を耳元で感じる。
「もう、わかんなくなっちゃった……お願い。あなたが決めて」
カンちゃんの口にする言葉こそは投げやりだけど、その奥に、固い、強い、意志を感じる。
【選択肢】
・一緒に滅びよう。
・一緒に生きよう。
・ルルだけは生き残らせよう。
・一緒に世界を征服しよう。




