プロローグ:壊れゆく世界に君は居ない
初めてなので色々ミスがあるかと思いますが、どうぞよろしくお願い致しますっ!
いつからそこに居ただろう。
俺は時間という概念を忘れる程、その光景を眺めていた。
―――世界が終わる。
どうしてこうなった?
どこで選択を間違えた?
思い出せ、俺……。
今日は普通に学校に行って……あれ……?
「ユキ……?」
ポロリとこぼれた涙と共に、今日の事が走馬灯のように思い浮かぶ。
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俺の名前は黒鉄刃。17歳。私立桜ヶ丘高校、というところに通う高校二年生だ。
そして……
「おーいクロくーん!」
「ゆ……白咲さん。学校ではその名前で呼ぶなって言っただろ?」
「いいじゃん! クロくんのけちんぼ!」
ぶー、っとふくれっ面で怒る彼女は“白咲雪奈”。俺の幼馴染で俺とは恋人関係にある。
「まあそう怒るなって……」
「ふーんだ、クロくんが私のことユキ、って呼んでくれるまでキミのこと“黒鉄さん”って呼ぶから!」
「はぁ、分かったよ。ユキ……。これでいいだろ? もう許してくれよー」
「んふふー、もっともっとー! もっと呼んでー?」
「ユキ」
そう呼びながら頭を撫でてやると、満面の笑みで応えてくれる。
何だこの可愛い生き物は!
「今日も一緒に帰ろーね! クロくん!」
「ああ」
素直に“可愛い”って言えない自分がもどかしい……。
そう思いながら、俺たちはそれぞれのクラスに向かった。
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キーンコーンカーンコーン
授業終了のチャイムが鳴る。あー!やっと帰れる……。
さて、ユキを教室に迎えに行くか。
約束すっぽかしたら、あいつ絶対怒るからな……。
そんなことを考えながらユキの居るクラスへ向かう。
「ゆ……白咲さーん、居るかー?」
「クロくん!」
そう言ってユキはこちらへ駆け寄ってくる。
「お待たせー!」
んふふ、と笑いながら駆け寄ってきた。
くそ、可愛いな。つい頭を撫でてしまう。
「えへへ〜、やめてよ〜。皆の前だし……」
照れた表情も可愛い!だがそれは言葉には出さない。直接言うのはちょっと照れくさいからな……。
「そんじゃそろそろ行くか」
「うん!」
クラスを出るとき、後ろで「クソっ!あいつらいつもいつもイチャイチャしやがって……!」とか、「あれで付き合ってるの隠してるつもりかよ!この野郎!」とかいう嘆きに近い言葉が聞こえてきたが、全力で無視した。
……てか、バレてたのか?上手く隠してたつもりだったんだが……。もっと上手い隠し方を考えないとな。
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帰り道は他愛のない話をしながら帰った。
ユキが「〇〇ちゃんとさ〜」とか、「〇〇先生の授業がね〜」みたいな、今日あった出来事の話をしていた。
すると途中で話を切り上げたユキは突然こんなことを聞いてきた。
「ねーねー、今日この後クロくんち寄ってっていいー?」
「なんで?」
「んー? なんとなく」
なんとなく、って……。まあ断る理由も無いしな。
「別にいいぞー」
「やった!」
ふんふふーん、と鼻歌を歌いスキップしながらユキは先を行く。
そして、突然立ち止まったかと思えば、
「やっぱり私、クロ君が好き!」
振り返って、そう言ってくる。
「唐突だな……。ははーん、さては何か企んでるな?」
「ううん? 何も企んでなんかないよ。ただね、この気持ちを伝えたかっただけなの」
「そ、そうか。そう素直に言われると、普通に照れるんだが……」
「えへへ、照れてるクロ君かっわいい〜!」
うりうり〜とほっぺたをつついてくる。
ああ〜もうかわいいなぁ!てかくすぐったい!
「やっ、やめてくれよ! めちゃくちゃ恥ずいんだぞ! 好きな奴に、唐突に好きって言われるの、まじで顔が沸騰するくらい恥ずいんだからな!」
「えへへ、ありがとね? クロ君。私はね、何があってもクロ君のことを信じ続けるから。だからね……」
「だから……?」
「……なっ、なんでもないの! えへへ〜、昨日見たドラマのせいで変なこと言っちゃったのかも!」
「そうか? ならいいんだが……」
深くは聞けなかった。何故か、ユキの目が俺じゃなく、何かとても遠いものを見ているような……そんな気がしたから。
そんなこんなをしてる内に、俺の家が近づいてきた。
次の交差点の曲がり角を右に行けば、すぐ俺の家だ。
「ふんふふーん♪」
ユキは上機嫌に角を曲がった。
―――筈だった。
「きゃぁぁぁぁぁあ!!」
ドンッ!
辺りに鈍い音が響く。
「ユ……キ……?」
ユキは道に倒れていた。その横には建物の壁にトラックが追突していた。
何が起こった……?
トラックに轢かれた……?そんな、さっきまではトラックなんて見えなかったのに?
この曲がり角は視界の邪魔になる物が無い、見通しのいい道だった。
もちろんトラックはおろか、車すら通ってなかった筈だ。なのに、何で……。
「ユキっ!」
そうだ。今はそんな分析をしてる場合じゃない。早くユキを助けないとっ!
「クロ……くん? あはは、また私ドジっちゃったかな……? 体が動かないや……」
頭から、頭から血が……!早く、早く助けないと!
「いいからもう喋るな! すぐ助けを呼んでやる! だから……だから……!」
「えへへ、ごめん……ね? 私のせいで、また……迷惑かけちゃって……」
そう言い残して、ユキは目を閉じた。
大丈夫。まだ息はある。早く助けを呼ばないと。そう思い、ユキを見る。ユキの表情は、笑っていた。
何で……何でこんな時でも笑ってるんだよ……。
俺は助けを呼ぼうと、スマホを取り出した。
スマホのロックを解除した時、辺りに男の声が響いた。
「助けを呼ぶ必要はありませんよ」
「だ、誰だ!」
「ウフフフ、私は……そうですね。皆からは“聖王”、なんて呼ばれてる者です」
後ろから声が聞こえた。
すると、スッと後ろから仮面をつけた男が現れ、ユキの方へ向かって行く。
こいつ、どこから現れた?さっきまで周りには誰も居なかった筈だ。
だとしたら、急に俺の後ろに……?
「やっと見つけましたよ。我らの、いや“私”の聖女様」
「聖女? 聖女だか聖王だか知らんが、訳の分からない事を言ってないで早くユキを助けてくれよ! じゃないと……!」
「ええ、もちろん助けますよ。聖女様に死なれてもらっては困る」
そういいながらその仮面の男はユキを脇に抱える。その時男は何か小さな声で言葉を発した。
そしてその直後ユキが緑色の光で包まれた。
なんだ……あれ。
「おい、何をしている? その緑色の光は何だ!」
「ウフフフ、ただの回復魔法ですよ」
魔法……?それって……。
「それではそろそろ退散させていただきますね。あまり長居は無用ですので。さようなら、黒の力を持つ者よ」
「は……黒の力? って、あ、おい! 待て!」
そう言い残して、そいつは一瞬で消えた。
黒の力を持つ者……?それに、魔法?まるで意味が解らなかった。
ただ解るのは、ユキが攫われたという事実だけ。
何でだよ。何であいつが攫われなきゃいけないんだ。
ユキは助かったのか……?無事なのか……?生きてるのか……?
ピキピキ、と音をたてて俺の中で“何か”が壊れていくのを感じた。
「あぁ……ああぁ……うわあああああああああッ!」
そしてこの叫びは誰にも届く事無く、俺はただ一人、誰も居ない静かな交差点で立ち尽くしていた。
誤字脱字報告、改善案、追加案等何かあればどしどし意見ください!