朱雀の意地(5)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の転機の物語。
が、ドラコスラッシャーと何かがぶつかる音はしたが、痛みも何もない。当然、呼吸も心音もしっかりしている。
おかしいと思った朱雀がそうっと目を開けると、自分の目の前で予想外のことが起こっていた。
「……デミ・ミュータント能力を甘く見ていた。まさかこんな芸当までできるなんで……」
玄武がそう言ってしまうのも仕方ない。
京士郎は、青龍が全力で仕留めようと振り抜いたドラコスラッシャーを、なんと噛んで止めていたのである。
『なんなのあいつー!』
「剣菱京士郎……悪夢の権化にでもなったつもりか?」
全員が絶望にかられる中、鬼から悪夢に変貌した京士郎は、口からドラコスラッシャーを離した後、馬鹿力で朱雀の尾翼を引きちぎって拘束を解き、鬼光を上へ斬り上げて朱雀の肩を力任せに斬った。
こうなってしまっては、最早朱雀に勝ち目は無い。戦闘不能である。
それを見兼ねて青龍は、
「よく頑張ったね。朱雀。あとは僕に任せて」
と、優しい言葉をかけ、選手交代した。
獅子と白虎に連れ添われて退却した朱雀は、ペガサスの治療を受けていると、黒猫と未来が険しい目をして彼女を見つめていた。
「散々だったね。朱雀」
「黒猫……そこは仲間として健闘を讃えてぇや」
「残される人の気持ちもわからず、あんな行動をとったあなたを誉めると思ってるの? ま、私なんかより彼女の方がキツいことを言うだろうし、ビンタの1発ぐらいされるかもしれないけど、それぐらいは覚悟しておいてね」
黒猫にそう言われて了解した朱雀は、そこからしばらくの間、未来から長々とお説教をくらった。自分のことをかけがえのない友人だと思っている彼女から。
その様子を横目で見た青龍は、決死の思いで頑張ってくれた朱雀のためにも、ここは死に物狂いで挑まなければいけないと思い、あえて余裕ぶってから京士郎との最後の戦いを始めた。
朱雀もよく頑張りましたが、相手が悪すぎました。
なにせドラコスラッシャーを歯で止めて、朱雀の尾翼を力任せに引きちぎるような男でしたから。




