朱雀の意地(4)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の転機の物語。
翔馬が彼女のために作った武器・朱雀の尾翼。それは電気信号を受信した本体から、超強力な釣り糸と硬質の釣り針計10本を射出し、対象を縛る捕縛武器。
これ自体の殺傷能力は高が知れているし、目標に近付きすぎると使用者にも針が食い込み、一緒に縛られてしまうのが難点だが、一度捕縛するとなかなか抜け出せない代物である。
それを承知の上で零距離で自分ごと縛られにいった朱雀は、針の痛みを堪えて意を決し、
「今や青龍! うちごと、こいつを輪切りにしたれえっ!」
と、大声で指示を出した。
彼女の命懸けの指示を受けた青龍は、その意志を汲み取り、
「朱雀……わかった。今まで……ありがとう」
と、涙ながらに礼を言って、ドラコスラッシャーを構えた。
それを間近に見ていた一般人である未来は、自ら死を選ぶ朱雀とそれを尊重する青龍の選択を否定し、思い留まるよう説得しようとしたが、黒猫にそれを止められてしまった。
「あなたは黙ってて、未来さん。これが殺人者というもの。殺人者は時として、仲間を殺める非情さが求められる。今がその時なの」
「けど、だからって!」
「受け入れられない気持ちはわかる。けど、雲雀さんは相当の覚悟があって、この選択を選んだ。それを責める方が無粋ってものよ」
そう言われて未来は引き下がったが、やはり素直に割り切ることはできなかった。
心の中で別れを告げる者。諦めきれない者。ただ決着を望む者。自分の周りにいる彼らの想いと、朱雀の気持ちを感じ取った青龍は、悲しみを力にドラコスラッシャーを振った。
(まだしたいことがぎょうさんあったけど、龍に殺されるんやったらえぇわ。待っとってな。人兄ぃ。うちも今、そっちに行くから……)
愛する者の刃が迫る中、朱雀は心の中でそう呟いて瞼を閉じ、静かに己の死を待ち続けた。
未来を止めた黒猫ですが、彼女も内心賛成しかねていました。プロ故、口出ししていませんでしたが。
そんな反対意見がある中自らの死で京士郎を殺そうとする朱雀。
ヒロインの一角である彼女の生死はドラコスラッシャーが握っています。




