成すべきことのために(6)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の転機の物語。
完璧に見切って止めた龍の行動に、命拾いした源士郎や周りにいた者達は感嘆しきっていたが、止められた柚の方はやはり不愉快でしかなかった。
「……龍君。邪魔しないで」
「それはできない相談だよ。猫宮さん」
「……ちょっとでも気を許した私がバカだった。結局あなたも、私の敵だったのね。」
「ふっ、そうなるな。忘れたわけではあるまい。この男は、お前の大切なものを失うきっかけを作った男。それと分かり合うなど、元々不可能だったんだ」
助かったのをいいことに源士郎が好き勝手に言うのを聞いた龍は、彼に背を向けたまま、
「少し、黙っててくれませんか?」
と言いながら、強烈な殺気を放った。さしもの源士郎も、至近距離で彼の殺気をまともに受けたことで畏縮したらしく、口を閉ざした。
「勘違いしないでください。誰が好き好んであなたなんかを守りますか。あなたも僕と同じようにその命を以て、罪を償わなければなりません」
「ならば、何故?」
そう尋ねられた龍は殺気を抑えて、柚と真っ向から向き合った。
「……猫宮さん。先生の言うとおりだよ。ここはそんな事をする場所じゃないし、今は僕らで殺し合いをしてる場合でもない。そうだろう?」
「けどっ!」
「憎いのはわかる! 恨んでるのもわかる! 殺したくて身を引き裂かれそうな気持ちなのもわかる! けど、今は堪えて。僕らを殺すのは、この一件を終わらせてからだ」
龍の必死の説得を受けた柚は、少し考えてから了承し、源士郎殺害を中断することにした。
「ありがとう。わかってくれて」
「その代わり、これが終わったら、2人共覚悟してね」
冷静さを取り戻した柚からの殺害宣言を受けて、源士郎は態度を改めずに軽視していたが、龍は彼とは真逆で真っ直ぐな目をして頷いた。
その贖罪の気持ちと誠実さは、命懸けで彼女を止めたあの時から何ら変わっていない。
復讐の対象となりながらもその相手のことを思い、尚且つ今置かれてる状況を考慮する。
普段はボケーッとしてる彼でも仲間の心を察する能力は多少なりとも持ち合わせているようです。




