愛と美の在処(2)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の転機の物語。
別れの地にて繰り広げられる師匠と弟子の命を賭した戦い。
降りしきる雪の中、朱雀と人志の死闘は吹雪のように激しさを増していった。
熟練された腕と意表を突いたニードルの扱いでトリッキーに攻める人志に対し、朱雀はパワーでは負けると判断し、自慢の手数とスピードを駆使した真っ向勝負を挑んだ。
もちろん、師匠である人志の方が技量、戦法の相性の面から見ても分があったが、朱雀はなんとか食らいつき、戦況を互角に近づける。
そんな朱雀が歯痒く思ったのだろう。人志は9年間積もりに積もった愛憎を彼女にぶつけた。
「なんで挑戦状を送りつけたと思う? それは君が憎いからだ! 僕をイカレさせた君が人を愛してることが!」
「なんでそんなんわかんねん!?」
「わかるんだよ。愛されなかった者だからこそ、他人の愛情が手に取るようにわかる! サーカス団時代の僕らには友情や絆はあっても、愛は無かった。だってそうだろ? 僕らは捨て子だったから、愛なんてものは知る由もない!」
人志の言うことに一理あると思った朱雀は、自分を売り飛ばした親を思い出し、腸が煮えくり返った。
しかし、人志はその何倍も怒っている。
「なのに、僕と同じ愛を与えられなかったはずの君が、人を愛してる! そこの青龍をっ!」
人志に名指しされた青龍は、朱雀が自分に恋愛感情があったことを知り、一驚した。
「その証拠に、9年前の方が動きが鋭い。純粋な殺人欲求が、愛で薄れてしまっているんだ。そんなの君じゃないっ!」
そう言って人志は、朱雀のブレードトンファーを払い飛ばした。
「だから……死ね! 雲雀ーっ!」
打つ手が無くなった朱雀は、トドメを刺そうとする師匠を前に観念した。
朱雀のピンチです。
サポートである青龍があなたなら、このあとどうしますか?




