ハッピー&アンハッピー(2)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の転機の物語。
数分後。スナイパーライフルを没収されてしまった黒猫は、両手に手錠をかけられ、柱に縛りつけられてしまった。
普段の彼女なら、長崎でもやったブラック・ナイト仕込みの縄抜けの術で、難なく抜け出せれるのだが、弱体化している上、大勢に取り囲まれている現状では、そうするわけにはいかなかった。
そうこうしていると、部下を引き連れた照彦が、バカにしたような表情で現れた。
「おぉ。お前か。俺を殺しにきたっていう間抜けな猫ってのは。まさかこんなお嬢ちゃんだったとはなぁ。名は何ていうんだ?」
彼にそう言われて黒猫は返す言葉が無かったが、一応自己紹介し、照彦が元陸軍大佐で今はテロ組織のリーダーであることを知っていると話した。
「ほう。やはり知っていたか。ま、殺しに来るぐらいだから、当然と言えば当然だな。なら、教えてくれるか? お前達死獣神の依頼者が誰なのかを」
「ターゲット相手に、そう易々と口を割ると思いますか?」
そう聞き返すと、照彦は容赦なくボディーブローをくらわせた。
「がはっ! げほっ、げほっ!」
「嬢ちゃんの言うとおりだが、立場を考えろ。お前に主義主張を言う権利なんか微塵も無いんだ。わかったらさっさと答えろ。でないともう1発ぶん殴るぞ」
そう脅しをかける照彦に対し、黒猫は苦しそうにむせていたが、何故か笑みを浮かべていた。
「その程度で拷問のつもりですか? だとしたらぬるいですよ」
余裕を見せる彼女の顔に、照彦の部下達はざわついたが、黒猫からすればこの程度、拷問の内にも入っていない。
その答えを一言で言うのなら、黒猫はかつて、拷問のプロに与えられるコードネーム・蠍を名乗っていたからである。
彼女の手にかかれば、その頃に得た知識で相手の性別や性格、年齢や経歴等から拷問プランを瞬時に考え、数十通りある手段から最も効率のいいものを対象者が口を割るまで行う。
その知識と手段の豊富さだけでも十分なのだが、彼女の場合それプラス、『拷問を行う者は拷問に屈してはいけない』というブラック・ナイトの教えから、自身も8歳~今まで身を以て拷問を経験し、それを糧にして覚えるという想像を絶するような訓練を受けている。その過程で何度も骨折や出血をし、処女も失いながら。
そんな地獄のような訓練を経て、どんな苦痛を受けても口を割らなくなった彼女からすれば、拳で屈服させるなど痛くも痒くもなかった。
「そうか。つまり、もっと痛くしてほしいんだな。若いくせしてドMとは、なかなか残念な嬢ちゃんだな。わかった。なら望み通りにしてやろう。言っておくが、今更泣き叫んでも手遅れだぞ?」
「御託はいいので、やるならどうぞ。何をされても私は屈しませんので」
黒猫のその言葉に挑戦するように、照彦は指示を出して部下に彼女を襲わせた。
拷問に耐える訓練は蠍の名を継ぐ者の伝統で、先代蠍だった彼女の母・黒揚羽もそれを受けました。
ちなみに、黒猫の処女を奪ったのは、女性に対する拷問という名目で犯した黒龍です。
一応言っておきますが、8歳の幼女にそういう行為をするのは犯罪ですし、そうでなくても強姦や拷問は重罪です。




