ハッピー&アンハッピー(1)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の転機の物語。
午後4時半頃。黒猫はペガサスにスナイパーライフルの運搬と現地への移動を頼み、彼の瞬間移動能力で、ターゲットである元陸軍大佐岩佐照彦のアジト付近の狙撃ポイントに到着した。
友のせいでこうなったことに、ペガサスは心を痛めていたらしくサポートを申し出たが、強情な黒猫にキッパリと断られ、エールだけ送って去っていった。
黒猫は彼を見送ると、セッティングしてくれたスナイパーライフルのスコープを覗き込み、引き金に指をかけ、
「さてと……なんとか1発で仕留めないと。今の私じゃ、撃鉄すらロクに引けないし。それにしても、ついてないなぁ。こんな状態じゃなきゃ、楽な仕事だったのに」
と、ブツブツ愚痴を言った、
が、やはりプロの自覚はあるらしく、神経だけは研ぎ澄ませていた。
あとは照彦の頭に撃ち込むだけ。そう思っていた矢先、寒い北風が吹き荒び、風を受けた髪に鼻をくすぐられた。
寒さと髪で我慢できなくなりくしゃみをした黒猫は、その勢いでつい引き金を引いてしまった。
弾は大きく逸れ、さらにはくしゃみの反動で、彼女はスナイパーライフルごと狙撃ポイントである4階建てのビルから落下した。
何回か受け身をとったことで大怪我こそしなかったが、屋根から屋根へと転がった黒猫が、とある倉庫の天井を突き破って落ちた場所は、照彦が所有している武器庫だった。
大きな音と共に、銃を持った少女が落ちてきたことに、照彦の部下達は初めは動転したが、持っていた物から侵入者だと判断し、照彦に連絡した。
そんな彼らの対応に、色々しくじった黒猫は苦笑することしかできず、
「は、はは……今日は、厄日……みたいね」
と、言ったあと、照彦の部下に捕まり、すぐ近くにあるアジトへと連行されてしまった。
元あといえば翔馬のせいですし、よく生きてたなといった感じですが、これだけ災難が続くと、呪われてるとしか言いようがありません。




