黒猫の災難(4)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の転機の物語。
午後1時。死獣神メンバーと未来と美夜と宙は屋上に移動したが、体力もがた落ちになってるせいか、柚は階段4階分上がっただけで、息切れしていた。
「大丈夫? 柚さん」
「そう、見える?」
気遣う未来にそう聞かれたが、余力が無いせいか柚は学校でのキャラを演じる余裕すらなかった。
「で、先輩。なんであんなもん作ったんすか?」
「あんなもんとは失礼だな。見ての通りいい出来だろ?」
「私はモルモットか何か?」
「勝手になったのはそっち」
柚の文句に翔馬は人差し指で彼女を差しながらそう言い、話を続けた。
「まぁ、理由は個人的理由って奴だ。みんなにゃわりぃが、別に『死獣神の為』ってわけじゃねぇ」
「あっそ。それで、個人的理由っていうのは?」
武文にそう聞かれて、翔馬は悪びれもせず、アンコ型弱体化剤製造の動機を語った。
彼いわく、恋人や元カノ、さらには性欲過多な柚を含め、いつでもどこでも気が済むまで女子とシタい。
だが、3人にその気が無ければ力ずくで拒まれるし、ヘタをすれば集中治療室行きになってしまう。
そこで開発したのがあの薬だった。これをアンコと偽って投与すれば、拒否されたところで抵抗できないし、色んな場所で色んなことができる。
そんな性欲の塊らしい理由を聞いた龍達は呆れ返った。
「あんたの頭ん中はそれだけか」
「その努力。もっと別のところで活かそうよ」
「はっはっは! やっぱそう言われっか。けど、俺は改めねぇ。ゆくゆくは校内の美女全員にこれを使って、レッツパーティ! といこうかと……」
鼻の下が伸びきった翔馬の暴走した妄想は止まらず、このままだと乱用しかねない勢いだった。
そんな翔馬に、案の定天罰が下った。
「幻・魔・龍ーっ!」
その言葉と共に放たれた赤紫色の龍型斬撃波が、翔馬にクリーンヒットしぶっ飛ばした。
斬撃波が飛んできた方を向くと、そこには水色のショートヘアーをした長身のクールビューティーと緑色の猫っ毛をしたボーイッシュな美少女がいた。
前者は翔馬の元カノで、半龍半人の創世神・生川零。
もう1人は今の恋人であり、その技をした半妖の河合恋である。
「あ。河合さん達。いつからそこに?」
「武文が理由を聞こうとしたあたりから。翔馬ー。あんた何してるのかと思ったら、そんな事しようとしてたの!?」
恋から強烈な一撃をくらい、威圧感たっぷりに凄まれた翔馬の戦意はすでに挫かれていた。
「そんな物使わなくても、私達は抵抗しないよ」
「いや、ドMの零はそれでいいかもしんねぇけど、万が一拒否られたら……」
「だとしても、無理矢理力奪うとか普通に考えてナシでしょ! ともかく、お仕置きするからこっち来て」
そう言うと、恋は零と共に翔馬の手を掴み、
「じゃ。私達はこれで」
「柚ごめんねー。翔馬が迷惑かけて。ほら、行くよ」
「ふぁーい」
と、言って翔馬を連れて行かれる宇宙人のように引っ張りながら屋上から出て行った。
ようやく明らかになった翔馬の今カノと元カノ。
彼女達も後の作品にちょくちょく登場します。




