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黒猫の災難(3)

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の転機の物語。

 そうとは知らない柚は、アンコもどきの一部を持ったまま教室に帰り、いない間に起こっていたことを美夜から聞きながらうどんを一気に平らげ、アンコもどき入りの容器を開けた。


「ん? 何や柚。そのアンコ」


「理科室でみつけたの。翔馬君が作ったんだって」

 翔馬が逃げた理由が真実だと知った龍達を気にせず、柚は鯛焼きに合うかどうかアンコもどきの味見をした。


 口に広がる程良い甘味とちょうどいい小豆のつぶつぶ感。

 鯛焼きにする為に生まれてきたような上質なアンコとの遭遇に、柚は満足そうな表情で饒舌に食レポした。


「へー。そう言われると、僕も一口食べてみたい」


「龍君にはあげないよ」

 柚にそう断られて龍はやっぱりといった感じで肩を落とした。


「けど、猫宮さん。それだけ美味しいと我慢するのも難しいのでは?」

 澪にそう言われて柚は図星と思って我に返り、苦悩した。

 彼女の新たな一面に新鮮さを感じ、温かい目をする龍達など目もくれず悩み抜いた柚は結局、レンゲ1杯分のアンコもどきを口に入れ、至福の笑みを浮かべた。


 と、そこへ、製作者が血相を変えて戻ってきた。

 もちろん。理由はアンコもどきの件である。


「おい! 誰か柚ちゃんが持って来た俺特製アンコ型弱体化剤を食っちまった奴、いるか!?」

 そう。あのアンコもどきは、見た目も味も匂いもアンコそっくりに作られた薬品だった。


「え!? アンコ型弱体化剤?」


「あぁ。食った瞬間、人間の3歳程度の身体能力まで弱体化させる薬なんだ。柚ちゃん! 誰かにやったか!?」

 翔馬にそう問い詰められた柚は、口元にそれを付けたまま、まばたきを2回した。


「……って、その口に付けてんのって、まさか……」

 その言葉に柚は苦笑いし、翔馬もそれに合わせて作り笑いを浮かべる。

 少しの間笑い合っていた柚だったが、一段落つくとふーっとため息をつき、


「……ふにゃーっ!」


「何やってんだバカネコーッ!」

 教室中の者に総ツッコミを入れられた本人は、誰よりも驚きの声を上げた。

 はい。災難直撃しました。

 おいしかっただけにこれはショックでしょうね。

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