愛するということ(5)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の転機の物語。
この絶体絶命のピンチの時に、冷静な鳳凰は朱雀に尋ねた。
「……朱雀さん。1つ確認しますが、あなたは私のサポートですよね?」
「はぁ? こんな時に何言っとんねん!」
「サポートですよね!? サポートは、権利者が指示を出したら、それに従うんですよね!?」
そう聞かれて、朱雀は舌打ちしつつも肯定した。
「だったら、私に従って下さい」
そう言うと鳳凰は、気を落ち着かせ、暗闇に意識を集中した。
数秒後、鳳凰はタイミングを見極め、
「朱雀さん。後方、右斜め上……今ですっ!」
と、指示を出した。
彼女の指示に従い、朱雀は忠実にブレードトンファーを振った。
すると、見事に命中し、貞代の体を斬り裂いて、致命傷を負わせた。
仰向けに倒れ、何が起こったのか貞代がわからずにいると、歩み寄ってきた鳳凰に、光の力で邪悪な殺気を読み的確に指示を出したと説明された。
明らかな完全敗北に、貞代は死を目前にして悔しさを滲ませ、
「悔しい……私は、もう……男達と……愛し、合えないのね……」
と、呟いた。
その言葉に、鳳凰は冷淡に反論した。
「愛し合う? それは違います」
「ん……?」
「あなたは愛してただけ。エゴや狂気に似た独占欲という名のねじ曲がった愛で、好きな人を強引に縛っていただけです。だから、あなたは愛されなかった。本当に愛されていれば、男の人達はみんな、あなたの元から去っていません。貞代さん。あなたの愛は、独り善がりの危険な片思いです」
年下の小娘に論破され、自身の愛情を全否定された貞代は、彼女に対し冷笑した。
「知った風なこと言って…………そこまで言うのなら……あなた達は愛されたの? 独占しようとしたことが無いの……? 言ってみなさい。この……クズ…………ふ、ふふふ……ふふふふふ………………」
勝ち誇ったかのように笑う貞代の態度と負け惜しみに、2人は怒りを覚え、笑い続ける彼女を黙らせるように、レーザーガンとチタン針を撃って、トドメを刺した。
翌日の午後6時半。龍のために雲雀と共同で料理を作っていた澪は、貞代の最期のことについて深く考えていた。
彼女の言うとおり、龍はこれまで本心を示しておらず、本当に愛されてるのか今回の件で疑問が生じた。
何より、2つ目に聞かれたこと。雲雀とよく取り合いになるほど独占欲が強い自分に、あの言葉は1番痛かった。
結局のところ、澪は貞代と同類だったのである。違いがあるとすれば、好きな人を手にかけていないだけで。
彼女と同じ末路を辿るまいと自分を戒めた澪は、心の中で願った。いつか龍に愛される日が来ることを…………
余談だがこの日、龍は2人が作りすぎた料理を、わんこそばかコース料理のように次々と食べさせられ、満腹になっては澪の能力で消化能力を高められてまた食べを繰り返した。
そのせいで翌朝、龍は胃もたれし、体重も大幅に増量してしまった………………
結局のところ、日本人の恋愛はそういうものです。
誰しも好きな人を独り占めしたいし、好きな人に浮気をされたら腹が立つ。
一夫多妻の国でない限り、人間は独占することで恋愛しているのでしょう。
今回のタイトルはいわば、澪と皆さんへの問題提起です。愛することは必ずしも独占するということではないんじゃないでしょうか?
ちなみに天国と地獄は近親婚及び一夫多妻はアリです。




