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愛と美の在処(1)

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の転機の物語。

 自分の悪癖のせいで鶉達を死なせたあの事件を想起し、リラックスする気分ではなくなった雲雀は立ち上がり、浴場から出た。


 体と髪を乾かし、服に手を伸ばそうと脱衣かごの中を覗くと、携帯電話のライトが点滅しているのが見えた。死獣神サイトからのメールである。

 その内容を確認した雲雀は、顔を強張らせた。殺し屋殺し・人志からの挑戦状である。


 急いで服を着た雲雀は、メールに気付かず呑気に卓球している2人を連れて、人志が指定した登別郊外にある彼の家へと向かった。



 約30分後。朱雀を先頭に彼の家に入ると、そこには多種多様の操り人形が飾られており、雲雀の家とは違った異様さを放っている。

 その一室の中心にピエロ姿の家主がいた。


「来たったで、人兄ぃ。しっかし、こんな人形だらけの家に住んどったとはな。これ全部あんたの趣味か?」

 朱雀の問いに、人志は一部否定した。


 この人形達は全て、彼が殺した殺し屋達をモデルにしている。そのため、このコレクションは言わば趣味であり、9年間求め続けた理想の一端でもある。

 そうまでして求める理想。それは至高の美の追求であった。

 彼は殺しの中でしかそれを見出せない異常者であり、これだけの数の人を殺しても、まだそれを見つけることができていない求道者でもあった。


「せやのに、うちら相手に寄り道か。上等や。表出ぇ。人兄ぃだけはせめて、うちがこの手で殺す!」

 弟子のやる気を嬉しく思った人志は快諾し、場所を移した。



 人志が選んだ決闘の地、そこは彼らが再会した松の木がある原っぱだった。


「皮肉なものだね。9年前仲間だった僕らがここで別れ、敵として再会するなんて。覚えてるだろう? 雲雀。逃げ惑う団員が誤って倒した調理器具でテントが大炎上し、みんな死んだあの日を」


「あぁ。よう覚えとる。あん時から、うちもあんたもイカレた殺し屋になった」


「イカレさせたのは君だよ。離れ離れになる時に君が僕に向けた、どんな刃物より鋭く力強い目。それを見た瞬間、僕の自我は崩壊してしまったんだ」

 自分のせいで師匠がそうなった。その気持ちは理解できるが、敵と見定めた相手に同情する朱雀ではない。


「さぁ、始めようか。どちらか一方のラストステージを」


「それはあんたの方や! 人兄ぃっ!」

 そう言ったあと2人は駆け出し、最初で最後の師弟対決を始めた。

 今回、青龍はサポートです。

 それを念頭に置いてご覧ください。

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