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愛するということ(1)

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の転機の物語。

 平成18年1月25日午後10時半頃。大阪市内のとある路地裏を歩く2人の影があった。


 1人はせっかちそうに大股かつ足早に歩き、その後ろをもう1人が小さい歩幅で必死についていっていた。


「ちょっと、歩くの早すぎます。もう少しペースを合わせて下さい。ほんとにもう、ガサツなんだから……」

 後ろから聞こえた文句に、前を歩いていた人物は我慢の限界に達し、ピタッと足を止め、振り返った。


 そこには、怒りの対象である鳳凰がジトーっとした目で立っていた。


「何か? 早く進んで下さい」


「わかっとるわ、ドアホッ!」

 そう怒鳴って朱雀は、進行方向を向き直したが、イライラと屈辱で腸が煮えくり返っていた。



 その原因はちょうど1週間前の出来事にある。


 いつものごとく、依頼を受けようと自宅のパソコンで死獣神サイトを見ていた雲雀は、送信された指令内容に目を丸くした。


 そこには、鳳凰こと澪が殺人の権利を獲得し、彼女の希望で雲雀を強制的にサポート役にするということが書かれていた。


 殺人経験も無い澪にこき使われることに納得がいかない雲雀は、事情を聞くべく、家で柚に襲われながら未来と澪とお楽しみ中の龍の家に乗り込んだ。


「龍っ! あれどういうことや!」


「あれって……あぁ、あれ? 澪さんが『パソコン使いたい』って言うから、翔馬君から1台貰ったんだけど、それがどうかした?」


「『どうかした?』ってレベルちゃうわ! このドアホ龍がーっ!」


 そう言って雲雀は、役に立たない龍に飛び膝蹴りをくらわせ、1発KOにした。


 龍では話にならないと思った雲雀は、武文に電話で抗議したが、彼からすれば、澪もれっきとしたメンバーであり、依頼さえこなしてくれれば、誰がやろうが、誰に不満を抱こうがノープロブレムだった。


 そんな見解に怒りが募る一方の自分を見て、龍特製のプリンを美味しそうに食べ、ざまぁみろと言わんばかりの嘲笑を澪にされれば、1週間で怒りを鎮めるなど、到底不可能である。


 そんな経緯があり、彼女達一触即発コンビは今に至っている。


「ていうか、アホデコ! あんたどういうつもりやねん!? 殺人能力皆無なくせに、権利強奪して強制サポート要請って! 嫌がらせのつもりかっ!」


「そうですね……その件につきましては、はっきり言って……」

 怒りをぶつけてくる朱雀に、鳳凰は考える素振りをしながら彼女の前に出て振り向きこう言い放った。


「嫌がらせです。掛け値なく、純粋に」


「よっしゃー! 殺したるっ! マジで殺したらーっ!」

 悪意のこもった明確な宣戦布告に朱雀は完全にブチギレ、この場で殺してやろうかとさえ思った。

 今回は鳳凰がメインの話です。

 彼女の嫌がらせで始まった合同の仕事。一触即発コンビなだけに、先行きはかなり不安です。

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