chat noir (2)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の転機の物語。
するとどこかから、
「私からもお願いします。黒猫様」
という、声が聞こえてきた。
聞き覚えのある声に振り向くと、物陰から黒猫のことを良く知る人物である黒蛇が姿を見せた。
彼の登場に龍達は驚き、警戒したが、黒蛇が現れたのは別の用件だった。
「黒蛇さん! どうして?」
「もしもの時を思い、あちらで待機しておりました」
「そうじゃなくって! どうして……?」
右腕として支えてくれている人物の意図がわからず尋ねる主に、黒蛇は穏やかな口調で理由を語った。
ご存知の通り、彼は何よりも黒猫の幸せを願っていた。
それは司令としての幸せではなく、1人の普通の少女としての幸せだった。
その為には人類の発展という目的を掲げるブラック・ナイトにいるより、同世代の友人といて、当たり前の時間を過ごしていた方が近道だと、今回の一件で痛感したんだそうだ。
「……つまり、私はお払い箱、ということですか?」
「悪い言い方をすればそうなります。それに、影達へは便宜上、『今回と黒柴さん達を死なせた作戦の諸々の責任をとった』と伝えますから、結果的にそういう扱いになるでしょう。ですが、これも柚様の幸せを願ってのことです。無論、それは私だけの願いではありません。朔馬達もそうですし、亡きご両親もそう思っているはずです」
「パパとママも?」
「はい。子の幸せを願わない親などいません。ですから、柚様。どうか幸せに生きて下さい」
部下として、そして1人の責任ある親として黒蛇の願いを聞き、黒猫は少し不安に思った。
亡き親が本当にそう思っていたとしても、さっきの今で生き方を変えることは、強情で分からず屋な彼女にはかなり難しい。
そんな器用なことができていれば、最初からこんなことにはなっていない。
それをよくわかっていた黒蛇は、彼女が不安にならないように、こう付け加えた。
「それでももし、万が一幸せになれなければ、いつでも帰ってきて下さい。その時は再び司令として迎え、盛大に歓迎致します。それまでの間は、微力ながら私が代理を務めさせていただきます。なので、ご心配なく」
帰る場所はある。そう知らされた黒猫は、迷いつつも彼らの願いを受け入れた。
黒蛇はどこまでも黒猫のことを考え、彼女の将来を思って行動しています。
そんな部下の言葉を受けたことで、彼女の心境は変化しました。




